オンラインでの税金の支払い │ アメリカ国内外の収入の分類 │ 外国税額控除 │ デジタル資産の取引と報告 │ 親子間の株の売買 │ 教育費用に使える529 Planの改定 │ W-8BENの役目 │ LLCによる休暇用住宅保有の注意点 │ 事業の閉鎖 │ トランプ政権下で成立した新税法とは? │ ビジネスの純損失(NOL)とその制限 │ 離婚の財産分配 │ 給与以外の支払い │ NIITの注意点 │ 信託の種類 │ IRAの相続 │ 信託の受託者 │ 子どもへの給与 │ IRSへの納税方法 │ 相続の取得価格 │ 教育費負担を軽減する控除とは │ 中古エコカーの控除 │ 夫婦別申告のメリットデメリット │ アメリカでの相続のポイント │
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オンラインでの税金の支払い
オンラインで税金を払う際の注意事項を教えてください。
(CA版2025年12月号掲載)
連邦・州共に、オンラインでの税金の支払いは、正しく使用すれば効率的で簡単ですが、選択を誤ると問題が生じる可能性があります。今回はオンライン決済の注意点を紹介します。
年度と用途の選択
最もよくある間違いは、誤った税年度を指定することです。支払年ではなく「税年度」を正しく選択する必要があります。例えば、個人の2025年確定申告書の予定納税の第4四半期分の期日は26年1月15日です。支払年は26年ですが、税年度は25年のため、「2025年」を指定します。
次によくある間違いは、支払い用途の選択です。同じ年度に複数の選択肢が発生することは多くあります。
例えば、予定納税の場合、支払い用途は「Estimated Tax」を指定します。その他、受け取った通知に対しての支払い、延長申請時の支払い、追加の納税の支払いなど、用途の選択肢がある場合が多いです。
また、銀行口座の場合は、口座自体が電子引き落としに対応しているかの確認を事前にしておきましょう。まれに自動引き落としができない口座などもあります。
手続き後は、Confirmation番号を保管をしておきましょう。そして、支払い日には、銀行口座に残高が十分にあるのを確認し、引き落としがされるのを確認しましょう。
また、エラーが発生した場合は速やかに当局へ連絡をしましょう。残高不足で引き落としができなかった場合や、口座番号の入力の間違いによって引き落としができなかった場合、罰金が科せられる可能性があります。
アメリカ国内外の収入の分類
弊社はアメリカ国内外でビジネスをしています。収入を「アメリカ国内」または「外国由来」と分類する基準は何ですか? また、その違いは税務にどう影響しますか?
(CA版2025年12月号掲載)
ソーシングルールとは、収入がアメリカ由来か外国由来かを分類する基準で、法人税に影響を与えます。アメリカ法人は全世界所得に課税され、ソーシングルールを使って特定の所得控除、税額控除を計算します。外国で課税された外国発生所得はアメリカで外国税クレジットの対象となります。そのため、収入がどこで発生したのかを明確にすることが重要です。
DIPとSIRの活用方法
ソーシングルールには、収入の種類に応じて異なる基準が適用されます。具体的には、収入を「居住地(Residence)」と「場所(Location)」、どちらを基準に分類するかで判断します。ここで役立つのが「DIP」と「SIR」という覚え方です。これを使うと、どの基準が適用されるのかが一目で分かります。
「DIP」は、以下の収入がどの居住地で発生したかを判定する際に活用されます。
Dividends(配当):配当を支払う法人の居住地。
Interest(利子):利子を支払う者の居住地。
Personal Property(個人財産):財産を所有する法人や個人の居住地。
一方、「SIR」は以下の収入がどの場所で発生したか分類する際に活用されます。
Services(サービス):サービスが提供された場所。
Inventory(在庫):在庫が販売された地理的な場所。
Rental, Royalty, Real Property(賃貸、ロイヤルティー、不動産):物件や知的財産が利用された場所。
収入を分類することで、外国で課税された収入に対する税額控除を申請できたり、重複して税金を支払う二重課税のリスクを軽減できたりします。
ソーシングルールを正確に適用することは、税務リスクを最小限に抑え、外国税クレジットの適用を最大化するために重要です。特に、複数国で事業を展開する企業は、ルールを理解し、適切に運用することが競争力向上につながります。専門家のサポートを受け、ルールを活用した税務計画を立てることを推奨いたします。
外国税額控除
私と夫は永住権を持ちアメリカで所得がありますが、今は日本に住み、日本でも所得があります。その場合、アメリカの確定申告では外国税額控除が使用できるそうですが、具体的に教えていただけますか。
(CA版2025年11月号掲載)
控除の要件
外国税額控除は、下記三つの要件を満たした場合、適用できます。
①外国(アメリカ国外)で課された税(外国税)であること。例えば、日本で得た給与から差し引かれた税金などです。
②外国で外国税を支払っていること。
もし、アメリカで夫婦合算申告をする場合、あなたと配偶者が支払った外国所得税の合計に基づいて控除を請求できます。そして、外国税が配偶者など2人以上の合計所得に課税されている場合、税金は合計所得のそれぞれの割合に比例して配分され、それぞれが支払います。例えば、アメリカにて夫婦別々で確定申告をすることになり、あなたが日本の合計所得の60%を稼いだとします。その場合、あなたはアメリカの申告書で、外国税の60%の控除を請求できます。配偶者は40%の請求が可能です。
③外国税額控除となる税金は、所得税でなければなりません。通常、賃金、配当、利子、商標にかかる税金は外国税額控除の対象となります。以下は控除対象外です。
・消費税
・罰金、延滞税、加算税
・財産税、相続税、贈与税(所得ではなく、資産に対する課税)
・社会保険料(例:日本の国民年金、健康保険料)
外国税額控除は、アメリカの申告書の税金の総額を超えての申請はできません。もし、控除可能な外国税があるのに、課税年度中に限度額に達して全額を使用できない場合、一課税年度分の繰り戻しと次の10年間に繰り越しての控除の使用が可能です。
控除の例外
下記要件を満たした場合、限度額に関わらず「Form 1116」を使用して控除を請求できる可能性があります。
①課税年度の外国総所得が、受動的所得(Passive Category Income)のみの場合。受動的所得とは、利子所得、配当所得、賃貸収入、ロイヤリティー、年金など。
②課税年度の適格外国税額が300ドル以下(夫婦合算申告の場合600ドル以下)の場合。
③全ての外国総所得と外国税が受取人の明細書(「Form 1099-DIV」や「Form 1099-INT」など)で報告されている場合。
この手続きを選択すると、未使用の外国税をこの課税年度から繰り戻したり、繰り越したりはできません。
また、課税年度に複数の所得区分の所得に対して外国税を支払った場合、その税額を関係する所得区分に配分する必要があります。
外国税控除は、条件によって控除できる場合とできない場合があるので、プランニングが非常に大切です。
デジタル資産の取引と報告
「Form 1099-DA」とはなんですか?
