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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
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157)人が介在する意味

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。やっぱり人、ですね。


ここまできたデフレ

家族で横浜のショッピングモールに出かけました。ウォーキングに凝っているので、シューズを新調したかったのです。

ここ数年、日本はデフレの嵐が吹き荒れていますが、「ここまで来たか」という感をもちました。女性のブーツが1450円、帽子に付いた値札が2200円ですが、小さな貼り紙が付いていて「レジでさらに半額にいたします」。つまり、1100円!このように、殆どの商品が千円台なのです。2千円を超えるものはなくて、550円の靴もありました。単価1450円の商品を仮に100個売ったとしても14万5千円です。店舗の家賃は安くないはず。損益分岐点が高いのにこの単価では、果たして、明るい経営の未来が描けるのだろうか、と人ごとながら心配してしまいました。ファストファッションの影響で、アパレルの価格戦略はどうしても安いほうへ、安いほうへと流れてしまいがちです。

…と、ここまで書いたところで、ユニクロから大きな荷物が届きました。単価は、Tシャツ590円、パーカー1290円、ダウンジャケット5990円…。早速ダウンジャケットをはおってみましたが、軽くて暖かく、デザインもまずまず。文句つけようがありません。しかし、これはユニクロのビジネスモデルが実現したもので、誰もができるプライシングではありません。ただ単に低い金額にするのは正しいマネジメントとは言えません。何かほかに道はないものでしょうか。もちろん、あります。


視力をデザインする

眼鏡店A。駅前の路面店です。眼鏡の置かれている環境も、アパレルと同じく、デフレです。安い眼鏡なら、それこそ、いくらでも手に入ります。一式で1890円とか、やはり1千円台のプライスで入手することも簡単です。しかし、私は今度眼鏡を作るならA、と決めていました。以前家族が眼鏡を作った時の対応を見ていたので。

家族はそれこそ3千円くらいのリーディンググラスを「軽く」買おうと思って店に入ったのに、出る時には5万円以上する眼鏡をオーダーしていたのでした(笑)。理由はセールストークがうまいとか、すすめ上手とかいうレベルのものではありません。「顧客の視力をデザインする」本物の姿勢があります。そこに私は惚れました。

眼鏡は両目で作った像(イメージ)を脳で認知するものです。Aのスタッフは「グラスアドバイザー」として、測定・加工・フィッティング(掛け具合調整)、眼鏡選びにぴったり寄り添ってくれます。店頭には眼鏡が並べてありますが、眼鏡というモノをただ売っているのではありません。この姿勢が素晴らしいと思います。

私は中学1年、13歳の時からおよそ40年眼鏡のお世話になっているため体感でわかるのですが、眼鏡は身体の一部。ただ、鼻の上に乗っかっていればいい、というものではありません。また、私のように左右の視力度数の差が大きい場合、作ったばかりの眼鏡だと酔ってしまうような、そんな感じから始まります。これは慣れるに従って治るものですが、しばらくかけてみても治らない場合、素人のアルバイトスタッフしかいない店だと心細くてなりません。その点、Aのスタッフはたっぷり1時間、視力検査と私の顔とのフィッティングに向き合ってくれます。私の使うパソコンがノートかデスクトップかという質問までします。目と画面の距離が違うから調整に影響するのだそうです。


顧客に真摯に向き合う

私が視力検査をしている横で、ほかの顧客が補聴器の相談に来ていました。

「○○さん、では、いきますね。これは聞こえますか。『今朝は何を食べましたか』」

「『今朝は何を食べましたか』、聞こえます」。

「では、これはどうでしょう。(少し離れて、小声で)『おいしかったですか』」。

「聞こえますよ。『おいしかったですか』」。

「問題ありませんね。ご主人、奥様に話しかける時には、ややゆっくりと、大き目の声で話して差し上げてください」。

結局、補聴器は不要、との診断でした。診断料金を聞く顧客に、「料金は不要ですよ」と答えていました。素晴らしい!たとえ今日売上にならなくても、将来補聴器が必要になったら、この顧客は確実にAで買うはず。

デフレを乗り越える鍵は、専門知識を備えた人です。

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(2011年2月1日掲載)