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現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

116)プレゼンテーションの秘訣

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。商売は常にプレゼンの連続!

今日はプレゼンテーションの秘訣についてお話しましょう。毎日お客様を前に熱弁をふるう営業マンや販売員に限らず、商売は常にプレゼンテーションの連続です。社外だけではなく、製造、技術、開発など、社内で部門の違うメンバーが新しい企画(新製品など)について打ち合わせする会議でも、プレゼンテーション能力の違いによっ
て、会議品質そのものが大きく違ってきます。


初球は変化球で

特に日本人は、「前置き」が長い傾向にあります。「えー、諸先輩方をさしおきまして、私のようなものが前に立ってお話するのはいかがなものかと…」よくある「語り出し」ですね。しかし、聴いているほうとしては、「早く始めちゃってくれ!」です。そんな中、あるクライアントのプレゼンテーションで、こんな語り始めの人がいらっしゃいました。テーマは「車のマナー」です。

「みなさん、車のシートの中には火薬がたくさん入っていることをご存じでしたか?」

みんな、「?」ですよね。車のシートに火薬!?
一体何なんだ? この「変化球」で、全員の関心が一気にプレゼンターへ向かいました。話しているのは技術者。彼は前職で車のシートメーカー工場に勤務、その体験談から話し始めたのです。エアバッグは火薬が爆発して膨張します(ご存じでしたか?)。だから、運転席・助手席の座席サイド部分に内蔵されているサイドエアバッグ、ルーフライニングのサイド部分に内蔵されているカーテンエアバッグ、インパネ下部に内蔵されている下股部を保護するニーエアバッグなど、エアバッグのあるところすべてに火薬が内蔵されているのです。これが「今日はエアバッグの仕組みについてお話します」という「直球」だと、関心のある人とない人とで、向けられる注意の密度がまちまちになったことでしょう。


自分の体験を語る

プレゼンテーションは続きます。車は搭載されている情報機器が充実し、今や走るコンピュータと言えるが、火薬がシートに内蔵されていることを知って自分自身の車に対するものの見方が変わった。火薬という危険物が多用されていることから連想し、やはり「動く凶器」であり、運転者のマナーや人格がとても重要だと締めくくりました。

「シートに火薬が使われている」だけでは「一般的な知識」だけにとどまります。これを3人称の知識と呼びます。3人称とどまっては、プレゼンテーションにふくらみが生まれません。つまり、ネタとして3人称の題材を持ってきて、それに自分自身の料理(ものの見方・考え方、解釈)を加えることで1人称の話へと転じる


3→1→3の法則

3人称で始まったネタに1人称の味付けをし、さらにもうひとひねり。最後、もう一度3人称へと昇華させる。これが「売れるプレゼンテーションに仕上げる秘訣」です。
 先ほどのシートの話で言うと、「自分自身の車に対するものの見方が変わった」部分が1人称であり、最後の「車は動く凶器であり、運転者のマナーや人格がとても重要」というところで、1人称がさらに一般社会への提案という3人称へと昇華しています。これを「プレゼンテーションの3→1→3の法則」と呼んでいます。

どんな題材でも、まず、プレゼンする相手と共有できる素材(3人称)から入る。共有化しづらい全く新しい製品やサービスの場合は、そのものズバリの新商品をいきなり見せるのではなく、「その商品のしてくれることや、他にはないとんがったモチーフ」から見せる、という入り口が良いでしょう。スティーブ・ジョブスは、世界最薄ノートパソコン・マックブックエアーの新商品発表会で、封筒の中に入れてその薄さをアピールしました。
入り方は「変化球」で、しかし共有可能な3人称の題材を示す。それによって「まず、相手の注意をつかむ」。次に自分ならではのものの見方・考え方を加味する(1人称)。最後は「あなたにとってのメリット(3人称)」を示す。これで聴衆をプレゼンテーションへと巻き込むのです。最後の「相手の巻き込み」こそが重要で、ややもするとプレゼンテーションは「自分が言いたいことだけ言って、終わり」になりがちです。お忘れなく。




(2009年4月16日号掲載)