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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

192)ストーリーで売る

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

何で覚えてもらいたいか?


記憶が事実になる

昨日、JOYWOWのイベントに、1年半くらいぶりにお会いする旧知のOさんが来てくださいました。会うなり私は、「久しぶり!あれっ!?ひげ、剃ったの?」。Oさんは怪訝そうな顔をして、「ぼくはいつもひげ、ないですよ」。私は、あっけにとられました。


脳内イメージのOさんは、「無精ひげをおしゃれにはやした優男」なのです。彼とはおよそ15年前初めてお会いし、その頃、まるでアイドルみたいなかわいい青年でした。その後、彼は独立。デザイナーとして多忙となり、私もあちこち飛び回る生活で、10年以上リアルには会っていない時期が続きました。ただその間も、メールなどでつながっていました。


そして一昨年だったか、フェイスブックであらためて友達申請した時、彼のアイコン写真を見てびっくりしたのです。それまで、私の脳内イメージのOさんは「かわいいアイドル」だったのに、今はなんだかいい意味で大人っぽく「やさぐれ」ていました。その時に、事実ではないにもかかわらず、私の中にある「Oさん=やさぐれ=無精ひげ」という要素がインプットされてしまったようです。つまり、現実のOさんとは関わりなく、私の脳内にイメージとしてOさんが存在し続けていたのです。それは「かわいい青年が年を経て、いい感じにやさぐれた大人になった!」という驚きと共にインプットされたため、より強烈に、ぬぐいがたいイメージとして焼き付いたのでしょう。


ブランドは記憶

この体験から、私はあらためて、「ブランドは、記憶にこびり付くためのもの」だと思いました。そして、強烈な印象と共に記憶にこびり付けば付くほど、そのカテゴリー内におけるブランドは強くなります。「○○(カテゴリー名)といえば△△(ブランド名)」という風に、すぐに想起してもらえます。「スマートフォンといえばiPhone」「街中にあるカフェといえばスターバックス」…。


では、どうすれば「強烈にこびり付く」ことができるのか。ずばり、ストーリーです。Oさんのケースでは、「かわいい青年が年を経て、いい感じにやさぐれた大人になった!」ストーリー。事実は、どうでもいい。お客さんは、事実に惹かれるのではなく、ストーリーに共感して、購入します。


主語をお客さんに

メーカーの場合どうなるでしょうか。「これこれの原材料を使って、熟練の職人が丹精込めて作りました…」。確かに事実はそうかもしれません。しかし、お客さんが欲しいのは、「自分がその商品を手にすることで、どのような喜びが得られるのかというストーリー」です。ストーリーが買う理由になります。アピールするのであれば、たとえばカメラバッグなら「撮影の現場で、カメラを持ったまま、片手で開け閉めできます」という風に、「主語がお客さん」で成立するストーリーにしましょう。


レストランの場合を考えてみましょう。レストランは料理を売っているのではありません。もちろん、味のおいしさは絶対必要です。しかし、「料理のおいしいレストラン」は今や星の数ほどあります。要注意なのは、ストーリーといっても「フランスのどこそこのレストランで修業したシェフが、○○農場で採れた野菜を使って作る」といった「店側のストーリー」は弱いという点。ゲストは、「自分の思い出に残る体験」をするためにやってきます。自分にお金を支払います。


かといって、ゲストの思い出のために大げさに何かアトラクションをする必要はありません。顧客一人一人を慮おもんぱかる店のやさしい目配り、とびきりの笑顔。いずれも、コストは一円もかかりません。「あの時、うちのテーブルを担当してくれたおねえさん、よく気配りしてくれたよね。おかげで私たち、久しぶりの外食だったけど気持良く楽しめたね」こそが、立派なストーリーです。何で覚えてもらいたいか。思い出してほしいか。わかりやすいストーリーにしておきましょう。

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(2012年7月16日号掲載)