アメリカの移民法の基礎知識とアメリカのビザの種類

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アメリカで暮らす外国人には、最も身近な法律である移民法。ここでは短期滞在のための非移民ビザから、グリーンカードと呼ばれる永住権まで、その種類と取得方法を紹介します。

※このページは「ライトハウス 2023年春夏の増刊号」掲載の情報を基に作成・更新しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

パスポートのイメージ

 

短期商用・観光ビザ(Bビザ)

■B-1ビザ

短期商用ビザ。市場調査や商談などを目的とし、アメリカ国内で賃金は得られません。最長6カ月滞在でき、病気などの緊急の場合、あるいは、滞在理由が正当であると認められた場合は、延長が可能です。
 
●もっと詳しく:短期出張向けの商用ビザ(Bビザ)とは
必要なビザが無いにもかかわらずアメリカ国内で雇用に基づき就労する(働く)ことは禁じられていますが、「B-1」ビザがあれば日本からの短期出張中にアメリカで商談を行ったり、商品の買い付けやマーケット調査の実施、会議やイベントへの参加などが可能になります…続きを読む

■B‒2ビザ

長期観光用ビザ。通常6カ月未満の滞在が可能で、B-1ビザと同じ場合に延長が認められます。

学生ビザ(Fビザ・Mビザ)

■F-1・M-1ビザ

就学ビザ。F-1ビザは語学学校、短大、大学、大学院など、M-1ビザは専門学校などが対象。期限は最長5年。基本的に就労できませんが、1年以上就学し短大、大学、大学院を卒業すると、実務研修期間、オプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)が与えられ、最長で1年(M-1は最長6カ月)の就労許可と滞在許可が得られます。
なおF‒1ビザの場合、学校からCPT(Curricular Practical Training)の許可を得ることができれば、在学中でもパートタイム、休暇中はフルタイムで働くことができます
 
●もっと詳しく:学生ビザで留学中、合法的に働くには?
F-1ビザ(学生ビザ)のステータスで、在学期間中に就労するには「Curricular Practical Training」(CPT)を利用したり、「Optional Practical Training」(OPT)を利用するなど、いくつかの方法が考えられます…続きを読む
 
●もっと詳しく:オプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)とは
Optional Practical Training(OPT)には、在学中から利用可能な「Pre-Completion」と、1年以上通学を続けた後に利用可能な「Post-Completion」の2種類があります…続きを読む

研修・インターンシップビザ(Jビザ)

■J-1ビザ

交流訪問ビザ。トレーニングやインターンシップの場合は、有給で研修ができます。スポンサーとなるアメリカ国内の企業とその企業を紹介する第三者企業があること、基本的にはアメリカ国外の4大卒者は日本で1年以上の実務経験があること、高卒なら5年以上の実務経験があるのが好ましいです。有効期間は最長18カ月。近年はJ-1ビザからほかのビザへの切り替えが厳しくなっています。J-1ビザ保持者の扶養家族はJ-2ビザの申請が可能です。
 
●もっと詳しく:アメリカ版ワーホリ?!「J-1ビザインターンシップ」徹底解説
J-1ビザは比較的短期間で取得が可能と言われており、ワーキング・ホリデーのようにアメリカで働きながら(企業でインターンシップをして、給与をもらいながら)生活することができます。J-1ビザは14のカテゴリーに分かれていますが、日本人が多く申請するのは「トレーニー」と「インターン」で、共にアメリカで研修・トレーニングするためのカテゴリーです。…続きを読む

専門職・就労ビザ(Hビザ)

■H-1Bビザ

就労ビザ。取得条件は、4年制大学以上の学位か、それ相当の実務経験があること。大学の1年間が3年間の実務経験とみなされ、短大卒の場合は6年間、高卒は12年間の実務経験が必要です。有効期間は通常3年で、最長6年まで延長できます。
 
申請職種は4大卒以上の知識を必要とする専門職でなければならず、大学の学位か実務経験が申請職種に関連していなければなりません。雇用主が労働市場の平均以上の賃金を支払うことも条件です。申請受付は3月初旬から。ビザが有効となり就労できるのは同年10月1日から。受付件数は限られています。H-1B保持者の扶養家族にはH-4ビザが発給されます。
 
●もっと詳しく:「H-1B」ビザの抽選を通過しました。現状と今すべきことを教えてください
アメリカで就労ビザ(H-1Bビザ)の申請が認可されても、実際に就業できるようになるのは認可された年の10月1日からです。このため、OPTがその60日以上前に終了してしまう場合は、「H-1Bビザ」への変更日(10月1日)までビザがない状態が生じてしまいます…続きを読む
 
●もっと詳しく:就労ビザ(H-1Bビザ)からグリーンカードを取得するには?
2014年5月までは、約1年半とかなりの速さで取得が可能でしたが、今では少し遅くなり2年4カ月ほどを要しています。雇用を通して永住権(グリーンカード)を取得する過程は次の5つのステップに分けられます…続きを読む

商用・管理職ビザ(Eビザ・Lビザ)

