就労ビザ(H-1Bビザ)からグリーンカードを取得するには?

アメリカ就労ビザ「H-1B」保持者が永住権を取得するまでの期間

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在「H-1B」ビザで、日系のIT 関連の会社で就労しています。最近、永住権の取得が非常に早くなったと聞きましたが、今から申請を行うとどれくらいで取得が可能になるのでしょうか。

A:確かに2014年5月までは、約1年半とかなりの速さで取得が可能でしたが、今では少し遅くなり2年4カ月ほどを要しています。雇用を通して永住権を取得する過程は、
①規定の給料設定
②人材募集広告
③労働認可証(EAD)の取得
④「I-140(Immigrant Petition for Alien Worker)」 審査
⑤「I-485(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)」審査、または日本で手続きを行うConsular Processing に分けられます。
 
①の規定の給料設定とは、その役職、および就労を行う地域において妥当だと労働局(EDD)が判断する給与を決める過程のことを指します。現実的には、平均給与よりもやや高めの給与額が提示されるのが一般的です。この過程には、現在1カ月半から2カ月程度がかかります。ここで問題となるのが、スポンサーとなる会社が設定される給料を支払えるだけの経済的能力があると「I-140」の申請の際に立証しないといけないということです。これに関しては、後述します。
 
この給料の設定が終わった後は、人材募集広告を約1カ月行い、その募集に対する応募者の反応を見るためさらに1カ月待ちます。
 
次の過程については、最近では以前に比べてかなり遅れ気味になっており、監査(Audit)の通知が来なかった場合でも、約9~11 カ月を要しています。通知を受けた場合には、監査の過程だけで約6カ月以上を要しています。
 
「I-140」の審査では、前述したように、スポンサーである会社が労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるか否かが審査基準となります。
 
まず、申請者が何らかの労働ビザを持ち、現在スポンサーの会社で働いている場合、すでに規定額の給与が支払われているかが問われます。もし規定額がすでに支払われている場合は、仮にその会社が赤字であっても認可される可能性は大きくあります。
 
申請者の給与が規定額未満の場合には、会社の純利益が規定の給与額と実際にもらっている給与額との差額分以上あるかどうか、また、申請者が現在働いていない場合は、会社の純利益が規定の給与額以上あるか否かが判断の対象となります。もし、規定額に達していれば認可される可能性は大きくありますが、例えば会社が赤字などで達していない場合は、この判断基準をパスすることができません。しかし、現在の給与が会社の純利益も規定額に達していなかったとしても、会社の流動資産が規定の給与を支払えるだけあれば、パスすることも可能です。これは会社の資産表(貸借対照表)から判断されます。

要となるのは毎月更新される優先日

最後の過程⑤は「I-485」の審査ですが、ここでは移民局が労働許可証申請を受け付けた日付、つまり優先日(Priority Date)がカギとなります。就労ビザである「H-1B」からの永住権取得には、「EB-2」と「EB-3」の2つの部類があり、前者は修士号を持っている、または学士号を保持し、かつ5年の職務経験のある人が当てはまります。「EB-3」は、学士号を持っている、または2年の職務経験のある人が対象です。
 
「EB-2」に該当する人は現在、前述の監査にかからなければ、この優先日に左右されることなく、永住権を約1年半から2年半で取得できます。しかしながら、「EB-3」の場合は、自身の優先日が回ってくるまで、「I-485」の申請を待つ必要があります。
 
現在(2014年8月時点)の優先日は2011年4月1日ですので、約3年4カ月の待ち時間ということになります。例えば今から3カ月前の2014年5月の優先日だと、2012年10月1日なので約2年の待ち時間、また今から約1年半前の2013年2月の優先日だと2007年3月15日になっていて、約7年の待ち時間となっています。この「I-485」申請の待ち時間の違いが、最近(2014年5月あたり)、永住権の取得が早くなったと言われていた理由です。ただし、この優先日は毎月変更されるため、現在申請を開始すれば3年4カ月の待ち時間になるわけではありません。あくまで3年4カ月前に申請した人たちの順番が回ってきているのであって、今後、日付が後戻りすることもあり、正確な期間は未定です。
 
いずれにせよ、早く申請を行えば行うほど永住権が早く取得できることに変わりません。アメリカに永住、もしくは長期滞在を既に決められているのであれば、早めの永住権申請をお勧めします。
 
(2014年8月1日号掲載)

永住権取得前に就労(H-1B)ビザが失効する場合の対処法は?