(CA版2025年11月号掲載)
「Form 1099-DA」は、仮想通貨やNFTなどのデジタル資産に関する売却・交換取引について、ブローカーなどがIRS(内国歳入庁)に報告するためのフォームです。2025年以降の取引から適用され、納税者にもコピーが交付される予定です。売却日や資産の取得日、取得額、売却額、保有期間、資産の種類などが記載され、従来の「Form 1099-B(証券取引報告)」に近い形式となる見込みです。
これにより、仮想通貨の取引履歴の報告が自動化・標準化され、IRSも納税者の申告内容との照合が可能になります。これまで納税者が自主的に記録・計算していたキャピタルゲインやロスも、今後は第三者からの報告が前提となるため、記録の整合性や正確性がより重要になります。仮想通貨やNFTなどの取引を行う場合、申告書との整合を意識した記録管理が求められるようになります。なお、「Form 1099-DA」が発行されるかどうかは、利用しているブローカーによって異なる可能性があり、今後の各ブローカーの発表も注視してください。
親子間の株の売買
事業経営者です。子どもに株を売却することを検討中です。親子間での取引での留意点はありますか?
(CA版2025年10月号掲載)
アメリカの税法には、関連当事者(Related Parties)の間で行われる取引に特別なルールがあります。関連当事者とは、親子や兄弟姉妹、配偶者といった家族関係のほか、法人とその株主や代表取締役、さらに親会社と子会社といった関係にある会社も含まれます。
損失否認ルールとは
特に重要なのが損失否認(Loss Disallowance)のルールです。これは、関連者間の売買で損失が出ても、その損失を税務上認めないというものです。例えば、親が取得価額8000ドルの株式を子どもに6000ドルで売却した場合、本来は2000ドルの損失となりますが、親子間取引であるためこの損失は否認されます。
さらに、その後、子どもがこの株式を非関連者である第三者に7000ドルで売却したとします。子どもの取得価額は6000ドルなので通常であれば1000ドルの利益が生じます。しかし、この利益は親が否認した損失の一部として相殺され、課税対象とはなりません。結果として子どもは利益ゼロの扱いとなります。ただし、親の損失2000ドルの残りの1000ドルは将来に繰り越すこともできず、最終的に消滅してしまいます。
また、親の株の保有期間は子どもには引き継がれず、子どもが親からの購入時点から新しい保有期間が始まる点にも注意が必要です。
関連当事者ルールは、家族や関連法人の間で意図的に損失を作り出して税負担を減らすことを防ぐために設けられています。規定が適用される可能性がある方はご留意ください。
教育費用に使える529 Planの改定
教育費関連の529 Planについて教えてください。
(CA版2025年10月号掲載)
このたび制定された「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」により、教育費のための積立制度である 529 Planの非課税利用範囲が拡大することとなりました。従来、529 Planは主に大学などの高等教育費用(授業料、寮費、教材費など)に使用する場合、非課税で引き出すことが可能でしたが、今回の改定で、初等・中等教育や職業資格取得に関する費用でも非課税で引き出せるようになります。
小中等教育が対象に
初等・中等教育に関しては、2025年7月4日以降から適用され、従来は授業料のみが対象とされていた非課税での引き出しが、教材や書籍、オンライン学習用の教材、さらには家庭外で受ける学習指導やチュータリングの費用にも認められることとなりました。ただし、子どもの指導を行う者が親族でないこと、州の教師免許を有する者、教育機関での教授経験を持つ者、または該当分野の専門家であることが条件となります。加えて、標準学力テストやAP試験、大学入学試験の受験料、高校在学中の大学科目履修(二重在籍)の費用、さらに障害のある子どもに対する療育サービスの費用も非課税の対象に含まれます。非課税で引き出せる金額は、25年までは年間1万ドルで、26年以降は年間2万ドルに引き上げられます。
資格取得費用も対象
職業資格取得に関連する費用についても、25年7月4日以降から非課税の対象となります。資格プログラムの授業料や教材費、必要な機器の購入費用に加え、学習用のコンピューターやソフトウェアの購入費も認められます。さらに、資格を取得または維持するために必要な試験費用や継続教育にかかる費用も対象です。対象となる資格には、業界で広く認められている職業資格や、労働長官に登録された見習いプログラムの修了証、州または連邦政府が認める職業免許、そして労働力革新・機会法(WIOA)で定義される資格が含まれます。
今回の改正により、529 Planは教育全般を支援する制度へと大きく進化したといえます。教育資金の準備に選択肢が増えたことになるので、ご家庭の将来設計において有効に活用できることでしょう。
W-8BENの役目
日本に帰国したのですが、アメリカの金融機関から「Form W-8BEN」の提出を求められました。これはどんな書類ですか?
