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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

141) 知的資本

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
資本はお金だけではありません。


ナレッジ・ウェポン

経営コンサルタントが使える資産は、ナレッジ・ウェポン(知識という武器)のみです。モノを生産する工場があるわけでもないし、商品を販売する店舗を持っているわけでもありません。毎日毎日クライアントの現場に行き、CEOと対話する。目には見えない社員間にさざめく「心の波音」に耳を澄ます。色眼鏡を排し、実際にクライアントの製品を買っている顧客の声を聞く…。その上でアドバイスや提言をするわけですが、使えるのは自分のアタマだけです。「元手がかからなくていいね」と言われそうですが、なかなかどうして、変化の激しい現在のビジネス環境、常にアップデートしておかなければ、知識は急速に陳腐化します。アップデートの方法は人によって色々でしょうが、私は読書です。


「師匠」との出会い

もともと私が経営コンサルタントになろうと決意したのは、トム・ピーターズの本に出会ったことがきっかけです。たまたまホノルル・カラカウア通り沿いの書店をひやかしていたら、『Tom Peters Seminar』というカセットテープがあって、「read by author」。著者が自分で朗読している!?とても新鮮でした。

早速購入して聴いてみると、頭がものすごく切れるのに、ハートはとても温かそうな声。内容は、当時流行していた経営理論やフレームワークをことごとく「超えろ!」とアジテーションする相当過激なものでしたが、いっぺんにトムの虜になってしまいました。

同名の著書を購入し、繰り返しくりかえし読みました。本の体裁もカセットテープの内容と同じくビジネス書の常識を破るスタイルで、人の写真があちこちにちりばめられています。しかも著名人のみならず、ホテルのベッドメーキングをする女性まで。私は感銘のあまり、くだんのハウスキーパーに会うために、本を持って日本からリッツカールトン・ホテル・サンフランシスコまで行ったほどです(残念ながら、当日彼女はお休みでした)。

それからというもの、トム・ピーターズを「師匠」と仰ぎ、新刊が出れば必ず買うのはもちろん、当時まだサラリーマンだったのですが、トムのコンサルティング会社TPG(トム・ピーターズ・グループ、当時パロ・アルトにありました)から会社案内を取り寄せたり、あげくは、アポなしでTPGオフィスまで行ってしまいました。トムは不在で、代わりに当時社長をしていたジム・クーゼスが相手をしてくれました。そして自著『リーダーシップ・チャレンジ』にサインをし、プレゼントしてくれたのです。突然ノーアポでやってきた日本人に対するジムの気さくな雰囲気は、その後、同じようなことがあった時の私の模範になっています。それ以降、ジムとトムは、私にとって、本を通じて私淑する「師匠」になりました。


本で私淑する

本を読む。1人の作家や思想家を繰り返し読む。やがて自分の血肉になった時、それは知的資本(元手)になっています。つまり、資本は銀行だけではなく、書店でも入手できるのです。しかもお金と違い、知的資本はいくら使っても減りません。減らないどころか、活用すればするほど磨かれます。

その後、ドラッカーが加わりました。ドラッカーの英語はとてもわかりやすく、リズムが良くて読んでいて知的刺激が楽しいので、なるべく原書で読むようにしています。すると、ドラッカーの声や息づかいまでわかるような、そんな気になります。それほど何度も繰り返し読みます。すると、ドラッカーの経営哲学「強みの上に築く」「外の風に吹かれる」「マーケティングは販売を不要にすること」「事業の目的は顧客の創造」といったフレーズが、普通に口をついて出てくるようになります。

ジムとは実際に会っていますが、トムとドラッカーとは面識がありません。しかし、自然に彼らの言葉が血肉になっているということは、彼らの財産を継承した、という意味です。本もとても勉強になっていますが(リーダーシップの古典的名著です)、ジム本人の醸し出すリアルな空気感の体験が重いです。こうなると、本だけではなく体験も資産になり得ることがわかります。

1人でいいから、徹底的に読み込み、何かの拍子に自然に口から出る言葉になるほどまで、惚れぬく著者を作ることをおすすめします。皆さんの知的資産を形成してくれるでしょう。

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(2010年6月1日掲載)