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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

【第7回】アメリカで従業員を解雇するとき、気を付けるべきこと

アメリカ人と共に働く技術

増田義彦◎2004 年渡米。某日系IT企業社長を歴任。Children Discovery Museum of San Jose 元理事。Japan Business Association of Southern California元会長。オーロラ日本語奨学金基金会長。

アメリカで10年間、数百人のアメリカ人の指揮を執ってきた日本人社長が、アメリカ人と働く極意を伝授します。


アメリカで従業員を解雇するとき、気を付けるべきこと

米国で仕事をしていて、一番嫌なのは解雇です。私は米国着任後、日本にいた頃から自分の片腕としてよく働いてくれた米国人幹部を解雇せねばならない状況に陥りました。彼は、私の事務所から数千キロ離れた工場に勤務していました。解雇通知を電話でするのはまずいので、「ある課題について意見を聞きたいので、私の事務所に来てほしい」と言って、彼を呼び出しました。彼は張り切って、私のためにプレゼンテーション資料を準備してくれました。

解雇当日の対応について、私は何回も人事部長に相談しました。解雇の際に言い渡す文言は、人事部長に事前に原稿を作ってもらいました。当日に向けて何回もその原稿を読み、私なりの修正を加えて頭に入れ、緊張しながら当日を待ちました。

解雇当日、彼は飛行機を乗り継いでやってきました。彼が私のオフィスに入り、プレゼンテーション資料を開いた瞬間、私は暗記していたフレーズを言い渡しました。どうなることかと心配していましたが、彼は意外にもあっさり、「そうですか。分かりました。今までありがとうございました」と言って、オフィスを出て行きました。それ以降、彼とは一度も会っていません。彼の冷静な態度について人事部長に話したら、「彼はプロフェッショナルだね」と褒めていたのを今でも思い出します。それから何回も解雇の場面に遭遇しました。そして、米国社会は解雇があるが故に、日本社会と異なる側面があることが分かってきました。


日本と米国における解雇の際に見える違い

第一に、会社での人間関係。米国には、「be friendly but not a friend(フレンドリーであれ、でも、友達になるな)」というフレーズがあります。会社の中では、人間関係を円滑にするためにフレンドリーでなければならないが、解雇したりされたりするかもしれないので、友達にはなるなということです。日本では、上司と部下が家族ぐるみで付き合ったりして、緊密な人間関係を築こうとしますが、米国ではそれほど緊密な関係にはなりません。また、自宅に招待することは良くない、という話もあります。解雇された部下が、腹いせに自宅に放火するなどの可能性があるからです。それまでとてもフレンドリーだった部下が、会社を辞めると二度と連絡してこなかったり、人間関係の希薄さに寂しい思いをしたことは再三ありました。

第二に、上司との関係。上司への絶対的服従は、日本人以上です。上司ににらまれると解雇される、という恐怖があり、とにかく上司には徹底的にゴマをすり、指示はそのまま受け入れます。合理性を追求する米国人も、ここでは冷静さを欠きます。

第三に、リストラの噂が流れたときの対応。少しでもリストラの噂が流れると、何とか解雇を免れようと、多くの従業員が連絡を取ってきます。多くの場合は、解雇された場合の退職金割増の交渉です。会社側もリストラ前になると従業員への発信を減らしたり、少し妙な行動を取ることが多いので、従業員も気付いてしまうのでしょう。

面白いのは、解雇した従業員が何年かして、再び採用されることがあることです。採用された当日、挨拶に来た従業員に「どこかで会ったことがありますよね」と言うと、「あなたに2年前に解雇されました」という返事が、明るく返ってきて、びっくりしたことがあります。

とにかく、日本人である私は、この解雇という習慣に慣れることはありませんでした。従って、特に人事部長と法務部長は、信頼できる人を雇うことが重要です。慣れないこと、そして最も難しいことをやるときに、彼らからの、親身になった、そして、公平な観点からのアドバイスは本当にありがたいです。


(2014年11月1日号)