■E-1ビザ

管理職・専門職ビザ。日米間で貿易・流通を行う日系企業に勤める社員とその家族のビザです。管理職以上か、会社の運営に不可欠な専門的知識・特殊技能を持っていることが取得条件です。また、スポンサーとなる企業は、所有権の50%以上を日本人・日本企業が有しており、継続的に日米間で相応の貿易・流通業務を行うことが条件。有効期間は1〜5年。更新・延長の場合の有効期間は最長5年で、何度でも更新可能です。

■E‒2ビザ

投資家ビザ。アメリカに会社を設立して投資活動をする企業投資家とその家族のビザ。相当額の投資とビジネスプランなどを提出する必要があります。1回目の申請で最長1~5年間、その後、最長5年単位で何度でも更新可能です。
 
●もっと詳しく:更新回数に制限のない、貿易家ビザE-1と投資家ビザE-2
E-1ビザの必要条件は、1)申請者がアメリカと条約を締結した国の国民である(日本など)、2)申請者が就労予定のアメリカの会社は、条約国と同じ国籍である。また、その会社の所有権を最低50%以上はグリーンカードも米国市民権も保持していない条約国の市民が所有している、ことなどが挙げられます。一方、E-2(投資家ビザ)の必要条件は、1)投資家は条約国の市民である、2)投資家が働く会社の少なくとも50%以上の所有権が約国の市民にある、となっています…続きを読む

■Lビザ

駐在員ビザ。L-1Aはアメリカ国内の同系企業(親会社・子会社・関連会社)に駐在する経営者や管理職のビザ。取得条件は、過去3年間で1年以上アメリカ国外の親会社・子会社・関連会社において管理職以上に就いていること。有効期間は最長7年。
 
L-1Bはアメリカ国内の同系企業駐在の特殊技術者のためのビザ。最長有効期間は5年。L-1ビザ保持者の扶養家族にはL‒2ビザが発給されます。
 
●もっと詳しく:駐在員ビザ(Lビザ)からグリーンカードを取得するには?
数年前に日本の親会社よりアメリカの子会社に赴任、当初は数年以内に帰任命令が出るものと思っていましたが、赴任が予想外に長期となり、残り約半年で私の駐在員用L-1ビザの有効期限が終了する予定です。これ以上の延長ができないことが判明、子どものことも考え永住権の申請をしたいのですが…続きを読む
 
●もっと詳しく:アメリカでの起業、会社設立に必要なビザ(E-1/E-2/Lビザ)
アメリカで起業、会社を設立する際にビザを申請する場合、取得候補のビザとしてさまざまなビザが考えられますが、中でも代表的な2つのビザがLビザとEビザです。いずれのビザが申請に適しているかは、まず日本に会社を所有しているかどうかによって変わります。…続きを読む

永住権(グリーンカード)

通称グリーンカード。永住が目的のアメリカ移民ビザ。グリーンカードの申請には、「米国市民や永住権保持者などとの婚姻ベース」「雇用ベース」、「自己申請ベース」など。また年に1度、グリーンカードの抽選に応募する「DVロッタリー」や、投資永住権プログラム「EB-5」により永住権を得る方法もあります。
 
雇用を通じてグリーンカードを申請する場合、EB-1(第1優先)、EB‒2(第2優先)、EB‒3(第3優先)のカテゴリーがあり、申請条件や取得までの期間はどのカテゴリーで申請するかにより異なります。EB‒3の場合、「4年制大学卒業資格」か「2年以上の就労経験」が条件。EB‒2は、「修士以上の学位」か「4年制大学卒業資格に加え5年以上の専門職経験」が条件で、時期によってはEB‒3に比べ優先的に発行されます。EB-1は、「科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツの分野で卓越した能力」「3年以上の経験を持つ教授、研究者」「国際的な大企業の管理職」など申請条件は厳しいですが、スポンサー企業が不要の場合もあります。
 
●もっと詳しく:アメリカ人との結婚による永住権の取得
アメリカ市民がスポンサーとなってグリーンカードの家族申請をする場合、スポンサーとして経済的に十分な収入があることを証明できるかどうかが重要な条件となります。移民局のガイドラインによると、生活保護が必要となる収入の125%以上の収入が最低限必要とされています…続きを読む
 
●もっと詳しく:雇用によるグリーンカード取得にかかる期間と手続き
雇用を通してグリーンカードを取得するプロセスは細かく分けて、①「規定給料の設定」、②「人材募集広告」、③「Labor Certificationの取得」、④「I-140の審査」、そして、⑤「I-485(あるいはConsular Processingを通して)の審査」の5つがあります。…続きを読む
 
●もっと詳しく:投資によるグリーンカードの申請・取得
アメリカ国内で相当額の投資をする場合、「EB-5」カテゴリーでの永住権(グリーンカード)の申請が可能になります。ただし、EB-5での申請には「アメリカ国内で100万ドル以上投資し、2年以内に10人の米国人を雇用する」「失業率がアメリカ全体の平均の150%を超える地域で50 万ドル以上投資し、2年以内に10人の米国人を雇用する」などの条件を満たす必要があります。…続きを読む
 
