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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

127)1ミリの差

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
「人が人に」するのがビジネスです。


繁盛する店・しない店の差は?

同じような製品・サービスを提供していながら、片一方は繁盛し、もう一方は閑古鳥。この違いって、どこにあるのでしょう?私は、難しいことではなく、「ほんの1ミリの努力の差」だと思っています。

先日、JOYWOWで主催するセミナー会場探しのため、候補のホールをいくつか見て回りました。結果として、神奈川近代文学館のホールに決めたのですが、決定打となったのは、窓口として会場見学などに応対してくださった職員Uさんでした。収容人数220名、スクリーン、音響設備完備というハードの側面はもちろん必要条件ではありますが、それだけではやはり十分とはいえません。同様の設備なら他にいくつもあります。やはり私に意思決定させた理由は、Uさんの、「仲良くなりたい、お役に立ちたい!」という全身からにじみ出てくる空気感なのです。

同じくみなとの見える丘公園内にあるKKRポートヒル横浜は、元・国家公務員共済組合連合会というお堅い組織であったにも関わらず、応対してくださった営業のAさんがこれまた熱心で、宴会場を案内してくれる時にも、いろいろと私のニーズやこだわりについて質問し、できるだけそのニーズに寄り添いたい、お役に立ちたい、という姿勢が見られました。あいにく予定していた日程では会場が空いていなかったのですが、今後是非取引したい、と思いました。「また会いたくなる」人だったのです。

UさんもAさんも、私に何かモノをプレゼントしてくれたり、価格のディスカウントを提示するわけでも、何でもありません。「魔法」など、ないのです。ただ、「顧客のお役に立つためには何をしたらいいのか」を考え、寄り添う姿勢を示してくれたに過ぎません。この姿勢を私は「1ミリの努力」と呼んでいるのです。


「私、金沢なんですよ」

自社出版本『J OYWOW「あり方」の教科書』を印刷してもらう印刷会社とのやり取りで、窓口の女性の人と電話している時のこと。週末にかかるので、見本の送付先を自宅にしてもらおうと住所をファクスしたら、折り返しの電話で「いいところにお住まいですね。私、金沢なんですよ(金沢は横浜市内の区名。葉山とは車で30分くらいの場所です)」との一言が。これで一気に打ち解け、仕事以外の話に花が咲きました。

その後何度も打ち合わせしましたが、要件を話すための「こころのパイプ」がきれいに掃除されているイメージがあり、非常にスムーズに事が運びました。「『仕事のルールだから』これとこれをご連絡ください」という心の姿勢と、「あなたをもっと知りたい、お役に立ちたいから教えてください」という姿勢では、結果手元に残る顧客情報が同じであっても、「顧客とのこころのパイプ」はどちらが太く、クリーンでしょう?


1ミリが何万ドルにもなる

昨夜友人たちと食事した馴染みの豚しゃぶ店。この店にいつも一緒に行く仲間の一人Yはいつも車で来るので、ソフトドリンクしか飲めません。でも、本当はビールが好きだということを店主は知っています。彼がYに出したのは、キリンが開発した世界初アルコール度数ゼロのビールテイスト飲料、キリンフリー。しかも、そういう「特別な」ドリンクは飲み放題メニューから外され、別料金になるのが普通なのに、店主は特にエクストラチャージを請求しません。これも「1ミリ」ですね。こういう「ほんのちょっとのこと」が、お客さんのこころに刺さり、「また次も来よう」というリピートを呼び起こすのです。つまり、顧客とのこころのパイプを長くする。一回あたりの売上は仮に小さいかもしれないけれど、何回も来て贔屓にしてくれるわけです。

ビジネスはリピートで成り立っています。つまり、「たった1ミリ」の努力が、将来的には、累計通算何万ドルもの商いに育つのです。しかし、これのできない店が多いですよね。4人で来ている、しかも、いつも同じその4人のメンバーで来ていることがわかっているのに、海老フライを3匹しか出してくれなかったり(笑)。1匹増やすための変動費なんて高が知れているはずです。そこに気づくか、気づかないか。お得意様こそ気づけば評価してくれます。1ミリが何万ドルにもなります。


(2009年10月01日号掲載)