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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

19)テレビがネットにつながると?
【テレビって何?】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
あらためて考えるとテレビって、何なのでしょうね?


放送と通信の融合の本質とは

 皆さんもご存知のように、今年始め、日本ではフジテレビとライブドアの一件以来、「放送と通信の融合」ということがよく話題にのぼるようになりました。色んな人が色んなことを言っていますが、では「放送と通信の融合って、何?」とあらためて質問をしてみると、かなり曖昧な定義のまま議論が進んでいたりします。

 ある人は、デジタル放送がもたらすテレビ局と視聴者のインタラクティブな対話を有望視しているし、ある人はエンターテインメント系のコンテンツ提供を中心に論じています。またある人はパソコン、携帯に続く「第三のインターネットの窓」としてテレビをとらえています。いずれも本質を突いているとは言えません。本質は、正しい問いの設問から真実の姿を見せます。よって、切り口を変え、次のように問いを立ててみます。

 放送と通信の融合によって、いかなるサービスが生まれれば生活者のQOL(Quality of Life :生活品質)が上がるのか?

 そう、生活者視点の問いです。


いくつかのサービスアイデア

 この問いに、マーケティングの立場から答えてみます。いくつか浮かびますが、第一に浮かぶのは海外在住の日本人が日本国内在住と同じ条件でテレビを視聴できるようになる。ニューヨークに住んでいて、正直やはり日本のテレビが一番の楽しみでした。それでも「メジャーどころ」の番組ばかりで、たとえば深夜やっているようなマイナーだけど味わい深い番組を見ることは不可能です。

 法律やテレビ局側の戦略、思いを別にすると、技術的には、アメリカでもネットを通して日本のテレビ局がもっているコンテンツを視聴することは可能です。

 もしこれが実現したら、とってもハッピーだとは思いませんか?

 第二に、海外在住日本人が、日本の役所窓口とネットを通じてつながっており、窓口業務をネット経由で実行できる。パソコンでできてもいいのですが、パソコン操作に慣れていない人や、高齢者には、やはり日ごろ使い慣れたテレビのリモコンで操作できればそれに越したことはないでしょう。

 第三に、災害時の情報窓口になる。このためには、「災害テレビ」とでも呼ぶ新製品をテレビメーカーに開発してもらわなければなりません。サイズや重さはノートパソコンくらいで、蓄電式なので、停電時でも使えます。水に濡れても、落としても、泥がついても大丈夫な頑丈設計。普段は通常のテレビなのですが、災害が発生した際、「これで安心!」ボタンを押すと、画面が災害モードになります。GPSで現在位置が示される地図が現われ、交通機関、天候、道路状況などの情報をリアルタイムでワイヤレスのネットを通じダウンロードしてくれます。操作はペンタッチ入力なので、キーボードやリモコンに慣れていない人でも簡単に使えます。

 第四に、遠隔医療相談。たとえばセカンドオピニオンが欲しいと思っても、自分はLAに住んでいるのに名医の病院が日本の福岡だったり、ボストンだったりすると、現実的にはなかなか難しいですよね? そんな場合でも、テレビで双方向に顔を見ながら相談できると、助かります。


テレビって何?

 ここまで考えてくると、「そもそもテレビって何なのだろう」という問いについてしっかり考えなければならないことに気づきます。現在、テレビは放送局の提供してくれるテレビ番組を映す画面(ハコ)だけではなく、ゲームをするための道具として使われたりしていますね。でも、「放送と通信の融合」が実現した暁には、テレビ受像機そのものが役割を大きく変えていくべきなのでしょう。

 シャープ、パナソニック、ソニーといったテレビメーカーは、テレビのKFS(成功の鍵)を「画質」に置いているようですが、生活者の視点から見るならば、必ずしも現在の画質を「さらに上げる」ことより、例えばネットでの操作を前提にした使いやすいリモコンや、場合によってはレーザポインター型のマウス(画面を指すことで操作できる)の開発も必要でしょう。また、災害テレビであれば小型、軽量、頑丈、かつ100〜200ドル程度の廉価なテレビも必須です。

 今日ここでやっていることは、あくまで仮想の思考実験ですが、日ごろから、日常のニュースをもとに、「正しい問いは何か?」「問題の本質は何か?」を考える訓練をしていると、ビジネスチャンスを発見しやすくなります。さて、今日のニュースで何か問題は立てられないでしょうか。

(2005年9月1日号掲載)

【文・阪本 啓一