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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

成績表で「積極的に質問を」と 指摘されました。その理由は?

成績表で「積極的に質問を」と指摘されました。その理由は?

松本輝彦(INFOE代表)

「授業中の質問・発言は成績の一部」は、アメリカの教育の特徴。

「授業中の発言が少ない」「よ り積極的な授業参加を」と、学 期末・学年末の成績表に記入さ れたり、保護者面談で現地校の 先生から指摘されることがあ ります。

日本からやって来た子供た ちは「質問ベタ」です。その背 景には日本とアメリカの学校 教育の違いがあります。

日本:質問は恥ずかしい!

日本の子供たち(小学生から 大学生まで。大人も?)は、「授 業中に質問することは恥ずか しい」と言います。その理由を 聞くと、「『そんな簡単なこと もわからないの』とクラスメー トや先生に思われるから」との 返事です。この「質問すること は恥ずかしい」との思いは、実 は、日本の学校教育の中で受け た指導や教育の結果なのです。

授業中に質問した生徒に対 して、「お前、授業をちゃんと 聞いていなかったのか !? 」と詰 問する先生すらいます。その 先生の頭には、「僕は、ちゃん と説明をした。その説明で理解 できないのは、生徒の努力不足 だ」との思いがあるはずです。 そして、その思いは、「教師の 話を聞いて理解するのは、生徒 の責任だ」、もっと極端には「先 生の説明はいつも完全だ」とい う考え方に基づいています。

この考え方を元にした学校 教育を受け続けた子供が、「質 問することは恥ずかしい」と思 い、質問をしなくなるのは当然 です。

アメリカ:質問は先生の恥?

一方、アメリカの先生は「子 供が質問をするのは、私の説明 が不十分な証拠だ」と考えてい ます。「子供に理解させる責任 は、先生にある」との教育文化 が背景になっています。

そのため、「Any questions?」 と、子供たちに何度も問いか けます。そして、出てきた生徒 の質問に対して、前とは異なる 新たな説明をして、「これでわ かった?」と確認をします。理 解する責任が子供にある日本 と先生にあるアメリカ。まった く逆の教育文化です。

質問を活用した授業

現地校での質問の大切さに は、もう1つの理由がありま す。それは、子供からの質問に 答えることで、クラスの子供全 員の理解を深める授業方法の 活用です。

「くだらない質問はない!」 は、現地校の先生の口癖です。 1人の子供の質問が、他の子供 たちが抱いていたのと同じ疑 問である場合が多くあります。 また、その質問が、他の子供た ちが「わかったと思い込んで いた」、基礎的で重要な内容の 場合もあります。さらに、クラ スメートの誰も思い付かない、 まったく異なった視点に立っ た貴重な質問であることもあ ります。

これらの、子供たちから出さ れた質問を活用して、子供たち の間でのディスカッションを 展開し、学習内容のより深い理 解へと進めている授業を、現地 校でよく見かけます。

発言は、成績評価の一部

このように、授業中の子供の 質問、また他の子供の質問や回 答に対する発言(コメント)な どを、授業中に積極的に発する ことが子供たちに求められて います。そして、その授業中の 発言や質問は、授業態度や授業 参加(class participation)の一 部として、評価に反映され、成 績表に記載されます。授業参加 の評価を、評価全体の2割程度 まで配点する先生も珍しくあ りません。

お子さんへのアドバイスを

日本で学校教育を受けてき た子供にとって、「質問はしな い」日本の学習習慣を、現地校 への編入と同時に「積極的に質 問する」に切り替えることは、 不十分な英語力も加わって、大 変な努力が必要です。しかし、 お子さんが現地校での勉強に サバイブするために、「質問上 手」になることが必要です。

もし、お子さんが「質問は恥 ずかしい」と感じているなら ば、ここで紹介した日米の学校 教育の違いを話して、その理由 を理解させてあげてください。

  ◇  ◇  ◇  ◇
「積極的な発言力」「的確な 質問ができる」は、帰国子女の 大きな「望ましい特性」です。 お子さんが、現地校での学習を 通して、これらの「宝」を身に 付けられるよう、サポートして あげましょう。

もっとも、友人の現地校の先 生の言う「授業中の質問と、授 業中のおしゃべりを勘違いし て、むやみやたらに発言する子 供が増えてきた」にもあるよう に、アメリカの子供たちにも変 化が出てきているようです。

(2010年8月1日掲載)