(CA版2025年9月号掲載)
「Form W-8BEN」は、アメリカで源泉所得を得る税法上の非居住外国人が源泉徴収税率(通常30%)の軽減や免除を受けるために提出するフォームです。これにより非居住者としての税務ステータスが正式に確認されます。日本在住者でもアメリカの企業から年金や利息などの報酬やロイヤルティーを得る場合は提出が求められます。帰国後、アメリカ非居住者となった時点で金融機関から依頼があるはずです。
支払い元に提出
「Form W-8BEN」はIRS(内国歳入庁)に提出するのではなく、支払い元に渡す点が重要です。提出後も住所や国籍ステータスが変われば再提出が必要となります。提出時には自分が税法上の非居住外国人であることや所得の性質を確認し、納税者番号(SSNやITIN)が必要な場合もあるため、事前の準備が重要です。
日米租税条約を適用
「Form W-8BEN」にて源泉徴収の割合や日米租税条約のどの条項(Article)を適用するかを明示することで、正確な金額を金融機関が源泉徴収し、日本でアメリカの確定申告を行う手間などを省けます。未提出だと支払い元が30%を源泉徴収してしまうため、本来よりも税金を多く支払ったり、確定申告で還付申請を行う手間が発生したりします。
「Form W-8BEN」は少なくとも3年ごとに再提出が求められます。帰国後もアメリカで源泉所得を受け取る方は、更新時期を確認しましょう。
LLCによる休暇用住宅保有の注意点
LLC(有限責任会社)の事業主です。弊社で休暇用の物件の所有を検討しています。注意点を教えてください。
(CA版2025年9月号掲載)
休暇用住宅(Vacation Home)を個人ではなくLLC(有限責任会社)名義で保有するケースが増えています。休暇用住宅を資産保護や家族での共有、管理の簡略化を目的に使用するのにLLCは便利な手段だからです。
しかし、州ごとの不動産税や登記費用、短期賃貸に関する規制も異なるため注意が必要です。今回はネバダ州のLLCがカリフォルニア州に休暇用住宅を保有する場合を例に、重要な3点を説明します。
設立州の税法
まず、LLCを設立をしている州にて、LLCとしての確定申告書の提出や税金の納付などが必要となります。州によって申告義務や年間で発生する税金、登記手数料や更新料の金額は異なります。
例えばネバダ州のLLCの場合、法人の確定申告書の提出は必要なく、法人税も発生しません。ですが、毎年の登記の更新は必要で、未提出だと後で罰金が発生します。
物件所在地の税ルール
休暇用住宅がどの州にあるかにより、その州での課税の有無が変わります。多くの州では、LLCが物件所在地で「事業を行っている」と見なされ、休暇用住宅の所在州で課税対象となります。
例えばネバダ州のLLCがカリフォルニア州に休暇用住宅を保有している場合、カリフォルニア州でネバダ州のLLCが事業を行っていると見なされ、カリフォルニア州に対して保有している物件に関する申告と納税義務が発生する可能性があります。カリフォルニア州のLLCは、利益が出なくても法人税が最低でも毎年800ドルかかります。併せて「Form 568(LLC申告書)」の提出も必要です。
利用目的と事業性の判断
LLCが休暇用住宅を個人的に使用する場合、課税対象外となる州もあります。ただし、短期間でもAirbnbなどに広告を出して短期賃貸を行ったり、賃貸契約を締結した場合、多くの州で「事業活動」と見なされます。
LLCを活用する際には、どの州で設立するか、休暇用住宅がどこにあるか、そしてその利用目的が重要です。
事業の閉鎖
事業を閉鎖します。最後の法人税申告で気を付ける点は何ですか?
(CA版2025年8月号掲載)
事業を閉じる法人が、最終年度の法人税申告書を提出する際には、「Final Return」の欄にチェックを入れ、事業終了日を明記することが重要です。この手続きを正しく行うことで、IRS(内国歳入庁)および州は当該申告を「最終申告」として処理します。
IRSへの報告
IRSに最終申告と認められるためには、以下の2点が特に重要です。
①延長を含め、法定期限内に最終申告書を提出する。
②法人の解散後に事業活動(新規契約、収益活動など)を行わない。
上記が満たされていないと、「Final Return」として申告書を提出しても、最終申告と認められず、翌年以降も法人が存続していると判断されるリスクがあります。これにより、申告義務が継続し、未申告があると罰金や延滞利息が課される可能性があります。
州への報告
州の申告書も基本的にはIRSと同様の対応が求められます。多くの州では法人の法的な解散手続き(Dissolution)が別途必要となる点に注意が必要です。解散を届け出ない限り、州は法人が存続していると見なし、法人税の最低課税や年次報告の義務が継続してしまうことがあります。州によって提出のタイミングや必要書類が異なるので注意しましょう。
また、最終申告時に法人が保有資産を売却した場合、売却益や損失を計上する必要があります。さらに、株主に資産や現金を分配した場合には、それが株主の譲渡所得や配当所得として課税対象となる可能性があるため、税務処理にも注意が必要です。
トランプ政権下で成立した新税法とは?
