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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

106)つながりを取り戻す

マーケティング講座


やさしくない社会

知人が銀行のATMで順番を待っていたら、前の老人が大変苦労されている。どうやら操作方法がまったくわからないらしい。振り向いて、助けを求めてこられたので、丁寧に教えてさしあげ、ようやく手続きが終了、そのおじいさんは丁重にお礼を述べて、立ち去られました。そこで知人がふと気づくと、後ろに並んでいるみんなの氷のような視線。間違いなく「振込詐欺」犯人と勘違いされたようです。この一件を書いたブログの中で、知人は、「善意が善意と素直に受け取られないこの国は一体どこへ行くのか」と嘆いていました。私も同感です。

電車内で、軽く咳をしようものなら、「感染さないでくれよな!」「あっちいけ、シッシッ!」オーラで睨まれます。他人を許容するレベルのバーが極端に低くなってしまっているのです。そしてみんな、他人に無関心で、携帯を見たり、i Podを聴いていたり、ゲームに夢中になったり、居眠りしたり、自分の世界に入り込み、こもってしまっています。これはおそらく、電車内だけではないのかもしれません。会社でも、「腹を割った」人間関係は希薄になってしまっているのかも。

どうしてこのような「他人にやさしくない社会」に、日本はなってしまったのでしょう。



解は住宅にあり?

私自身、20年近く建築業界に身を置いた経験からわかるのですが、日本の住宅は、機能面でいうと、断熱、遮音をずっと追求してきました。つまり、「断」「遮」、英語にすると「cut」「shut」です。この、cut/shutが、そこに住む家族間のつながりそのものさえ断ち切ってしまったのではないのでしょうか。

南アフリカの先住民族は、ヨーロッパから来たアングロサクソンの白人たちを「四角い家に住む人」と呼ぶそうです。思えば、アメリカ大陸先住民も、モンゴル高原の人々(ゲル)も、日本の縄文・弥生人(竪穴式住居)も、中国の伝統建築(四合院)も、みんな、円形で、間仕切りはありません。断熱、遮音性、プライバシーなど、人間は文明化が進むほどに、cut/shutの思想を住居に持ち込むようになってきました。つまり、円型から方形へ、家はその形を四角く変貌していったのです。それにつれて、「家族の円居」「家族が集う」という場所がなくなっていきました。

囲炉裏端で、こたつで、家族みんなが顔を合わせてごはんを食べる、ということも、いまや希少価値を持つほどになってしまいました。とすると、現代日本人の「他人へのやさしくなさ」は、家に原因の1つがありそうです。

縄文時代は今から1万2千年前であり、ひょっとすると、日本人は間仕切りのある家に住んでいる時間より、ない住居にいた時間のほうが長いのかもしれませんね。また、縄文期は狩猟時代です。外でダイナミックに獲物と戦ってきた人々が休息するのに、竪穴式住居の仕切りのない空間は、とても居心地が良かったのではないでしょうか。 空間感覚、という意味でも、家をあまり細かく仕切ってしまうのは、良くないのかもしれません。他人との距離感が失われてしまうのでしょう。



家族の「つながり」を取り戻す家

神奈川県葉山に拠点を置く設計事務所・工務店「松匠創美」は、木の家が理念であり、売りです。ただの木の家ではありません。同社オフィス自体が、理念を体現しています。2階建で、大きく吹き抜けを取り、2階と1階の人の動きや音が筒抜けです。台所の料理のにおいも家中にたちこめます。部屋と部屋を仕切る間仕切りはゼロ。だからこの家に住むには、「家族力」が試されます(笑)。お父さんがいるだけでうっとうしい、なんていう家族ではとても住むことができません。だからこそ、と松匠創美は言います。家族のつながりを取り戻す家にしてほしい、と。地域にしっかり根をおろし、地道に「家族のつながり」を木の家を通じて回復、強化してもらいたい、と提案しています。



オフィスも仕切りなしに

家だけではなく、オフィスも、仕切り無しがメンバーの間のつながりを強化する働きがあります。ライトハウスのオフィスは天井が高く、仕切りがまったくなくてだれが何をしているか、すべて筒抜けです。JOYWOWは、一枚板のデスクに全員(といっても4人ですが)がパソコン並べて仕事しています。だれかがちょっと体調を崩しているな、とか、沈んだ気分でいるな、が丸わかり。

皆さんのオフィスも、ぜひ仕切りを取り払い、オープンな空気で仕事しませんか? 業績アップ間違いなしです!