働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

28)ドラッカー箴言集
【ドラッカー・トリビュート】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。経営について学ぶなら、何をおいても、ドラッカーです。

 2005年11月11日にお亡くなりになったピーター.F.ドラッカー氏は、長く南カリフォルニアのクレアモントに住んでおられました。私は長く、氏の著作から学んだ者です。今日は、氏の数ある箴言の中から、選りすぐりの言葉をご紹介したいと思います。


ビジネスの目的とミッション

 ビジネスは企業名で定義されるのではない。顧客が製品あるいはサービスを購入した際に得られる満足によって定義される。顧客満足があらゆるビジネスのミッションであり、目的だ。即ち、「われわれのビジネスは何か」の答はあくまで「外」から見て得られるものであり、それは顧客や市場の観点に立つことに他ならない。(『マネジメント』より)

 例で考えましょう。Aさんに「あなたのビジネスは何ですか」と質問してみます。答、「私はスポーツジムを経営しています」。よくある「自分のビジネスの定義」ですね。しかし、顧客の立ち位置に立ってみた時、果たして正しいでしょうか。顧客はスポーツジムに行くことが目的なのではなく、たとえば身体を鍛えたい、仕事や生活のストレスから一時開放されたいなど、一人ひとり「〜したい」が違うはずです。人によってはほんの30分走るだけでいい、それ以上の時間は使えない、という場合もあります。ところが、ありがちなスポーツジムのサービスは、「時間がたっぷりあって、運動したあとはサウナやシャワーを浴び、さっぱりしてくつろいだのち、帰宅する」という顧客行動デザインのもとに設計されています。きっとそこには顧客の不満があるはず。不満がある、ということは、そこに競合が新たなビジネスチャンスとして入り込む可能性がある、ということを指します。このように考えを進めていくと、「顧客」という「大ぐくり」の落とし穴にも気づかせてくれます。


ビジネスの規模

市場において目指すべき地位は、最大ではなく最適である。(『マネジメント』より)

 「市場シェア」という言葉があります。一般に大きいほど良いとされています。しかし、所属している業界そのもののパイが縮小している時に、その中で「お山の大将」となることが、本当に良いことなのでしょうか。

 市場形成されてから30年経った建材ビジネスがあるとします。市場内の競合社は主に5社。各社ともこれまでの競争のルールは、「各地域で草の根的にビジネスをやっている販売店がいかに拡販してくれるか」。成功の鍵は、地元ゼネコンとのパイプの太さであり、煎じ詰めれば販売店の営業力です。いや、「でした」と言ったほうが正しい。

 一時として同じ形をとどめない海の波のように、市場も大きな潮流の中にあります。くだんの建材ビジネスは、それまでの主力製品と同等のものが、2分の1の価格にて中国で生産されるようになったことから、市場の購買動機が「価格」へと大シフトしました。そのような時に「この30年同じ釜の飯を食った」競合同士で勝った負けたとやっていても、虚しいだけ。考えるべきは「最適」であり、要するに「市場潮流の変わった市場において、自社はいかなる地位を確保するべきか」という問いを立てなければならないのです。やっかいなのは、現実のビジネスではこの事例ほど「わかりやすくない」ことです。よって、常に「ウチにとって最大ではなく最適とはいかなる状態のことを言うのか・どうなっていれば最適なのか」という問いを自社内で立て、検証しつづけることです。


組織の目的

 われわれは、「凡庸な人間に凡庸ならざることをさせる(make common men do uncommon things)」ことをもって組織の目的と定義した。凡庸な人間を凡庸ならざる人間にするとはいわなかった。(『現代の経営』より)

 ドラッカーの真骨頂です。彼は、厳格な責任についての原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認するというマネジメントの文化を育みなさい、と指摘しているのです。それが実現している組織であるならば、リーダーシップが発現しやすい素地となる。ただ、リーダーの出現が仮にないとしても、組織によって、「凡庸な人間に凡庸ならざることをさせる」ことが可能である、としているのです。

* 参考『マネジメント−基本と原則』『現代の経営』共にP・F・ドラッカー著、上田惇生訳 ダイヤモンド社

(2006年1月16日掲載)