2025年度の税制度の変更において、主なポイントを教えてください。
(CA版2025年8月号掲載)
2025年7月4日に成立した「OneBig Beautiful Bill Act」により、個人の税務申告に関する重要な改正が複数導入されました。これは25年度以降の確定申告や還付・納付額に直接影響する可能性があり、今後の申告準備において十分な注意が必要です。
所得税率と控除の変更
まず、今回の変更では、17年のTCJA(Tax Cuts and Jobs Act)で導入された7段階の所得税率(Tax Bracket)の全体的な引き下げを、そのまま継続する形となっています。これにより、25年末で失効する予定だった優遇税率の適用が引き続き可能となり、多くの納税者が今後も低い税率の恩恵を受けられる見通しです。
次に、項目別控除(Itemized Deduction)の一部として適用されるSALT(州・地方税)控除の上限が、年収50万ドル未満の納税者に限り、1万ドルから4万ドルへ引き上げられました。これは25~29年の期間限定となります。高税率州に住む納税者で、一般控除(Standard Deduction)より項目別控除の方が大きくなる人は、控除額が増えます。
チップや子育ての負担減
また、年収15万ドル未満の方を対象に、通常課税対象となるチップや残業手当などの追加報酬の一部について、最大2万5000ドルまで所得から差し引いて申告できる特別控除制度が導入されました。例えば、飲食業でチップ収入を受け取っている方は、これまで課税所得とされていた収入の一部を非課税扱いにでき、所得税の軽減が期待できます。これは28年までの一時的な措置となっております。
さらに、子ども控除(Child Tax Credit)の最大額が2200ドルに引き上げられ、今後は物価に連動して調整される仕組みに改められました。子育て家庭には有利な改正です。加えて、25年以降に生まれる子どもを対象に、「Trump Accounts」と呼ばれる新たな貯蓄支援制度が導入されました。政府が1000ドルを初期拠出し、保護者は年間最大5000ドルまで非課税で積み立てられます。教育費や将来資金の準備に有効です。
これらの制度改正は、適切な申告と節税対策を考えてみるいい機会かもしれません。
ビジネスの純損失(NOL)とその制限
知人の経営する会社で赤字が続き、事業の譲渡を持ちかけられました。何か気を付ける点はありますか。
(CA版2025年7月号掲載)
純損失(NOL)とは
ビジネスでは毎年利益を出せるとは限りません。場合によっては、出費が収入を上回り、損失が出ることもあります。この損失を「純損失(NOL:Net Operating Loss)」と呼びます。NOLは過去に発生した損失を将来の利益と相殺することで、税金を軽減するために利用できます。
具体例を挙げます。C CorporationであるA社は、税務上、以下のような損益でした。
・Year 1: 純損失5万ドル
・Year 2: 純利益10万ドル
法人税率を21%と仮定すると、Year 2で発生した課税所得に基づく税額は2万1000ドル(10万ドル×21%)ですが、Year 1のNOLを繰り越して相殺することで、課税所得が5万ドルになり、税額は1万500ドル(5万ドル×21%)となります。NOLを活用すると、課税所得を減少させ、税負担を大幅に軽減できます。
Section 382のルール
NOLには、不正利用を防ぐための制限も設けられています。その一つが「Section 382」です。このルールでは、会社の所有権の割合(持ち株比率)が一定数以上変わった場合、過去に発生したNOLの利用が制限されます。
「Section 382」の目的は、損失を抱える会社を買収し、そのNOLを節税目的で利用する行為を防ぐために設けられています。具体的には、株主構成が大きく変わる「所有権の変更」があった場合、NOLの利用可能額が制限されます。
所有権の変更は、株式の購入や売却、新しい株式の発行などにより、5%以上の株主の持ち株比率が累計で50%以上変化した場合に発生します。この場合、制限後のNOL利用額は、その会社の株式の価値に基づいて計算され、全額の活用が難しくなることがあります。
例えば、スタートアップ企業は創業初期に多額のNOLを抱えることが一般的ですが、他社による買収時にこの制限が適用されると、期待していたほどNOLを活用できなくなることがあります。「Section 382」の影響を受けると、買収や合併後に税負担が予想以上に増えるリスクがあるのです。合併や買収を行う前に「Section382」制限に基づく調査を実施することが重要です。専門家による分析を通じ、NOLがどの程度利用可能か、また制限の影響を受けるかを把握することで、取引後の税務リスクを最小限に抑えることができます。
NOLは事業主にとって強力な節税ツールですが、注意も必要です。特に買収や合併を検討する場合には、NOLを理解し、慎重に計画を立てることが求められます。専門家に相談したり、最新の税務規定を確認したりすることで、予期せぬリスクを回避できるでしょう。
離婚の財産分配
離婚するにあたり、財産分配の基本的なことを教えてください。
(CA版2025年7月号掲載)
配偶者間の財産移転は、原則として利益や損失が認識されず、離婚や婚姻無効に伴う財産移転にも適用されます。離婚後1年以内、または離婚契約に基づく移転は非課税とみなされ、事業上の理由や評価争いで移転が遅れた場合でも、それらの解決直後の移転は離婚関連として扱われます。
基本的に財産は元の取得価額をそのまま引き継ぎ、負債が価値を上回る場合でもこのルールは適用されます。
また、受動的活動(例:賃貸不動産・株式・パートナーシップ持株)の移転は贈与とみなされ、夫婦間の移転は無制限で非課税のため、申告は不要です。しかし、これらの資産で過去に生じた赤字は、本来できる控除には使えなくなります。その代わり、過去の赤字は資産の取得価額に加算されます。また、財産の移動後、受領者が使用を始めたら原価償却が開始します。
なお、税法上の非居住者の配偶者との離婚や同性婚パートナーの解消に伴う財産の移転は、連邦や州によっては課税対象となる可能性があるため、留意が必要です。
給与以外の支払い
法人の会計において、日当、手当、払い戻しの定義を教えてください。
(CA版2025年6月号掲載)
日当とは
日当(Per Diem)とは、出張時の食事代や宿泊費などとして従業員に支給される手当のことです。支給される地域によって、連邦政府が定める日当の金額(定額)が異なります。定額内で支給される場合は課税対象にはなりませんが、超える支給は給与として課税されます。
