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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
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77)営業時間で差をつけよう

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
行動で表現されてこそ、美しい経営理念も生命を帯びます。

 経営理念は、その美しさや崇高さが重要ではなく、いかに現場で行動として表現されているかが問題です。それを教えてくれる事例に2つ出会いました。


宴の後に

 最初は、某老舗旅館。経営理念は、ウェブサイト、マッチ箱、部屋に備え付けの茶菓子に添えたペーパーなどへ明確に記載されています。中国の故事にちなんだ五文字熟語で、「あまりに俗世から離れた桃源郷みたいで、時の過ぎるのを忘れるほどくつろぐ」意味。旅館の「おもてなしの心」を表現する文字とのこと。ずばり、この旅館の経営理念ですね(旅館批判が目的ではないので、熟語は伏せます)。

 テレビのビジネス情報番組で、伝説のリゾート再生仕掛け人が落ちぶれた老舗旅館を再生させるドキュメンタリーを見ました。やる気が全くなく、従業員同士がいがみあい、文句ばかり言っている状態から、仕掛け人のコンサルが入った後は、見違えるように良くなり、お客様を出迎える笑顔も素敵に変身したエピソードは、とても感動的でした。その番組(昨年1月放映)を見て、興味を持った友人が早速泊まりに行ったのが6月。テレビ通りの素晴らしいおもてなしで、感動して帰ってきました。熱心に語る友人に影響され、行きたいと思っていたのですが、日程が合わず、結局、私がくだんの友人と一緒に行けたのはそれから18カ月後。期待に胸をふくらませ、宿に到着したのですが、結論から言うと、期待はずれ、でした。まさに「宴の後」という感じ。「おもてなしの心」など、皆無でした。1泊数万円の高額料金には全くつり合わない貧しいサービス。


効率、効率、効率…

 元来、旅館ビジネスの難しさは、顧客は家族経営的温もりを求めるが、旅館は事業的経営を求めるという二律背反のジレンマにあります。自社のブランド価値を見定め、ちょうど良い頃合に落としどころを見つけるのが経営者の腕の見せ所です。サービス業は人が人に対してお届けする商品であるがゆえ、そこには「ナマモノ」の怖さがあります。マニュアルでは到底管理しきれず、こぼれ落ちてしまう大切な「心」がある。だからこその経営理念、だからこその5文字熟語なのですが…。

 部屋の照明が切れかかってチカチカしても、仲居さんが殆どおらず、男性スタッフがフロント業務、夕食サービススタッフ、駐車場アシストスタッフなどすべて同じメンバーが着替えてこなす有様。高級旅館にはあり得ない、大食堂での食事(朝夕共)。何より、旅館全体を満たす「氣」が貧しいのです。効率を追求したこと、マスコミに華やかに取り上げられた驕りが原因です。


人を見ず、パソコン画面を

 元旦夜、救急車のお世話になってしまいました。検査の結果、過労が原因でした。生まれて初めて救急病院に自分が急患として入ってみて、そのあまりにもひどい現場の実態に、怖くなりました。患者はモノ扱いです。点滴の際、乱暴な針の刺し方に声を上げました。担当医はキスできる距離で私に問診しますが、風邪の初期症状で、咳がひどく、くしゃみ、鼻水のオンパレード。私はむしろ風邪の感染の方が心配でした(笑)。頭痛がする、と言ったためにCTで検査されましたが、頭痛は症状で、原因ではありません。対症療法とは文字通りこのことです。実はその日、遊びに来ていた友人夫婦が年末、私と同様の症状(頭痛、吐き気、悪寒、下痢)を体験し、彼らからの感染の可能性を担当医に話すのですが、耳を貸しません。

 私を見ず、パソコンを見て、キーボードを叩いています。「初夢って、2日でしたっけ?」「これ、やばくないですか?」などの気合の抜けた雑談…。一体どこのアルバイトたちの休憩場所なんだ? と思うほどの緩みよう。彼らをビシッとさせるにはどうすればいいか。この病院の理念をサイトから引用します。

 “最善の医療を提供ノウハウは、医療技術や知識だけではなく、まして最新鋭の医療機器だけではありません。それは「すべての意味での心からのサービスを提供しよう」と、こだわりつづける心の中に存在すると思います。それがこの病院における共通の価値観でありたいと思います”

 美しい理念です。しかし、現場で行動を通して表現されなければ、何にもなりません。研修で彼らの姿勢を正すことは無理です。じわじわじわ、と彼ら自身から体臭のようににじみ出るようにしなければなりません。


汗、体臭となるように

 楽天・三木谷会長が月曜日の朝礼を毎週欠かさないのは、理念を体臭に、行動に昇華させるためです。パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードは製品デザイン、製造、流通、イメージなど経営8項目に亘って理念を翻訳し説明します。理念を作ったら、次はいかに社員に浸透させ、行動させ、動いた汗となってにじみでてくるかという方法を確立するべきなのです。


(2008年2月1日号掲載)