吉原 今日子 弁護士

Q:就労ビザ(H-1Bビザ)を持つ主人の妻(H-4ビザ保持者)です。日本でシェフの経験があり、アメリカで知り合ったレストラン経営者から「ぜひ雇いたい」と言われました。現在、このレストランをスポンサーにして、「カテゴリー3」でグリーンカードの申請を行っています。I-485の審査の順番待ちですが、Priority Date(優先日)が来る前に、主人のH-1Bビザが切れてしまいます。その場合、どうなるのでしょうか?

A:Priority Date が来る前に、ご主人の就労ビザ(H-1Bビザ)が失効してしまうと、H-4 ビザも必然的に失効し、米国滞在ができなくなります。従って、その後、何のアクションも取らない場合、一旦日本に戻り、あなたのグリーンカードの申請を「Consular Process」(最後の段階の手続きを日本で行う方法)に切り替えます。そして、Priority Date が来た時点で、在日米国大使館で面接を受けます。そこで半年間有効で1回限り使用可能のImmigrant Visa の発行を受け、米国に入国すれば、その後約3週間程度で、入国の際に届け出た住所にグリーンカードが送られてきます。
 
しかし、ご主人がH-1Bビザで仕事をされていること、ご夫婦とも米国での生活が長く、生活の基盤が米国にあることを考えると、一旦日本に帰ってPriority Date が来るのを待つことは、容易なことではないでしょう。そこで、米国に滞在し、ご主人も就労を続けながらPriority Dateを待てるオプションの1つをご説明しましょう。

グリーンカードの別申請で米国に滞在し、就労の続行可

ご主人のH-1Bビザが失効するまで1年3カ月以上ある場合、ご主人もグリーンカードの申請を開始することをおすすめします。ご主人がH-1Bビザを取得しているということは、グリーンカード申請の条件を満たしているはずです。この手続きは、ご主人の現在の雇用主に限る必要はなく、グリーンカード申請の条件を満たしている会社ならば、他の会社でもスポンサーとなることが可能です。
 
グリーンカード申請のための会社側の主な条件としては、ご主人の学歴、あるいは職歴を活かす役職が存在していること、会社の決算が、労働局によって定められているご主人の給与(Prevailing Wage)以上の黒字である、あるいは、仮に赤字であったとしても、会社の現在の資産価値が、Prevailing Wage 以上ある(例えば、債務超過していない)ことなどです。
 
グリーンカードの申請を始めて1年以上経過していれば、H-1Bビザの最長期間の6年を過ぎても、1年ごとに延長申請することができます。ただし、グリーンカードの申請が開始されたとみなされるのは、「Labor Certification」の申請を労働局に行った時点ですので、その前に、「Prevailing Wage Request」に約1カ月、募集広告に2カ月必要です。ですから、ご主人のH-1Bビザが失効するまでに1年3カ月以上の猶予が必要となるわけです。
 
もし失効まで1年3カ月を切っている場合、ご主人のグリーンカード申請を「カテゴリー2」で行う方法が考えられます。カテゴリー2での申請を行うためには、修士号を取得しているか、学士号に加え、5年以上の職歴が要求されます。ただし、H-1Bビザを職歴による換算ではなく、学士号で取得したことが前提です。もし、H-1Bビザが切れるまでに1年3カ月ないのであれば、おそらく現時点において、5年以上の職歴があるはずですから、問題はないでしょう。
 
Labor Certification の申請に約1カ月、さらにその後のI-140 の申請も約15 日(通常約5カ月を要しますが、「Premium Processing」を用いれば15 日以下に短縮できます)、合計4.5 カ月で、I-140 の認可を得ることができます。I-140 が認可されていれば、H-1Bビザの最長期間の6年を超えても、3年ごとの延長が可能です。従って、ご主人のH-1Bビザが失効するまで4カ月と15 日あれば、この手続きを行える可能性があるわけです。
 
ただし、ここで注意していただきたいことは、5年間の職務経験を積んだ会社で、H-1Bビザと同じ役職でのグリーンカード申請は行えないことです。また、Labor Certification の審査において「Audit(監査)」を受けると、約10カ月間余計に、手続きに時間を要してしまうことです。
 
Auditの間に、ご主人のH-1Bビザが切れてしまう事態に備えようとするなら、複数の会社をスポンサーにしてグリーンカードの申請を行うことも、手段の一つとして考えられます。

H-1Bビザ有効期限間際のグリーンカード申請の方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在ある日系企業でH-1Bビザにて就労していますが、H-1Bの最長有効期間の6年間まであと半年しかありません。会社からはグリーンカードの申請を始めるようすすめられているのですが、周りの人の話では、もう間に合わないと言われています。今からでも申請は間に合いますか?

