米国公認会計士・石上洋(執筆者インタビュー)

ライトハウス電子版アプリ、始めました

石上洋・米国公認会計士 

 

シューズ1足とボール2個、NBAに憧れ渡米を決意

「最初の頃は『How are you?』が何を聞かれているか分からなかったんですよ」と、笑って渡米当初を振り返る石上洋・米国公認会計士。無鉄砲だったという当時、渡米に大反対だった父親の制止を振り切って、18歳のときに初めてアメリカの地を踏んだのでした。荷物はバスケットボールシューズ1足と、ボール2個のみ。「ドリームチーム」ことバルセロナ五輪アメリカ代表に憧れ、NBA入りを夢見て決意した渡米でした。
 

人生のターニングポイント米国公認会計士として一歩踏み出す

「バスケじゃ食べていけないな」と気付き、プロになる道を諦めて新たな夢に向かって歩み始めたのは20歳の頃。「保育園でアルバイトしたことがきっかけで教育に興味を持ち、そのうち運営してみたい、と思うようになりました。それには会計の知識が必要だと思ったのです」。思い立ったが吉日、在学していたコミュニティーカレッジを経由して、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に入学。会計を専攻しました。
 
在学中は会計事務所でインターン、卒業後は4大監査法人の一つで監査業務に携わりました。その後地元の会計事務所に移り、2009年度には同事務所のパートナーに、そして1年後、石上、石上&越智公認会計士事務所を設立。「渡米後5、6年もの間、一切連絡をしていなかった父は税理士なんです」。

米国での法人設立に強み日本とのパイプラインも構築

会計事務所の主な業務内容は、監査業務、会計業務、税務業務、コンサルティング業務など多岐にわたります。中でも石上・米国公認会計士が「一番得意」と語るのは企業の設立サービス。日本の会社がカリフォルニアで法人を設立し、ビジネスを始めるのに必要な情報や知識を提供するだけでなく、ビジネスを軌道に乗せ、さらに社員個人の確定申告まで引き受けます。また、ロサンゼルスに2拠点のほか、サンディエゴ、シアトル、日本に事務所を構えていることで日米間の窓口になれることも強みだとか。「アメリカでビジネスをする場合、日本の税務が関わってくることもあり、お客さんが日米の会計事務所の連絡係にならなくてはいけないことがあります。その点、私たちは日本の事務所と提携をしているので、弁護士や社労士などのインターナルなリソースを持ち、ワンストップでスムーズなサービスを提供できます」。

常に全力で目標は高く会社のさらなる成長を目指す

座右の銘は「よく仕事し、よく勉強し、よく遊ぶ」だという石上会計士。「それぞれを120%全力でやります。『そんなに一所懸命で辛くないの』と言われますが、辛いかどうかは結局自分がどう感じるか、ですから」。
 
常に高い目標を掲げ、成長を続ける石上、石上&越智公認会計士事務所。今後について、石上会計士は次のように話します。「私にとってお客さんはパートナー。私たちはそのパートナー以上のスピードで成長しなければなりません。日本にある多くの企業がカリフォルニアに進出したいと思ったときに、『石上のところに頼もう』と思われるようになりたいですね。今はまだ小さい会社ですが、お客さんに直接感謝されることは何物にも代えがたい喜びです。この気持ちを忘れずに、社員と共に成長していきたいと思います」。
 
(2015年春の増刊号掲載)
 
◎米国公認会計士・石上洋さんについて
Blog:石上洋のブログ
Twitter:石上洋 (@hishigami)
News記事:〈会計士特集〉石上石上&越智公認会計士事務所
JBA:石上洋インタビュー

石上洋・米国公認会計士が解説!「米国公認会計士になるには?」

時折、会計士とは何ぞや?どうしたらCPA(米国公認会計士)の資格が取得できるのか?という質問をいただきます。今回は、いつもと少し趣向を変え、どうしたらCPAの資格を取得できるのかを解説したいと思います。

CPA(米国公認会計士)とは?

CPA(米国公認会計士)とは、Certified Public Accountantの略です。クライアントに税務や財務に関することを助言したり、クライアントが税法に正しく従っているかの調査、税務・財務監査を行ったりしています。もちろん、確定申告の作成や各種税務書類の作成と提出のお手伝いも、欠かせない仕事の一つです。
また、米国におけるEA(EnrolledAgent、税理士)とCPAの差異は監査に関連する権限と資格にあり、EAは正式な監査報告書を作成する権限がありません。

CPA(米国公認会計士)になるために必要な条件

アメリカでは州によってCPAライセンスの取得条件が異なるため、習得条件が容易な州、難しい州があります。ライセンス取得に会計学の学士号が要求される州もあれば、大学の特定の単位を数十単位要求されるだけの州もあり、ニューヨーク州やカリフォルニア州の取得は比較的難しいと言われる一方、アラスカ州やグアムなどは簡単だと言われています。
 
例えばカリフォルニア州では、下記の条件を満たすことでCPAライセンスが取得できます。①学士号と規定単位の取得。科目やコースの詳細なリストについては、大学ごとに対応したカリキュラムが存在するため、それぞれのカウンセラーや学部に問い合わせる必要があります。米国外で取得した単位は州の会計委員会の承認を受けなければなりません。②全米統一の試験(Uniform CPAExam)の合格。会計士が必要な知識やスキルを評価するための試験です。4種の試験があり、四半期ごとに各教科の試験をそれぞれ1回受けられます。合格後、その資格が保持されるのは最長18カ月なので、最初の1教科に合格してから1年半以内に全ての試験に合格する必要があります。合格率は45~55%程度となっています。③1年間、現役のCPAの監督の下で仕事を行う。
 
注意しなければならないのは、カリフォルニア州で取得したライセンスはカリフォルニア州内でのみ有効ということです。カリフォルニア州でライセンスを取得した場合、CPAとしてオフィスを構え、その権限を行使(監査報告書の作成など)できるのはカリフォルニア州内のみとなります。これは、ライセンスは各州がそれぞれ持つ独自の条件を満たした者に発行されるからです。どの州でも、ライセンスの取得には、前出のUniform CPAExamの合格は必須となります。
他州へのCPAライセンスの移行は各州間の制度によって異なります。移行先の州が、移行元のライセンス取得条件が簡単と認識している場合、移行条件が厳しくなる可能性があります。

CPA(米国公認会計士)になった後で

CPAライセンスを取得した後も、2年ごとに80時間の継続教育を受ける必要があり、年々変化する税法に関して勉強を続けなければなりません。全米でCPAを対象とした講座やセミナーが開催されており、その中から自分の専門や興味に合わせて自由に選んで受講します。これらを受講しないと、ライセンスの更新ができません。
また、2012年の資料によると、CPAの年収は、1年目が平均約4万ドル、CPA全体では平均約6万ドルとなっています。
 
(2016年8月1日号掲載)

「ここが知りたい米国税務・会計」のコンテンツ