●もっと詳しく:アメリカ・グリーンカード(永住権)の抽選
過去5年間でアメリカへの移住者が5万人に満たない国を対象に(日本は抽選対象国)、5万件のグリーンカード(永住権)が発行されます。抽選への応募期間は毎年10月頃で、応募はウェブサイトから行います…続きを読む

ビザウェイバー・ESTA

観光や短期の出張等を目的として、日本人が90日以内の滞在で旅行者として渡米する場合は、ビザウェイバー(ビザ免除プログラム)が利用できます。渡米前にESTA(電子渡航承認システム)の登録が必須です。
 
●もっと詳しく:ビザ免除プログラムとESTAとは?
有効期限内のパスポートと往復または次の目的地への航空券を所持している場合、かつ渡米目的が短期の商用あるいは観光であれば、ビザなしでアメリカに最大90日まで滞在が可能となります。ただし、渡米前に電子渡航認証システム(ESTA)で承認を得ている必要があります…続きを読む

監修/瀧法律事務所(www.takilawoffice.com)
上記は移民法のビザ(一部)について簡単に説明したものです。ビザ取得や申請条件は、変更になる可能性があります。ビザ・永住権申請や更新の際には専門の弁護士に相談してください。


 

アメリカで住む、働くための最新アメリカ・ビザガイド2017

外国人が、アメリカで合法的に滞在・就労するために避けて通れないのがビザ問題。2017年1月、移民に厳しいと言われるトランプ政権が発足しましたが、実際、ビザの取得や更新は難しくなっているのでしょうか?各種ビザをめぐる最新動向をまとめました。
 
※この記事は「ライトハウス・ロサンゼルス版 2017年9月1日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
※掲載後、内容が変更・改正される場合がありますので、最新情報や個別の事例につきましては移民法弁護士にお問い合わせください。

アメリカ新政権によるビザ取得への影響の有無

2017年1月、トランプ新政権が発足しました。極端とも思える政策を各種掲げ、当初は「まさか大統領になるはずがない」と世界の大半が思っていたにもかかわらず、その「まさか」が的中した形です。多くの移民で成り立つアメリカですが、移民排斥傾向にあると言われる同政権下において、永住権や各種移民ビザを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか?
 
移民法を専門にする瀧法律事務所の大橋幸生弁護士によると、トランプ政権発足以降、移民・非移民ビザの取得が一概に難しくなっているわけではないそうです。トランプ政権になってまだ日が浅く、ビザ取得における影響の具体例が乏しいため、実際は「難易度は事例による」というのが正しい見方のようです。
 
そんな中、同弁護士が注目しているのは、不法滞在や不法就労を含めた犯罪歴のある人のビザ取得が難しくなっているということです。そうした人は各国の米国大使館面接でビザ発給を拒否されるケースが増加しており、仮にビザを取得できても、入国審査時に別室に連行され、長時間外部との連絡が取れず強制待機となることが多いそうです。さらに、トランプ大統領はアメリカ大使館・領事館に対し犯罪歴のある人物には厳しく対応するよう2017年3月に大統領令を発令。これにより、今後ビザ取得とビザ保持者の入国審査が厳格化されると考えられています。また、2017年春に入国拒否となったイスラム教国7カ国(イラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメン)への渡航履歴がある場合も、入国時の取り調べの対象となっているといいます。
 
長年移民法に携わっている吉原法律事務所の吉原今日子弁護士は、政府には移民取り締まりの草案が各種上がっているものの、まだどれも具体化されていないとし、「現時点で言えることは、トランプ大統領はビザ取得を難しくするというより、米国内に流入する不法移民の取り締まりに注力しているということです」と語っています。
 
不法移民や犯罪者、危険人物に対する警戒は強くなる一方で、一般のビザ取得については、今のところ従来と変わらないというのが両弁護士の一致した見解です。

SNSや携帯電話に注意

通常、アメリカの非移民ビザの申請にはDS160、移民ビザの申請にはDS260という書類をオンラインで入力・提出します。実は現在、それらの書類にFacebookやinstagramなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のログイン情報の申告義務を加えることが検討されています。もしこれが現実化すれば、SNSでの不用意な投稿などによって不法滞在や就労、米国市民との結婚の意思の有無などに嫌疑がかけられ、ビザ取得がより困難となる可能性があります。これに類似する例として、「F-1」(学生)ビザ保持者が日本に一時帰国などしてアメリカに再入国する際、米国滞在中の不法行為を見つけるために携帯電話やその他の電子機器での通話・通信履歴を調べられるケースが増えています。「New York Times」(2017年2月号電子版)によると、2015年会計年度(2014年10月〜2015年9月)には4千444台の携帯電話と320台の電子機器が調べられたのに対し、2016年度には合計2万3千台が調査されました。ここで不法行為あるいはその根拠が見つかれば、その場で強制帰国となります。
 
最後に吉原弁護士は、「ただ、最近は、ビザの申請過程で、追加書類の請求が増えているのは事実です。従来はそこまで詳細に審査されていなかった内容が、最近では細かく見られるようになったという意味では、ビザ取得のハードルが上がったと言えるでしょう」と話してくれました。
 
各種ビザについての最新状況は、以下のページをご覧ください。

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