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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

189)つぶすには?

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

どこを攻撃されたらアウトですか?


産業革命

近所に、ある旅行会社の自社ビルがあります。10階建て、威風堂々とした立派な造り。ところが現在、そのビルに旅行会社はありません。別の賃貸ビルへ移転し、自社ビルは空き家です。理由は、旅行ビジネスが10階建てビルを埋めるだけの業務量と人員を必要としなくなったから。組織は市場(顧客)に合わせてその形態をチューニングしなければなりません。市場が変化したら、組織も変化せざるを得ません。

今、あらゆる業種業態で、産業革命が起こっています。起爆剤はネット。企業と生活者・顧客に情報格差がなくなり、スマートフォンで生活者・顧客の指先へ情報アクセスポイントがやってくるようになると、ビジネスモデルそのものが根底から覆ってしまいます。旅行業は、「宿と足と情報」を独占することで利益を得ていました。しかしネットが独占のヴェールを剥がし、生活者・顧客の指先にも開放しました。こうなると過去のビジネスモデルの修理では間に合いません。いったん部品をバラして、組み立て直すくらいの大手術が必要になってきます。

日本のお家芸とも言える家電御三家が揃って苦戦を強いられているのも、家電業界で産業革命が進行しているからではないでしょうか。大量に同じモノを作って、大量に売る。テレビなどのマスメディアを利用して大衆に向け宣伝する。数年に1回、モデルチェンジをして、買い替え需要を促す。大型ゴミを引き取ってもらうだけでお金のかかる先進国ではもはや、「何度も買い替える」ことを前提にしたビジネスモデルは成立しないのでしょう。同じように産業革命の波にさらされているのが新聞、出版、保険。私見では、これから新しいビジネスモデルが出てきて、業界全体がひっくり返ると思われるのが不動産業です。医療、放送も近いうちに地面がぐらつき始めるはずです。


顧客分析

今日、塾生の経営相談に乗っていて、彼の業界(B2B)でも産業革命が進行しつつあると確信しました。特にこれといった理由が見当たらないのに、受注がめっきり減ってしまっているのです。

私のアドバイスは2つ。一つは、顧客分析。顧客が買ってくれている理由を徹底的に調べる。その理由が5年前と同じか、違うか。それまでは取引があったのに顧客が買ってくれなくなった理由も調べる。価格で折り合わなかったのか、競合社に行ったのか、それとも、顧客企業の仕事そのものがなくなってしまったのかもしれない(産業革命は当然ながら、顧客をも襲っています)。顧客数と受注数の変化を調べる(受注額は、B2Bの場合、一般消費財と違って顧客にもコントロールできない要素ですから、受注数を見ます)。このあたりは、きちんとしたデータでなくても、営業マンの肌感覚で構いません。感覚は、実のところ数字より正確に真実を表現しているものです。


つぶすにはどうするか

第2のアドバイスは、「あなたの会社をつぶすにはどうすればいいか考えてみてください」。あなたがミサイルを持っているとして、どこを攻撃しますか?某ウィスキーメーカーに同じ質問をしたところ、「そりゃ、水源ですね」しばらく考えて、「いや、やはりウィスキー原酒の樽が眠る蒸溜所をやられたら、アウトです。中には半世紀眠っているウィスキーもあって、時間はお金で買えませんから」。イエス、ウィスキーメーカーにとっての「生命線」は、「時間」なのです。水源は他の土地にも可能性があります。しかし、樽にじっくり寝かせてきた時間だけは取り返しがつきません。

塾生は最初「工場」と答えました。しかし、工場なら、地域雇用の問題は別として、お金でなんとかなります。「つぶすには」の問いを考える時、大切なことは、「お金で解決できない生命線は何か」を考えることです。答えは、製品のコアとなる心臓部部品の仕入れ先でした。

さて、あなたのビジネスをつぶすには、どうしますか?

阪本さんの新著書が発売中!
『ビジネスチャンスに気づく人の57の法則』(日経ビジネス人文庫)

(2012年6月1日号掲載)