例えば、出張に出て、会社から1日あたり64ドルが食事代や宿泊費として支給されたとします。これは日当に該当し、定額の範囲内であれば非課税です。また、従業員は出張の日付と行った場所を雇用主へ報告し、雇用主はそれを支払いの記録として保管する必要があります。
手当とは
手当(Allowances)は、特定の支出の補填や、特定の条件に対する補償として支払われるもので、住宅手当や自動車手当なども含まれます。原則、課税対象ですが、海外赴任手当や生活費補助、旅費手当などは条件を満たせば非課税となる場合があります。例えば、あなたが自家用車で通勤し、会社から毎月600ドルの車両手当を受け取っている場合、この金額は給与として課税対象となります。
払い戻しとは
払い戻し(Reimbursement)は、従業員に業務上発生した自己負担費用を、雇用主が後から返金する仕組みです。払い戻しは非課税で処理されます。例えば、出張に伴い、宿泊費や航空券を自己負担で支払った場合、その領収書を提出して会社から返金を受ける流れが、払い戻しに該当します。
NIITの注意点
NIIT(Net Investment Income Tax)とはなんですか?注意点を教えてください。
(CA版2025年6月号掲載)
NIIT(Net Investment Income Tax、ネット投資所得税)は、主に個人が対象の追加税で、一定以上の投資関連の所得(利子、配当、キャピタルゲイン、不動産賃貸収入など)が対象となります。投資所得に対して3.8%の税率を上乗せして納税します。
例えば、在米日本人が日本に帰国する前に自宅を売却して利益(キャピタルゲイン)を得た場合、NIITが適用される可能性が高まります。具体的には、単身者で年間調整後総所得(MAGI)が20万ドル、夫婦合算申告の場合は25万ドル、夫婦個別申告の場合は12万5000ドルを超えると、投資所得のうち超過分がNIITの課税対象となるのです。自宅売却の利益は一定額まで免税(単身者は25万ドル、夫婦合算申告は50万ドル)になる場合もありますが、売却益が大きいと要注意です。
NIITの対象と計算
NIITの計算で重要なのは「超過分の少ない方」という原則です。具体的には、調整後総所得(MAGI )のしきい値超過額と純投資所得(NIIT)の総額を比較し、そのうち「少ない方」に3.8%の税率を適用します。例えば、夫婦合算申告で年間所得が30万ドル(つまりしきい値超過額は5万ドル)、投資所得が3万ドルの場合、3万ドルに対してNIITが課されます。仮に投資所得が8万ドルであれば、しきい値超過額の5万ドルに対してNIITが適用されるのです。
適用時の注意と対策
NIITが適用されると、他の株式や利子の所得にも追加でNIITがかかる点には注意が必要です。自宅売却による一時的な高所得が、他の投資所得(株式売却益、配当金、利子収入など)の税負担まで増やすことになります。
一方で、株式や不動産の売却損を利用して投資利益を相殺したり、不動産投資の減価償却費用を計上したりすることで、NIITの課税対象となる純投資所得を減少させることができます。そのため、申告前に取引内容を整理し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
特に高所得者は、メディケア税の追加分(0.9%)もあるため、総合的に税負担を試算し、帰国のタイミングや取引の計画を立てることが大切です。
信託の種類
信託の種類や違いについて教えてください。
(CA版2025年5月号掲載)
信託(Trust)の仕組み
信託(Trust)とは、財産を持っている人(委託者)が自分の財産を別の人(受託者)に移し、特定の人(受益者)のために管理してもらう仕組みです。資産を守り、スムーズな相続や税金対策に役立ちます。信託にはいくつかの種類があり、種類によって税金の扱いが変わります。一般的に、委託者が権限を持っている場合は委託者に所得税がかかり、完全に手放した場合は信託自体に税金がかかります。
Living Trustの種類
最も一般的な信託として知られるLiving Trustは委託者が生きている間に設立・効力を発する信託です。その中でもRevocable Trustは内容の変更や撤回が可能で、将来の認知症などに備えて財産の管理体制を整えたり、死亡後の遺産分割手続きをスムーズにしたりする目的で広く利用されています。裁判所での検認手続きを回避でき、プライバシーを守りやすいことが特徴です。税務上は委託者が財産の所有者とみなされ、所得税も委託者自身が支払うことになります。
一方、Irrevocable Trustは設立後の変更や取り消しができず、信託に移した財産は委託者から切り離されます。これにより、財産を債権者から守り、公的給付の受給資格を維持し、相続税・贈与税の軽減が期待できます。
さらにIrrevocable Trustは、収入をその年のうちに全て受益者に分配し、元本の分配や慈善寄付を行わないSimple Trustと、収入の一部を信託内に留保しつつ、元本からの分配や慈善団体への寄付も可能なComplex Trustがあります。Simple Trustは信託収入にかかる税金を受益者が支払い、Complex Trustは分配しない収入に関して信託自体が納税者となります。
税務上の扱い
Living Trustの多くは、税務上、Grantor Trustとして扱われます。信託に財産を移しても、税務上は引き続き委託者がその財産を所有しているとみなされ、信託の収入にかかる税金は委託者本人が支払います。例えば、委託者が信託財産の使用に関する決定権を持っていたり、受益者を変更できる権限を有していたり、自分または配偶者が利益を受け取れるようになっている場合はGrantor Trustと見なされます。
反対に委託者が信託財産に対する権限を持たない場合、その信託はNon-Grantor Trustとされ、独立した納税義務を持つ存在として、信託自体が所得税を申告・納付します。
また、委託者の死後に効力を持つ、Testamentary Trustという信託もあります。これは遺言書内で設立され、遺言に基づいて財産が管理・分配されます。ただし、裁判所での検認手続きが必要となるため、Living Trustと比べてプライバシーの保護が難しく、手続きに時間と費用がかかります。
IRAの相続
昨年、姉が亡くなりました。IRAの相続はどうすればいいですか?
