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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

217)ブランドを立てる

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
狭く、濃く!


古時計愛好会

都内某所でセミナーをしていて、ふと隣の会議室を見ると、「古時計愛好会」とありました。なんじゃ?と開けっ放しのドアからのぞくと、入口近くの男性から「どうぞ」と声をかけられました。ちょっと見てみるのもいいかも、と入りかけると「2千円ね」の声(笑)。その10分後に自分のセミナーが始まるので、「何時までやってるのですか?」と聞くと「そうだねえ、3時くらいかな。昼からは5百円になるよ」。世界は広い。古時計をただ見るためだけに遠くからもやってくる(聞けば、長野県松本市からグループでやって来た愛好家もいたとのこと)。私は、早速このことをセミナーでネタにしました。つまり、「ブランドは狭く、濃くすることで生まれる」。ブランドはグッチやエルメスなど、いわゆる高級ブランドだけのものではなく、すべてブランドになり得ます。個人ですら、ブランドです。

ブランドの本質は、「違い」。検索の時代、同業他社とどんな違いがあるのか明確に打ち出すことができなければ、スマートフォン画面で価格比較されるのがオチです。選ばれるために、ブランドの旗を立てましょう。


狭く、濃く

ポイントは「狭く、濃く」です。「よそがやるなら、うちはやらない」ポリシーが必要。「誰かの敷いたレールを走るのではなく、自分でレールを敷く」イメージです。「こんな物が商売になるの?」という物だけが残れる時代です。

2000年、まだインターネット黎明期に私は、「病気全般についてのサイトでは、まだ広い。たとえば水虫についての専門的知識がすべて手に入る狄綯逎疋奪肇灰〞にするくらい、狭くいかないと」と言っていました。当時は「そんなバカな」と冷笑されましたが、いまは製薬会社の運営で実在しています。

たとえて言うなら、「ラーメンもギョーザもチャーハンも」では広過ぎます。「うちはチャーハン、しかも五目チャーハンだけなんです。エビチャーハンのことはわかりません。五目以外、素人です」というくらい、絞り込みましょう。絞り込むと、まだまだ勉強しなければならないことが山ほど見えてきます。

広島で、メニューは生ビールのみというビールスタンドを営む重富寛さん(http://sake.jp)は、おいしい生ビールを入れるために、エビスビール記念館にあるカタログを研究し、ビールを電気ではなく氷水で一晩かけて冷やす方法を取っています。そのために旧式の氷冷式冷蔵庫を古道具屋さんで購入するほど。よりおいしく飲めるようグラスの薄さにもこだわり、特注しています。そのグラスを洗うのも「ここまでやるか」という念の入れようです。


○○と言えば

「狭く絞り込むと顧客が少なくなるのでは?」と怖いかもしれません。しかし、「この辺にうまいチャーハンの店はある?日本から大事なお客さんが来ることになってね。その人、日本スタイルの中華のチャーハンが大好物なんだって」という時、「ああ。それなら」と思い出してもらうためには、絞っていないと無理です。スマートフォンを取り出して検索される前に、脳内検索にひっかかるかどうか。これが勝負の分かれ目です。本物のブランドは、脳内検索ですぐに出てくるものです。「アイスと言えばガリガリ君」「カップのうどんと言えば赤いきつね」…、いずれもブランドになっています。

埼玉の小川聡子さんは「自分が使いたいのに、ダサい杖しかない」経験から、杖に絞ったネットショップを運営しています(www.rakuten.co.jp/tue-stick)。杖を機能ではなく、ファッションアイテムにした途端、デザイン、重さ、使い方、ギフトなど、無限のバリエーションが見えてきました。絞る際、商品を機能面だけではなく、「その商品が欲しくて欲しくて貯金してまで買いたくなるようにするにはどうすればいいか」という「目的化」の観点から考えてみましょう。必ず広がりと深みが出てきます。それこそが、ブランドを支える「あり方」になるのです。

阪本さんの新著書が発売中!
『「たった1人」を確実に振り向
かせると、100万人に届く。』

(日本実業出版社)
定価:1470円(税込)

(2013年8月1日号掲載)