働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

128) みずほの村市場に学ぶ

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
「どこにでもある商品」も哲学で変わります!


ただの野菜の直売所ではない

茨城県つくば市にある「みずほの村市場」は、野菜の直売所。ただの直売所ではありません。お客さんは、地元つくば市だけではなく、東京や神奈川など県外からもやってきます。その数年間25万人!開業から19年、売上高は右肩上がりで伸び、今年の年商は6億円の見込みです。6億円の野菜直売所って、すごいと思いませんか?

どうしてそんなに人気があるのでしょう?価格が直売だから安い? ノー、ノー、実はその逆。スーパーで売っている野菜に比較すると2割から3割高い価格がついています。レジでお客さんが支払う金額を見ると、1万円以上はザラで、中には2万円を超える人もいらっしゃいます。高くても売れる理由は1つ。おいしいから。「どこにでも売っている商材=野菜」を使って、新しいビジネスモデルを構築した事例として、みずほの村市場を研究してみましょう。そこに見るのは、農業の「事業化」の取り組みと、「本物へのあくなき追究」です。


事業として成立させる

創業者の長谷川久夫(農業法人みずほ代表、社団法人日本農業法人協会会長)氏の言葉を、著作『直売所が農村を変える』(ベネット)から引用します。

「農家は原価計算ができないから、自分で値段をつけられない。これでは事業にならない」。

「農家では記帳がなされていない。帳簿もなければ、作業日報もない」。

長谷川氏は、農業を、持続可能な事業にしたいとビジョンを描きました。そのためには、きちんと次に再投資できる利益の残る価格をつけなければなりません。

「再生産ができる価格を守るにはどうすればいいのか。それとも安く売らなければ成り立たないのか、いくつもジレンマがあった。しかし、要は本物、それをかたくなに守っていくと心に決めた。だから生産者を選ぶには、人ではなく商品で声をかけた。友達や仲間ではなく、この地域でトマトのいい人、キュウリのいい人、ハクサイのいい人、野菜作りの名人達に出品を頼ん
だのである」。

「価格とは買い手と売り手の信頼関係の反映でもある。売り手である生産者にとって再生産を保証する価格をつけることで品質の向上に努めることができるし、安定価格で供給できる」。

結果、みずほでは、いろんな商品がブランド化しています。クインシーメロンの名人が作るメロンは14年前初めて売り出す折、1500円もの高値をつけましたが、実によく売れ、翌年には予約段階で売り切れてしまいました。

商品は必ず2種類以上の生産者のものを店頭に置くようにしています。価格競争をするのではなく、品質・味で競争するためです。後で参入する人は、先に出している人より必ず高く設定しなければならないルールです。「高いけど、その分おいしい」というストーリーが成り立たないと買ってもらえませんから。

また、厳しい品質管理基準を設け、訓練された指導員による農家への技術指導も行っています。もちろん、品質向上、おいしさ追究のためです。


哲学

みずほと他の野菜直売所の違いは、哲学の有無だと考えます。他の直売所は、「直売だから野菜が安く買えますよ、だから買って」という姿勢です。原価計算もできていないのに安くし、大手スーパーと対抗してみたところで、将来のないことは明らかです。

みずほは、「農業を事業化し、自立する」「農産物を単なる商品として捉えるだけではなく、
農業が環境や文化を創ってきたということをわかってもらう」という哲学を持っていて、消費者モニターの人たちにもしっかり伝えるようにしています。

日本の野菜の栄養価(ビタミンCなど)は、大量生産、品種改良、化学肥料の多投、土づくりをないがしろにしてきたツケが回って、40 年前と比較すると、5分の1や10 分の1に低下している由です。栄養価が低くなれれば、当然、おいしさも落ちています。

みずほの村市場から学ぶことを整理してみます 皆さんのビジネスにもきっと参考になると思います。
1.哲学を持つ
2. 原価計算をしっかりし、利益を残す
3. 事業(この場合は直売所)の目的を明確にする
4. 一つひとつの商品に特長を持たせ、ブランド化する
5. あくまで本物品質を目指す


阪本さんとJOYWOW メンバーの最新著書が発売中!
『JOYWOW「あり方」の教科書』
www.arikata.net


(2009年11月16日号掲載)