(CA版2025年5月号掲載)
この度はお悔やみを申し上げます。
2020年以降、IRS(内国歳入庁)は相続IRAに関するRMD(最低必須分配)のルールを改訂し、「10年ルール」を導入しました。基本的に、相続したIRAの残高は被相続人の死亡年の翌年から起算して10年以内に全て引き出す必要があります。
今回のケースでは、質問者様が以下のいずれにも該当しない場合、「非該当受益者」となり、10年ルールが適用されます。①配偶者、②被相続人の未成年の実子、③障がいのある人、④慢性疾患のある人、⑤被相続人より10歳以上年下の個人(親族を除く)。
なお、被相続人が死亡時にRMD開始年齢に達していた場合、10年以内の全額引き出しに加え、各年での最低額の引き出しが求められる可能性があります。RMD開始前に亡くなった場合は、10年目までに全額を引き出せばよく、年次RMDは不要です。
RMDの未実施には罰則(最大25%の課徴金)が科される可能性があるため、税負担を見据えた計画的な分配が重要です。
信託の受託者
将来へ向け、信託の作成を検討中です。信託受託者は誰にすべきですか。
(CA版2025年4月号掲載)
親族友人か、専門家か 信託(Trust)の受託者(Trustee)の役割は、委託者の指示に従い、信託内の資産を管理・運用し、受益者の利益のために行動することです。
受託者には親族や友人、信託の専門家、銀行などが選ばれます。親族や友人は信頼でき、費用が少なく済むことが多い一方、専門知識や公平性に欠けたり、時間に制約があったりします。信託会社や銀行などの専門家は公平性や継続性、投資スキルもありますが、費用がかかる点や、話し合う機会が限られがちである点が短所です。
受託者の仕事内容
受託者は、利益相反を避け、信託財産を適切に管理し、受益者全員に公平に対応する法的責任を負います。また、管理や運用の際は注意深く慎重に行動しなければなりません。複数国で不動産を持つなど複雑な財産が含まれる場合や、相続税の特例など税金や法制度の対応が難しい場合もあり、そもそも資産を信託に移すタイミングで贈与税や譲渡益税がかかる可能性や、信託の種類(リビングトラストや不可撤回型など)によって、課される税金や報告義務が変わる点も見逃せません。信託の運用利益に対する所得税や、受益者への分配時に発生する税金についても正確な記帳・報告が求められます。適切に管理できなければ、受益者から訴訟を起こされるリスクもあります。
以上を踏まえると、信託の専門家を受託者として選ぶ方が安心な場合が多いです。信託の内容と受託者の責務を理解し、専門家と連携しながら設計運用することが重要です。
子どもへの給与
個人事業主です。仕事を手伝ってくれた子どもに給与を支払うことはできますか?
(CA版2025年4月号掲載)
事業をお持ちの方は、子どもや孫に給与を支払うことができます。
払うべき税
事業形態や従業員(子ども)の年齢によって、税金の支払いが異なります。18歳未満の子どもを雇用する場合、給与税の源泉徴収が不要となるケースがあります。また、労災保険や失業保険の適用外となる場合もあります。
家族経営の小規模な事業体であるSole ProprietorshipやPartnership(親族がパートナーの場合)では、所得税(Income Tax)に関しては、子どもの年齢に関係なく源泉徴収されますが、社会保障税(Social Security)や医療保険税(Medicare)は18歳以上の子どものみ課され、18歳未満の子どもには適用されません。また、連邦失業税(The Federal Unemployment Tax Act、FUTA)は、21歳以上の従業員にのみ適用されます。
C Corporationや両親以外がパートナーのPartnershipでは、上記の税金(所得税、社会保障税、医療保険税、連邦失業税)が全て適用されます。
経費と確定申告
子どもに業務を担当させ、適正な報酬を支払うことで、その給与をビジネスの経費として計上できます。これにより、課税所得を減少させることが可能です。業務内容や勤務時間を詳細に記録し、適正な賃金を設定することが求められます。これらの税金は、労働に対して合理的な報酬が支払われた場合にのみ適用されるため、税金の節約を目的とした不適切な給与の支払いは避けなければいけません。
一方、子どもや孫の確定申告書においては、2024年の基準では、個人の所得に対して1万4600ドルまでが非課税でした。25年には、この標準控除額が1万5000ドルに引き上げられています。子どもを扶養家族として申告しつつ、子ども自身もこの標準控除を適用することで、家族全体の税負担をさらに軽減できます。さらに子ども自身が給与を得ることによって、自身の退職プランへの拠出を開始することができます。
子どもや孫をビジネスに参加させることで、早い段階から財務教育を行い、将来の財務的成功への基盤を築くことができます。
IRSへの納税方法
IRS(内国歳入庁)に納税するには、どのような方法がありますか。
(CA版2025年3月号掲載)
IRSは、納税者が便利かつ安全に税金を支払えるよう、いくつかの決済オプションを提供しています。それぞれの方法には特徴があり、用途や状況に応じた選択が可能です。
1.Direct Pay
Direct Payは、銀行口座から税金を直接引き落とすシンプルな方法です。手数料はかからず、1日2回まで支払いが可能です。IRSへのシステム登録やログインが不要な点が魅力ですが、支払い記録は自分で管理する必要があります。
2.Electronic Federal Tax Payment System(EFTPS)
EFTPSは、個人にも法人にも対応したオンライン支払いシステムで、事前登録が必要です。このシステムでは支払いスケジュールを事前に設定でき、大きな金額の支払いにも対応可能です。さらに、支払い履歴を確認できるため、記録管理に役立ちます。ただし、登録に数日かかる場合があるため、早めの手続きがおすすめです。
