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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

181)ブランドは、人がつくる

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
ブランドは企業の魂です。


選ばれるために

ネットのインフラが整い、スマートフォンの普及やFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアが生活に溶け込んだ現在、生活者・顧客の指先に情報が宿るようになって、企業にとって「宣伝」はとても難しくなりました。「うちの製品はこんなにいいんですよ!素晴らしいですよ!ぜひ買ってください!」といくら叫んでも、誰かのTwitterツイートやFacebookの書き込みで「それほどでもないよ。むしろ平凡」と言われたらアウトです。生活者・顧客は企業の言うことより、ソーシャルで流れている評判を信じます。

そんなビジネス環境だからこそ、「売るのではなく、選ばれる」ためにブランドは重要。ブランドづくりのための要素「価値、価格、ネーム、ロゴ、パッケージ、ブランド・ゾーン…」をしっかり作り込み、実践していくことはとても大切ですが、それだけでは十分ではありません。やはり最後はブランドに携わる人が重要です。


会議室を飛び出した

ある食品メーカーで、女子社員が2人、店頭に立ってマネキン販売体験をしました。マネキンというのは、スーパーマーケットなどの店頭でお客様へ試食をおすすめし、販売促進する人のことです。通常は専門業者の派遣スタッフがしますが、その食品メーカーのこれまでの経験ではマネキンでは思うように売り上げが伸びないというのが定説でした。

くだんの女子社員2人はブランドを研究する中で「現場に立つことの重要性」を再認識、「ならば自分たちで現場に立ってみたら何が見えるか」と会議室を飛び出し、ある月曜日の11時から19時まで自社商品3種類をマネキン販売しました。そのスーパーは翌日の火曜日がポイントデー、かつ、いずれも売れ行きがイマイチの商品ばかりで、果たしてどうなることやら、と案じながらも、「やると言ったらやる!」の気合いで、実行しました。お客様に試食をしてもらい、各商品のおすすめポイントをしっかり説明すると、びっくりするほど買ってくれました。試食した方の9割は買ってくれたようです。結果、製品A30個、B37個、C41個の販売実績でした。

同じ条件下でのデータがないものの、10月のある土日のマネキン販売における製品Aの販売実績は、土曜日17個、日曜日20個。同スーパー他地区店舗11月のある木金では2日間で、製品A9個、B17個、C8個です。2日間でこの数字というのは、別の問題も隠れているのかもしれませんが、ともあれ、社員2人のマネキンの販売実績には遠く及ばない数字です。

やはり店頭で、自社製品への愛情と情熱を社員が全身で発揮しながらお客様におすすめするヒューマン・パワーが、ブランド価値をしっかり伝達し、「選ばれる」ことにつながったのでしょう。


3000のエピソードの中から

リーガロイヤルホテルは2010年、1935年の創業から75周年を迎えた記念に、ホテルスタッフやOBにエピソードを募りました。自分自身の体験したことでもいいし、先輩方から語り継いだものでもいい。

3000を超えるエピソードが集まりました。その中から75周年にちなんで75話を厳選し、「リーガロイヤルハーツ」「ヒストリー」「数字で見るリーガロイヤルホテル」「味覚」…とカテゴリー分けし、一冊の本にまとめました(『75 EPISODE COLLECTIONS』非売品)。最後のページには「76番目のエピソードは、あなたとともに綴りたいと願っています」と記して。

これをブランド・ブックと呼びます。自社ブランドが何にこだわり、何をして、何はしないか。無味乾燥なマニュアルと違い、生きたストーリーは人を打ちます。お客様よりもむしろ、現在ホテルで働くスタッフへのブランド継承の意義が大きいと思います。現に、あるホテルスタッフは「私たちも知らないことが書かれていて、勉強になります!」と頬を紅潮させて話していました。

じっくり読むと、やはりブランドを維持発展させてきたのはホテルのシステムやハードウェアではなく、人なのだとわかります。例えば、あるドアマンは5000人のお客様のお顔、お名前、勤務先、役職、車種・車番、車の色などをすべて暗記しています。

やはり、ブランドは人がつくるのですね。

(2012年2月1日号掲載)