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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

122) ブランドは利益の源泉、羅針盤

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
ブランドこそが利益の源泉です。


玄関に来てくれる便利 

「ブランド」は、自社がお客さんから選んでもらえる理由です。利益の源泉ともいえ、提供価値で決まります。「プリウス」「スーパードライ」は、ブランドネームであり、ブランド構成要素の1つです。ブランドで最も重要なことは、「提供価値」。よって、ブランド創造で一番最初に手がけるべきなのは、価値設計なのです。クロネコヤマトは自社ブランドの提供価値を「運送業」とも「宅配業」とも定義づけていません。「玄関に来てくれる便利」としています。物騒な昨今、顧客の玄関ドアを開けてもらえる強みを最大限活用しようと考えました。その結果出た新商品は、「デジタル家電の修理」です。

従来、デジタル家電が故障した場合、顧客は販売店に製品を持ち込み、販売店はそれをメーカーの修理工場へ送ります。数日後、修理された家電は工場から販売店に送り返されます。連絡を受けた顧客は販売店へ取りに行きます。

ここまで都合10日かかっていました。販売店から修理工場へ、修理工場から販売店へ製品を運ぶのはヤマトがやっていました。そこでヤマトは考えました。「どうせ運ぶんだったら、自社で修理工場を持てば、顧客から直接注文を受けられるんじゃないか」。こうしてヤマトは修理工場を建設し、新たなサービスを始めました。

顧客は修理したいデジタル家電があると、自分のエリアの宅急便ドライバーに電話するだけ。ドライバーは荷造りの専門家ですから、段ボールを持って顧客の家に上がり、ムダなく家電を梱包、トラックに積んで、自社の修理工場へ運びます。修理された家電はまた担当ドライバーが引き取り、顧客の家へ直接運んでセッティングします。この方式にすると、3日で済みます。

顧客にとっては納期が短くなるし、自分で販売店まで運ぶ手間もなく、梱包もしなくていい。いいことずくめです。「修理」という膨大な市場があることは、以前から家電メーカーにも、販売店にも、見えていたはず。なのに、彼らは「どちらかというと避けたい」面倒ごととしてとらえていたため、「利益の源泉」に気づかなかったのでした。



仁丹の価値とは

森下仁丹は創業110年以上の歴史を誇る「100年ブランド」です。梅仁丹、グリーン仁丹などの仁丹で有名ですね。しかし、森下仁丹の提供価値は、製品にあるのではなく、実はカプセル技術にあります。銀粒仁丹の製造から派生したビーズ状のシームレスカプセル製造技術。超ミクロの透明の継ぎ目がないカプセルを製造する技術は他社の追随を許さないものがあります。三層の植物性透明カプセル製造技術は世界特許であり、他社への技術供与もしています。

この技術から生まれた製品が、シームレスカプセルにビフィズス菌を入れ、胃で溶けずに腸まで届いてそこで溶けるビフィーナ。腸を浄化し排便をスムーズにする新しい価値を提供します。しかも、ビフィーナは従来の仁丹製品のように店頭に置いて広告で売るやりかたを変えました。新聞の窓広告といわれる小さなスペースに、無料お試しキャンペーン広告を出稿したのです。「仁丹」という、日本人ならだれでも知っているコーポレート・ブランドの大きな知名度が奏功し、無料お試しキャンペーンに応募する人が殺到しました。実はこの時、森下仁丹の通販事業部には2人しか担当者がいませんでした。それが2004年には年商70億円、購入者約100万人の大ヒット商品に育ちました。



自社の価値を考えてみましょう

御社(お店)の顧客にとっての価値は何でしょう?

おいしさ? どこよりも速い納期? 徹底したアフターフォロー? 営業マンの笑顔?

コツは「あるもの探し」です。「ないものねだり」をするのではなく。自社はなぜ、利益を上げられているのか。冷静な分析と判断が必要です。そしてそこで出てきた価値こそが、御社のブランド価値そのものなのです。ブランドは、対外的には「顧客に選んでもらう理由」であり、社内的には「経営の羅針盤」です。困ったとき、迷ったとき、経営者のみならず社員全員が立ち返る羅針盤。できるだけ具体的に、事実をベースにして、「あるもの探し」をしてみてください。きっと楽しいですよ!


(2009年7月16日号掲載)