3.Electronic Funds Withdrawal(電子資金引き落とし)
電子資金引き落としとは、会計士を通しての商用会計ソフトウェアから行う方法です。またはIRSが提供する無料の電子申告サービス(IRS Free File)を使用して連邦税の申告時に支払いを同時に行うことを指します。 税金申告時に支払額を指定し、銀行口座から自動で引き落とされます。この方法は、税金申告と支払いを一度に済ませられる手軽さが特徴です。会計士に支払いを依頼する場合にはこの方法がよく使われます。
4.クレジットカード・デビットカード(Payment Processor)
クレジットカードやデビットカードの手続きは迅速で、税金を一括または分割払いにすることも可能です。しかし、第三者機関を通した支払いのため、支払い金額に応じた手数料が発生します。
5.IRS Online Account
IRS Online Accountを利用すると、支払い履歴や予定を管理しながら直接支払いが可能です。個人でアカウントを開設する必要があります。このアカウントでは、過去の支払い履歴や現在の未払い額を一目で確認できます。便利な一方、アカウント情報を忘れてしまうと、ログインできなくなるリスクがあるため、管理が必要です。
6.小切手
小切手で税金を支払うときには、支払い伝票を同封し、IRSの住所に送付する必要があります。現金を使わずに支払いができ、安全ですが、郵送なので時間がかかることがデメリットとしてあります。
7.現金
オンラインでバーコードを発行し、現金で支払う方法もあります。即時払いができますが、1回につき500ドルまでの制限がある上、処理手数料がかかります。7-ElevenやKroger、Walmartなどで支払いが可能です。
各特徴を理解して最適な方法を選び、早めの準備と対応をしましょう。
相続の取得価格
相続の際の取得価格の新ルールについて教えてください。
(CA版2025年3月号掲載)
昨年、IRSは、遺産・信託の所得税申告書や相続の申告書にて、相続人に取得価格を一貫して報告を求める最終規則を発表しました。この新たな規則では、以前導入されていた「ゼロベース・ルール」が削除されています。このルールは、相続人が資産の取得価格を期限内に報告しなかった場合、その資産を受け取った受遺者の取得価格をゼロとみなすものでした。しかし、今回の変更で、相続人は従来の相続資産の取得価格ルールに従って資産を受け取ることが可能となりました。
これは、相続人にとって大きな利点です。例えば、資産の取得価格がゼロとされると、将来その資産を売却する際に多額のキャピタルゲイン税が課される可能性がありました。しかし、従来のルールに基づく取得価格が適用されれば、課税対象となる利益が適切に計算され、税負担が軽減されることが期待されます。この変更は、遺産の管理者や受遺者にとって、税務上の不確実性を減らし、より公平な税負担を実現するものと考えられます。
教育費負担を軽減する控除とは
子どもの教育費について、どのような控除や制度がありますか?
(CA版2025年2月号掲載)
教育税額控除の種類
高等教育を受ける学生やその家族のために、教育税額控除があります。教育税額控除は、大学や専門学校などの費用の一部を税金から差し引ける制度です。主に次の二つがあります。
①アメリカン・オポチュニティ税額控除(AOTC)
対象者:大学や専門学校の最初の4年間に在籍する学生。
控除額:最大2500ドル。収入によっては、さらに最大1000ドルが還付金として戻ることもあります。
適用される費用:授業料、教材費、必要な学用品。
②生涯学習税額控除(LLC)
対象者:資格取得やスキルアップを目指す学生(学位が不要な場合も可)。
控除額:最大2000ドル。
適用される費用:授業料や学習に必要な教材費。
この控除を受けるには対象者が適格教育機関(連邦学生援助プログラムに登録している学校や大学など)に在籍している必要があります。収入が一定額を超えると控除額が減る場合があり、AOTCとLLCの両方を同時に申請することはできません。
控除の対象費用
対象となる費用は以下の通りです。
①大学や専門学校、その他適格教育機関で支払った授業料。
②教科書や教材(学校から指定されたもの)。
③パソコンやソフトウェア(学校が要件として指定している場合)。
これらの費用を適格教育機関へ対して支払っていることが条件で、寮費や食費、交通費などは対象外です。
教育税額控除の手続き
AOTCとLLCの申請には、学校から送られてくる「Form 1098-T」(授業料報告書)が必要です。「Form 1098-T」は、教育機関が学生とIRS(内国歳入庁)に提供する税務関連の書類で、適格授業料および関連費用の支払い金額や奨学金や助成金の金額が記載されています。申請には、学生本人が「Form 1098-T」を受け取る必要があります。ただし、非居住外国人や、授業料が全額免除または奨学金で授業料全額をカバーされている学生などは例外で、発行されない人もいます。
「Form 1098-T」を受け取らないと、原則、控除の申請はできません。ただし、以下のような例外もあります。
①適格教育機関で支払った費用の記録(領収書や支払い証明書)があれば、控除の申請が可能な場合があります。
②非居住外国人や奨学金で全額カバーされた学生でも、必要書類がそろっていれば申請できる可能性があります。なお、発行対象外の学生でも、学校に直接依頼すれば「Form 1098-T」を発行してもらえる場合があります。
教育費の負担を軽減するため、教育税額控除をぜひご活用ください。
中古エコカーの控除
中古車でも、クリーン車両クレジットを受け取ることができますか?
