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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

216)プライシングの方法

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
プライシングは心理学です!


人は価格で判断する

ブランドの構成要素は「価格」「ロゴマーク」「ネーミング」「パッケージ」など、さまざまですが、真新しいブランドを見た時、人はそのブランドを「価格」で判断します。例えば、ショッピングモールでウィンドウショッピングをしていて、新しいブランドの店に出会い、入ってみることにしたとします。陳列されている服のデザインを見るのはもちろんですが、さらに興味を持ったあなたは何をするか。値札を見るはずです。買う気はなくても、値札を見ることで、「なるほど、このブランド、このタイプのワンピースでこの価格なのね」と、心の中で一瞬にポジショニングしています。ポジショニングとは、「このブランドは松竹梅ランクの中の松」といった位置付けのことです。ブランドに関する情報が少なければ少ないほど、価格はブランド価値の宣言、マニフェストとして重要な可視指標になります。

つまり、ブランド作りで決定的に重要で、しっかり吟味しなければならないのはプライシングです。


購買動機が競合を生む

とはいえ、商売は宇宙空間でなされるのではなく、現実の競合店がひしめく中で行われていますから、好きな価格を付ければいいというわけではありません。あなたのレストランが誰に何のために来てもらいたいかによって、参考にするべき競合店がどこか決まります。つまり、顧客の購買動機で競合が決まるわけで、必ずしも同じカテゴリーにいるからといって競合するわけではありません。顧客の財布が何の動機を満たすために開くのか、がポイントです。

事例で考えましょう。ある国道沿いに牛丼チェーン店、ハンバーガーチェーン店、コンビニ、セルフサービスのうどん屋(出前、持ち帰り不可)が並んでいます。この並びにあなたがレストランを出すとしたら、競合はどことどこでしょうか?まず、ランチに時間帯を絞って考えてみます。

並んでいるお店すべてがランチを提供可能です。ランチという動機だけで見ると、すべてが競合なので、もう少し絞ります。同じランチでも、A「ゆっくり静かに楽しみたいランチ」、B「重要な取引先と打ち合わせを兼ねてのランチ」、C「とにかく速く済ませたいランチ」、D「オフィスで仕事しながら食べたいランチ」などの動機があります。動機Aを満たす店はこの国道沿いにはありません。また、動機Bを満たす店もありません…と整理していくと、競合状況はこうなります。

●動機AとB:競合ゼロ
●動機C:すべての店
●動機D:うどん屋以外の店

この分析により、競合店の混み合った動機CやDにフォーカスするのではなく、動機AとBを満たすレストランをデザインすれば市場を独占できることがわかります。

市場とは購買動機を指します。次に、「ゆっくり静かに(動機A)、あるいは重要な取引先とランチを楽しむ(動機B)のであれば、いくらなら支払うだろうか」と考えます。日本の物価感覚でいうと、動機Aは1千円から1500円くらい、動機Bは上限2千円が妥当でしょう。一緒に国道沿いに並んでいる店がいくらのランチを提供していようが、購買動機が違うので、気にしなくていいのです。


心理的バトル

心理的バトルとは、顧客が別の顧客の存在によってストレスを感じることで生まれる心の中の葛藤を指します。高級ホテルのレストランであるにもかかわらず、大声で騒ぐ団体の酔客がいると、「高級ホテルのレストランだからこそ得られる静かな楽しみ」のために来ている顧客にストレスを与えることになります。

動機AとBの顧客は互いに心理的バトルを起こしません。共存可能です。例えば、ここに子供連れが入ると心理的バトルが生まれます。そこで、「お子様はご遠慮願います」という新しいレストランのコンセプトが生まれます。

プライシングは、原価や隣接の店の価格から決まるものではありません。ブランドの価値宣言であり、顧客の何の購買動機を満たすのか、で決まるのです。

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