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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

110)異業種の知恵を学ぶ

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
異業種格闘技(!?)やってみませんか?


P&Gとグーグルの
共通点は?

私が重要な情報源としている月刊誌『courrier Japon(クーリエ・ジャポン)』誌にとても興味深い『Wall Street Journal』の記事がありました。
 
プロクター&ギャンブル(P&G)はマーケティングに滅法強い会社として知られています。19世紀後半には、「アイボリー石鹸」でマーケティング史上マイルストーンとなるナショナル・ブランド創造をしています。ラジオやテレビの昼メロドラマが「ソープ(石鹸)・オペラ」と呼ばれるようになったのも「アイボリー石鹸」が由来です。
 
洗剤「タイド」はP&Gにとって北米最大の強力ブランドで、年商35億ドルという、まさにドル箱商品。タイドのブランド創造で特筆すべきはイメージカラーでしょう。あのオレンジ色をスーパーの棚で見かけると、「ああ、アメリカのスーパーで買い物しているなあ」と私はそれこそパブロフの犬のように反応してしまいます。
 
そんなマーケティング巧者のP&Gの年間広告予算は87億ドル。うち、米国内市場向け広告予算は34・8億ドル。ハンパな金額ではなく、ちょっとした企業の年商よりも巨額です。
 
P&Gが消費財マーケティングの王者なら、グーグル(Google)はIT検索の王者です。オンライン検索広告市場で74%のシェアを占めています。グーグルのビジネスモデルは利用者に課金するのではなく、広告主から広告料を徴収する広告モデルなので、P&Gとの共通点は「広告費用」といえます。


王者が手を組んだ

P&Gとグーグルの2社が手を組みました。具体的には「社員交換制度」で、互いの社員が研修に参加したり、会議に参加したりして、互いの「異なる企業文化やブランド資産から学び合う」活動です。2008年1月から実施しています。記事によれば、すでに20人以上の社員が参加しているとのこと。
 
P&Gは広告の経験が豊かではありますが、主にテレビ、雑誌という「広告主から生活者への一方向メディア」であり、オンラインのような双方向メディアをうまく活用するノウハウは十分蓄積されているとはいいがたい。一方、グーグルは「商品がモノである」消費財マーケティングの経験がありません。何しろ、グーグルが販売しているのはグーグルそのものなのですから。しかし、双方向メディアとしての知識は抜群にもっています。学び合うには絶好の相手と言えましょう。また、グーグルの成長率が年々鈍化し、広告収入増加率は02年の500%強をMAXとして右肩下がり、07年は56%にまで落ちてしまっています。P&Gの巨額の広告予算が「おいしい」と見えるのも動かし難い事実でしょう。結果、P&GにとってはTVCM「しゃべる染み」のYouTubeを利用した視聴者参加型のパロディ作品キャンペーンが生まれたり、紙おむつパンパースのプロモーションに「お母さんブロガー」を巻きこんだり、という施策に結実しています。また、グーグルにとっては、P&Gの消費財マーケティングの知見「スーパーマーケットにおける顧客の動線の経験知」がサイトに訪問者を引きとめる策に利用できるという学びにつながったりしています。P&Gの標準「ストップ、ホールド、クローズ」。顧客がスーパーの棚でふと商品に注目して立ち止まる(ストップ)→商品を手に取り、ラベルをじっくりながめる(ホールド)→その商品をレジに持って行き、お買い上げ(クローズ)。グーグルによれば、この動線は、スーパーをサイトに変更しても応用可能であるといいます。この異業種交流、両者にとってメリットがあったようです。


異業種だからこその
豊かな視点

この事例から学べることは、異業種同士組むことの可能性の大きさです。この手法は、私のコンサルティングの実際でもよく活用します。先日も、農家のコンサルティングで、IT企業のケースを転用しました。
 
皆さんも、異業種同士、交流してみませんか? 互いの「文化と言語と思考フレームワークの違い」に触れることができて、大きな効果が見込めます。
 
「フランスが何であるかを知りたくなれば、私は日本人の旅行記を読むでしょう」、ギメ博物館創設者エミール・ギメの言葉です。つまり、異邦人から見た自国の描写を読んだほうが、自国の特徴がくっきり浮かび上がってくる。ビジネスも同じ。ただ、よくあるような「懇親会」だけの交流ではなく、現実の仕事に関連させることが重要です。

*P&G、グーグルの事例は『courrier Japon』2009年1月号(92〜93ページ)記事を、ギメの言葉は『逝きし世の面影』(渡辺京二、平凡社、56ページ)を参考、引用しました。



(2009年1月16日号掲載)