(CA版2025年2月号掲載)
中古車でもクリーン車両クレジットを受け取れます。要件は、①購入者が個人である、②再販目的の購入ではない、③購入者は扶養家族として他者の税申告に含まれていない(つまり申告者本人か配偶者)、④過去3年以内に同クレジットを受けていないことです。また、修正調整総所得(AGI)が夫婦合算申告で15万ドル、世帯主で11万2500ドル、その他の申告者で7万5000ドルを超えない場合に限られます(購入年または前年のいずれかで条件を満たせば適用)。
対象車両は、販売価格が2万5000ドル以下、購入年の2年以上前のモデル(例:2024年に購入した場合は22年以前のモデル)、電気自動車(EV/バッテリー容量7kWh以上)または燃料電池車(FCV)であること、総重量が1万4000ポンド未満であり、主にアメリカ国内で使用されることが求められます。
また、車はディーラーで購入する必要があり、ディーラーは購入者とIRSに車両情報の報告義務があります。
夫婦別申告のメリットデメリット
確定申告を夫婦別で申告するメリットとデメリットを教えてください。
(CA版2025年1月号掲載)
通常、タックスリターン(確定申告)は夫婦合算で申告した方が税金面で有利ですが、状況によっては別々に申告する方が良い場合もあります。
夫婦別申告のメリット
①責任分担ができる
配偶者が収入を少なく申告したり、控除を多く申請して後で問題になる可能性がある場合、別々に申告するともう一方が責任を負わずに済みます。
②配偶者の借金の返済を避けられる
配偶者に結婚前の税金滞納や養育費、学生ローンの未払いがあると、夫婦合算申告ではその返済にあなたの還付金が使われる可能性があります。別々に申告すれば回避できます。
③高額所得者の州税を回避
カリフォルニア州やニューヨーク州などでは、高所得者に追加の州税が課されます。別々に申告すれば、収入が高い配偶者だけが対象になります。 他にも、例えば妻がアメリカの年金収入のみで、夫に給与所得がある場合、夫婦別々に申告をすることで節税につながった事例があります。
夫婦別申告のデメリット
夫婦別々の申告では、以下の税制優遇は受けられません。
勤労所得税控除(Earned incometax credit)や教育税額控除などの控除。学資ローン利子控除や社会保障給付の一部控除。控除の方法は、一方が項目別控除を選ぶと、配偶者も同じく項目別控除になります。また、賃貸不動産の損失控除や高齢者・障害者向け控除の適用も不可です。
どちらが有利かは、合算申告と別々の申告で比較することが大切です。
●関連記事:アメリカのタックスリターン・確定申告
アメリカでの相続のポイント
子どもに資産を渡す場合、どんな点に気をつければいいでしょうか?
(CA版2025年1月号掲載)
アメリカの贈与税と遺産税は、生涯除外額や年間贈与の非課税枠を活用し、適切な計画を立てておくことが重要です。「Unified Exclusion(生涯除外額)」を利用すれば、一定額までの贈与や相続が非課税となり、資産の移転計画がスムーズです。Unified Exclusionはインフレに応じた調整があり、公平性が保たれています。
2025年の注意点
2025年の生涯除外額は、1人当たり1399万ドルまで、夫婦では最大2798万ドルで、この額まで資産を贈与税や遺産税なしで移転できます。さらに、 贈与先1人当たり1万9000ドル(夫婦で3万8000ドル)までは、生涯除外額を消費せずに贈与が可能です。また、贈与として教育費や医療費を直接機関へ支払う場合は非課税です。
相続計画が重要な理由
計画を立てない場合、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
①資産が法定分割され、遺族間の争いが生じる。
②遺言執行者が不在の場合、裁判所の介入で手続きが遅れる。
③故人の希望通りの贈り物や寄付が実現しない。
早めに専門家へ相談し、計画を立てることが重要です。現在の除外額を利用した贈与は、将来の税負担軽減につながります。
アメリカを去る場合
将来、アメリカを離れ、市民権や永住権を放棄しても、子どもがアメリカに残るケースでは特別な注意が必要です。例えば、アメリカに残る子どもが将来的に資産を相続する場合、親は税法上の非居住者となるため、適用される税制が異なる可能性があります。また、複数国間での税務リスクを把握しておくことが必要です。
遺産計画やトラストを立てないと、死後、資産は州の法律に基づいて分配されます。つまり、裁判所が資産分配を行い、余分な時間と費用がかかったり、希望通りの贈与や寄付が実現しなかったりする可能性があり、遺族が経済的に困窮することもあります。さらに、遺族間で争いが生じるかもしれません。遺産計画やトラストを立てればリスクを回避し、資産の分配をスムーズに行うことができます。
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石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。 アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ 米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー |
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。



