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ライトハウス編集部
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5)商売のヒントはみんな昭和の模型屋にあった
【商売力は企画力!】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
本原稿執筆時、日本は2005年お正月です。
昔の商店主は子どものお年玉目当てに知恵を絞ったものでした。


お年玉はみんな模型屋「清水商店」に

 友人が正月に拙宅へ遊びに来て、子どもの頃のお年玉は一体どこに消えたのだろう、という話題になりました。話しながら彼は、お年玉の大半が近所の模型屋「清水商店」に行っていることに気づきました。以下、友人の話をもとに清水商店のマーケティング戦略を整理してみましょう。きっと学ぶ点がたくさんあるはずです。


清水商店のマーケティング戦略

❶ 「子どもの遊び全般を引き受ける」戦略

 清水商店は一応「模型屋」の看板を掲げていましたが、実際のところ何でも屋です。当時の人気マンガ『サブマリン707』のプラモデルを売るのであれば一緒に掲載されている週刊誌『少年サンデー』をバックナンバーも含め(おやじがバックナンバーを自分で書店から仕入れて、貯めこんでいる)売る。凧だけではなく一緒に手を保護する軍手も売る、という具合です。即ち、自分は模型屋だからと、模型だけをただ並べて売るのではなく、子どもの遊び全般を引き受ける覚悟で常にアンテナを張りめぐらしていたのです。

❷「営業時間差異化」戦略

 昭和40年代には珍しく、元旦から店を開けていました。現代ならコンビニ、デパート、スーパー、いずれも元旦から営業していても珍しくありませんが、昭和40年代では画期的な「営業時間による差異化」戦略です。子どもたちは「やっている店に行く」ので、地域の子どもたちが手に握りしめているホカホカのお年玉は、三が日の間に清水商店に流れ込む、という仕掛けです。

❸ 「売れるきっかけを自分で作る」戦略

 正月には凧揚げ大会を主催します。すると、当然のことですが、凧が売れます。「きっかけ」がないと、商品はただ店頭で客の来るのを待つだけです。「売れるきっかけは自ら作る」のです。凧揚げをしたことのある方ならおわかりいただけると思いますが、高く揚がれば揚がるほど、風の力を大きく受けて、握っているひもがこすれて、指が痛くなります。そこでおやじは会場となっている広場を走り回り、軍手を売って回ります。 また、年に何回か、「プラモデル大会」を開催します。大会告知はクリスマス前。子どもはサンタにプラモデルをお願いする(笑)。審査員は当然、清水のおやじです。何点か出品されると、みな、店のショーケースに陳列してあげるのです。すると、子どもは嬉しくて、友達に見せたくなり、友達を店に連れて来ます。店を知らない新規顧客がこうして、労せず来店してくれるわけです。

 おやじの審査方法も戦略的です。「お金を持っていそうな子ども」の作品を優勝させるのです(笑)。そして、評のときに、「こういうモデルなら、もっと映える塗料があるんだよ」と言います。当然、子どもは欲しくなります。

❹ 「流行を作る」戦略

 同じく「ただ待つではなく打って出る」戦略です。コマ、ベーゴマ、スーパーボールなど、「自分でまずマスターして店頭で遊ぶ」のです。子どもたちは興味を示します。スーパーボールなど、初めて見る子どももいます。するとおやじが一言、「これ、いま、流行しているんだって…」。流行しているのはあんただけじゃん、と思うのですが(笑)、うまいですよねえ。

 以上、清水商店のおやじのマーケティング戦略、共通しているのは、「企画力で勝負」していることです。おやじは四六時中、考えていたはずです。そして、この、「何か面白い企画をできないだろうか」という「打って出る」姿勢、昨今の商店はもとより、ビジネスシーンで少なくなってきたと思いませんか。

 清水商店から学び、私たちも、大いに企画力を発揮しようではありませんか。そう、商売力は企画力です。


(2005年2月1日号掲載)

【文・阪本 啓一