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現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

211)哲学こそ大事

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
マニュアルで縛るより…


考えさせる

「国家がうまく組織されていればいるほど、人間は退屈になってしまう」。小説『クラウド・アトラス』(デヴィッド・ミッチェル著)の登場人物、老音楽家エアーズのセリフです。「どんな政治形態を望むのか?」という議論の中で出てきた言葉なのですが、ちょうど今、私が考えていることをずばり言ってくれているのでびっくりしました。

組織と言えば、ルールがつきもの。しかし、最近私は、ルールが少なければ少ないほど、良い成果を出せるのではないか、と考えているのです。

ネッツトヨタ南国(高知)は全国約300社あるトヨタ系ディーラーの中で、11年連続顧客満足度1位を誇っています。値引きをするわけでもないこのディーラーが、10年前と比較して2倍もの来客数、新車販売台数、年間売上高を上げている理由を探った記事を読みながら(※)、その秘密は値引きでもなく過剰な顧客の「追っかけ」でもなく、「哲学の共有」にあることに我が意を得た思いがしました。その哲学は「(顧客を含む)自分以外の人を少しでも幸せにしたい」という人生・労働哲学です。マニュアルやルールは存在しないそうです。

「当社は報連相の『ルール』はいらない、と考えています。そういう形式的なことを押し付けるのではなく、自分たちが必要と感じる自然な形での濃密なコミュニケーションを積み重ねていくことが大事なのです。アメリカのようにルールを作り、結果をまず求めてしまうと、経験のある上司が徹底的に部下にノウハウを叩き込むことから始まります。すると、短期的には効率がいいのですが、いつまでも部下の思考力が高まらず、さらに上司が管理し、マニュアルを作らなくてはならない悪循環に陥ります」(※より引用。2007年まで同社で人材開発室長をしていた大原光秦氏)。

注目したいのは「思考力が高まらない」です。哲学を共有さえしておけば、あとは現場でその都度、本人が判断する。考えさせる。

※www.sankeibiz.jp/smp/business/news/130309/bsa1303091901002-s.htm


教育システム

あなたの会社・店の教育システムを見直してみましょう。最も重要なことは、「何を大事に考えるか」「何に喜びを感じるか」という哲学です。あるレストランチェーンは創業者の「おかげさまのこころ」という哲学「だけ」を、新入社員はもちろん、アルバイトにも徹底的に教えます。創業者が屋台から一代で身を起こした人で、「地域の見知らぬ人たち、(特に年長者)に支援してもらった経験のおかげで、今の自分がある」という思いを持っています。だから、イベントもどこかに「おすそわけ」の要素を入れています。例えば、売上が目標に届いた月の翌1日には、近隣の老人施設の入居者を無料でご招待します。これは、「売上がちゃんと立ったのも、近隣の皆様のおかげさま。この地区の治安が良く、こうして商売できるのも、年長者が頑張って街を築いてくれたおかげさま」という論理だそうです。名刺交換の時のお辞儀の角度といった細かな行動マニュアルより、このように哲学をしっかり教え込むことこそが、店の世界観をインストールするのに役立つと思います。それが自分の働く会社・店に対する愛につながります。


コミュニケーション

社員みんなで、ランチでも、夕食でも、週に1回は一緒に楽しむ風土を作りましょう。人間、食事を一緒にすることで、風通しは格段に良くなります。しかも、難しいコミュニケーションのルールを作るより効果的です。


自社を愛するように

社員に会社(店)の住所を書いてもらってください。実は意外と書けないことが多いです(笑)。住所を覚えるということは自社への愛に変わります。

お客さんは、自分の会社や店を愛している人から買いたいと思います。顧客満足のためには、まず、社員が自社を愛するような仕組みを作りましょう。

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かせると、100万人に届く。』

(日本実業出版社)
定価:1470円(税込)

(2013年5月1日号掲載)