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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

173) 高齢者バンザイ!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
「知恵」は古びません


ゲーセンの意外な常連

コンサルティングの取材で、ある地方都市郊外のショッピングモールへ行きました。ここはターゲットが「子供がまだ幼い若い家族」と絞り込まれています。テナントをみれば一目瞭然で、服にしても、レストランにしても、若年層向けのセレクションです。「お父さんお母さん」と言っても、まだ20代後半から30代ですから。面白いのは、自動販売機の背丈が低い。小さな子供でも買えるように、という配慮でしょう。

ターゲットとテナントの一致に納得しながら店内を歩いていて、ゲームセンターに入った途端、違和感が。最初は理由がわからなかったのですが、やがてはっきりしました。高齢者が多いのです。メダル落としゲームでは、真剣な面持ち、慣れた手つき。明らかに毎日来ている、仲間がいる、そんなオーラが全開です。

後で調べてみると、やはり家庭用ゲーム機の普及や少子化でゲーセンのメイン客が高齢者になっているようです。全国で200店舗を展開するナムコでは、同年代の友達を連れてきた高齢者にメダルをプレゼントしたり、毎週木曜日に高齢者はメダルを2倍もらえるサービスをしたり、マッサージチェアを設置したり(朝日新聞2011年9月3日夕刊記事による)。

今やゲーセンは子供や若者ではなく、高齢者の遊び場になっているんですね…、と感心していたら、大阪でこんなことがありました。


滋味あふれる笑顔

出張でたまたま入ったモスバーガー南森町店。モスバーガーは味がいいのでよく行く馴染みのチェーンです。カウンターに立って、オーダーしようとした時、「ハテ、何を食べようか」と、ちょっと迷ってしまいました。ファストフードの注文カウンターって、結構プレッシャーありますよね?「素早くオーダーしなければ」という。目の前にキンキンとオクターブ高い声の若い店員さんが待っていればなおのこと。面倒臭くなって適当に目の前のメニューのどれかを指差し、ホッとしたのもつかの間、「ドリンクのサイズはいかがいたしましょう?」と重ねて聞かれ「真ん中で」とか何とか訳のわからない注文をしたりします(笑)。

ところが、今私のいるモスバーガーではそういうプレッシャーが感じられなかったのです。「少し考えていいですか?」「はい、どうぞ!」。しばらくメニューを検討した後、オーダーしました。

席について、「どうして今日はプレッシャーがなかったんだろう」と考えていて、料理を持ってきてくれた店のスタッフを見て、理由がわかったのです。制服こそモスバーガーの統一ユニフォーム、膝上のスカートにハイソックスですが、高齢者!お年は70歳くらいでしょうか。にっこりと笑いかける笑顔が滋味あふれる、という感じで、いいのです。また、食事をして出て行くお客さんの背中に「行ってらっしゃいませ〜!」と元気よく投げかける言葉の温かさ。


高齢者だからこそ

このお店は、高齢者がスタッフの大半です。もちろん、中には若い人もいますが、それでも見たところ40代(それでもスタッフの中では若手です(笑))。聞けば、高齢者雇用のケースとしてテレビの取材も入ったそうです。店頭にお花があり、手入れが行き届いていて、周囲はオフィス街なのですが、心和みます。そういえば、店に入ろうとした時、しゃがんでお花の手入れをしてくれていたのも、年配の女性スタッフでした。気持ちいい声で「おはようございます!」と挨拶してくださいました。

中秋の名月には、花を生けた花瓶と月見まんじゅうが飾ってありました。この気配りの温かさ。人生の先輩だからこそ、「行ってらっしゃい」のひと言にぬくもりがにじむのですね。いくらファストフード店とはいえ、人が食事し、くつろぐ場所なのですから、高級レストランのホスピタリティーはいらないまでも、やはりそこには「おもてなし」の心があって悪いはずがありません。

人生の先達のもつ温かさ、人への目配り、心配りは、ものすごい「売り」になります。少子高齢化社会の対策って、政府が何かをして「あげる」のではなく、高齢者の皆さんに元気で働く場所を提供するだけでいい、そんな気がしました。

皆さんの会社やお店でも、高齢者の知恵を活かす何かをやってみてはいかがでしょう?

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(2011年10月1日号掲載)