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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

205)独善でいい

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

とんがりの本質は…。


1人の100点満点

最近、顧客に支持され、ファンを増やし続けるための姿勢として「独善」が良いのではないか、と思い始めています。独善という言葉には良いイメージはなく、独りよがりとか、自分勝手な印象があります。しかし、「独善でいい」というより、「独善でなければいけないのでは?」とさえ思っています。

言うまでもなく、万人受けする商品は生き残れません。ずっと考えていたことですが、前号で書いた海洋堂・宮脇修一社長とお目にかかったことが最後のひと押しになりました。「みんなの平均点より1人の100点満点」こそが繁盛の秘訣です。しかるに、企画会議などでは「で、それって、どれくらいの市場があるんだい?」という質問が付きものです。このような「想定され得る質問」への対策として、事前に市場調査をします。ターゲット顧客にインタビューしたり、アンケートを取ったりします。しかるに、そのような調査から独創的でとんがった商品が生まれることはありません。ぬるい結果が出るだけです。なぜなら、顧客は既にある商品しか知らないから。プロフェッショナルなら、素人に聞いてみることなどせず、自分で振り切ることです。


振り切ったヒット商品

では、この仮説を検証してみましょう。同時代の「常識」からすれば「独善」に見える世界観で、結果、ヒット商品に育った事例にどんなものがあるのか。

●ガリガリ君

「ガリガリ君って何?」と外国人に質問されたとします。どう答えますか?「ユニークなネーミングのアイスクリームで、その名前ゆえにヒットしたんだよ」が的を射た説明になるはずです。つまり、アイスという商品カテゴリーなら本来一番に出てくるはずの「おいしさ」はワキに押しやられ、「ユニークなネーミング」が出てくる。最近では、「コーンポタージュ味のアイスを作った」というユニークさもあります。独善ですよねえ(笑)。誰もコーンポタージュをアイスにしてほしい、なんて、言うはずがありませんから。

●海洋堂ホビー館四万十

高知の四万十町に海洋堂が作ったミュージアムです。海洋堂のフィギュアや模型が数多く展示されています。しかし、ロケーションが独善。カタログに「わざわざいこう!へんぴなミュージアム」とコピーがあるように(笑)、めっちゃ遠い。最寄り駅はJR高知駅からローカル線で1時間半かかる打井川駅、さらにそこからバスで6km 。それでもオープンから80日間で3万人の入場者数を記録しました。


●映画『TED』

テディベアといえば、「かわいい子どものぬいぐるみ」「人畜無害」なイメージを持っています。ところがこの映画はR15、つまり15歳以下の子どもは見ちゃダメという(笑)人畜有害。35歳になったテディベアTEDは下ネタ連発でセクハラ全開のおっさん(笑)。それでも大ヒットしています。

●FM802

大阪のFM802は、開局(1989年)以来、「新人発掘」をブランド価値としています。想定したオーディエンスは「18歳の感性」。実年齢ではなく感性軸でとらえました。「たとえ今は売れていなくても、将来きっとビッグになる、だから応援する!」という姿勢で新人アーティストを支援し、育てています。802から巣立ったアーティストにはドリカム、槇原敬之、宇多田ヒカル、Superflyなど多数います。いくらヒットチャートをにぎわせていてもかけないという独善な姿勢が、オーディエンスの共感を得て、支持を受けました。60%という圧倒的シェアを誇っています。


世界観

独善に振り切って、しかも支持されるためにはどうすればいいか。世界観がくっきりと明確であることです。ガリガリ君「遊び心」、海洋堂「模型なら任せろ!」、802「18歳の感性」。そう、独善で成功する秘訣は、独特な世界観が背景にあること。そしてこれは強いブランドの鉄則なのです。

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(2013年2月1日号掲載)