A:残された期間(6カ月)でグリーンカードの申請を行い、なおかつ継続してアメリカにおいて就労を続ける方法としては、2通り考えられます。
 
まず、修士号か学士号を持っており、なおかつ5年以上の実務経験がある場合、雇用によるグリーンカード申請の第2優先カテゴリー(EB2)において、申請することをおすすめします。雇用を通してグリーンカード申請を行う場合、まず、募集広告を行い、次に労働局にて「Labor Certification」の申請を行います。その後、I-140と呼ばれるスポンサー企業の審査、およびI-485と呼ばれる申請者個人の審査が行われます。
 
H-1Bの6年間の有効期間が切れてしまう前に、I-485の申請を行うことができれば、継続してアメリカに滞在でき、その後、就労許可を取得することができます。募集広告を行うには2カ月、Labor Certificationを取得するのに、現在、約2~3カ月要していますが、EB2カテゴリーにおいては「Priority Date(優先日)」が現在のところ「Current」であるため、その後のI-140の申請とI-485の申請を同時に行うことができます。
 
次に、前記カテゴリーに当てはまらない場合、第3優先(EB3)のカテゴリーにおいてグリーンカード申請をすぐに行い、その後にH-1Bの延長申請を行うことで、継続してアメリカに滞在する方法が考えられます。従来ならば、「American Competitiveness in the Twenty-first Century Act」という法律の106条a項によって、H-1Bの6年目以降の延長は、グリーンカードの申請を開始して1年以上待っている場合のみ可能でした。従って、H-1Bの残りの期間が1年に満たないケースの場合は、米国滞在を諦めざるを得ないという場合がほとんどでした。

H-1B期限内のI-140認可で3年間の延長が可能に

しかし、移民局は今年6月16日に、H-1Bの6年間の有効期間終了前60日間に限り、I-140の申請に「Premium Processing」の適用を認めると発表しました。これにより、あなたやあなたと同様の立場にいる人が、グリーンカードの申請を行うことにより、継続してアメリカに滞在し、就労し続ける大きなチャンスが与えられたと言えます。
 
このPremium Processingとは、従来の申請料に加えて、1000ドルを移民局に支払うことにより、15日間以内に「認可」「却下」「追加資料の請求」「不正申請に対する調査の開始」のいずれかの結果を、移民局が出すという制度です。追加資料の請求の通知が来た場合には、要求されている資料を提出した後、再び15日以内に移民局が結果を出すことになっています。以前は、ほとんどすべてのI-140の申請にPremium Processingが適用されていましたが、その後、適用は停止されていました。
 
今回、一部のI-140申請のケースへの適用再開が決定されましたので、募集広告を行い、Labor Certificationを取得した後に、I-140申請をPremium Processingで行えば、H-1Bビザの有効期限が切れる前に、認可を取得することができる可能性が高いでしょう。そして、I-140の認可を取得できれば、今度は、American Competitiveness in the Twenty-first Century Actの104条c項の適用を受けることができます。これは、I-140の認可を受けていれば、H-1Bビザの最長有効期限の6年目以降であっても、さらに3年間の延長申請ができると規定しています。
 
従って、Premium Processingを使うことにより、I-140の認可をH-1Bの期限内に受けることができれば、H-1Bの3年間延長の申請ができ、継続してアメリカに滞在することができるわけです。その後は、Priority Dateが巡って来るのを待ってI-485申請を行うか、「Consular Processing」により、日本のアメリカ大使館にてインタビューを受けることにより、グリーンカードの取得が可能です。
 
あなたの場合、前記のいずれの方法を使うにせよ、時間が限られていますので、1日も早く専門の弁護士に相談され、今回のチャンスを大いに活かして申請を行うことをおすすめします。
 
(2008年8月1日号掲載)

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