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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

203)フロントを大事にする

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
忘れがちですが大切なこと


ミスター仏頂面

趣味でやっているバンド仲間とリハーサルの後、軽く食べて帰ろうと、イタリアンレストランへ行きました。ドアを開けて、最初に出会ったスタッフに「5人ですが、席ありますか?」と聞くと、彼が仏頂面。私たちが何かマナー違反をしたのかな、とつい思ってしまいました(普段はみんなきちんとしたビジネスパーソンですが、バンドモードが入ると、時々非常識なことをやらかすので(笑))。そして彼は、「いいですよ。どうぞ」と言う。客を通すのに、「いいですよ」はないでしょう(笑)。彼を「ミスター仏頂面」と呼ぶことにしました。

席に通されるまで待つ間、入口に貼ってある写真を見ました。「店長が2010年にイタリアにピザの修業に行った時の写真です」とあります。「そうか、本場イタリアで修業したんだ」と思っていたら「写真集もありますので、ご覧になりたい方はスタッフまで」ですって。「何か勘違いしてるな、ここ…」と思いながら、席へ向かいました。


料理はおいしいのだが

ピザはおいしかったです。ただ、ビールのおかわりの時、「すみませーん」と何回か大声で呼ばないと誰も来てくれません。聞こえているはずの、入口付近で背中を見せているミスター仏頂面が、隣にいる若手スタッフに「おまえ、行けよ」という感じで、私たちの方向へ手を振っているのが見えます。感じ悪い(笑)。

そうしてやってきた若手スタッフ、愛想はいいのですが、空いた皿やグラスをすぐに片付けたがる。ゆったりと食事と会話を楽しみたいのに、せわしないことこの上ありません。ピザの味はいい。ビールは珍しいハートランドビールでおいしい。なのに、「このレストランでの体験」はちっとも楽しくないのです。「次、もう一度来たいか?」と自問すると答えは「ノー」です。


第一印象が決定打

客はレストランに「エサ」を食べるために来るわけではありません。「楽しいひと時」を過ごすために来ます。振り返ると、店内に一歩入った時のミスター仏頂面の第一印象が、その後のレストラン体験のすべてに色を塗っていることがわかります。店をやっている人に私がこういう話をすると、皆、「そうですよねー」と同意してくださいますが、実際、顧客とのファースト・コンタクトを誰に任せるかというのは、非常に重要な問題です。店舗だけではありません。予約を受ける電話を誰が取るのか。メール対応を誰がするのか。「手の空いている人が」というのが現実でしょうが、ならば「顧客とのファースト・コンタクトがその後の顧客体験を決定づける」という重要事を全員でシェアする必要があります。


永遠の2分

知人Aさんがランチの予約電話をしました。Aさんはそのレストランの社長と親しいため、なるべくその店を利用しようと思っていて、重要な顧客とのランチミーティングの舞台として選びました。忙しい社長を煩わせるのも何なので、直接店に電話します。日程を口にすると、電話口の若い女性スタッフは「その日は2階に団体のお客様が入っておりまして、料理をお出しする時間がかかってしまいますが…」と「イヤそう」な空気で言います。「そうですか。でも、時間はたっぷり取っていますので、2時間くらいランチにかかっても構いません」と言うと、「日にちを変えていただくわけにはいきませんか?」ときた。「お客様と約束しているので、日にちを変えるわけにはいきません。ということは、行ってもランチは食べられない、ということなのですか?それとも時間がかかるから気を遣っていただいているのですか?」と返すと、電話の向こうにいる彼女は2分ほど沈黙してしまったそうです。沈黙の電話2分は永遠に続くかと思われるほど長い時間です。Aさんは「わかりました。では予約は結構です」と電話を切りました。「二度とそのレストランには行かない」と心に決めて。2分の沈黙が、永遠に1人の顧客とその背景にいる何万人という顧客を失った瞬間です。


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(2013年1月1日号掲載)