駐在員ビザ(Lビザ)からグリーンカードを取得するには?

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駐在ビザからグリーンカードに短期間で切り替えはできますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、「L-1」ビザにて、2015年に米国の支社に駐在員として赴任してきました。日本では大学を卒業した後、約10年間勤務、その後シンガポール社の支社長を務め、日本の会社の海外事業部で半年勤務した後、米国支社の副社長として赴任しました。本来ならば、私の「L-1」ビザの切れるころに、アメリカでの任期が終わり、本社へ戻る予定でしたが、パンデミックのため本社からの交代要員を赴任させるのが困難になり、本社から継続してアメリカに滞在するよう依頼されました。そのため、社内規定の例外として永住権の申請も視野に入れてよいと言われています。将来的には日本、あるいは他の国に赴任する可能性もありますが、妻も子どももアメリカでの長期滞在を希望しているので、永住権が取得できればと考えているのですが、「L-1」があとわずかで失効してしまいます。何かよい方法はないでしょうか。

A:「L-1」ビザが失効するまでに、Eビザを取得する方法も考えられますが、永住権を希望されておられるので、本コラムでは「L-1」ビザから永住権への切り替えに関して説明します。

条件を満たせば、短時間でLビザからグリーンカードに切り替えができる可能性あり

最初に考慮すべき選択肢として、あなたが第一優先でのグリーンカード申請の条件を満たしているのであれば、Eビザなどへの切り替えを行うことなく切り替えられる可能性は十分にあります。通常、永住権を申請する場合にはまず、労働局での審査過程を踏み、労働局からの認可(「Labor Certification」)を取得する必要があります。この方法では、移民局への申請ができるまでに現在12~20カ月を要しています。ですが、あなたは日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば、第一優先の「多国籍企業の重役等」のカテゴリーに含まれる可能性があり、この場合は労働局での審査を飛ばすことができます。

あなたの場合、以下の①〜④の条件を満たしていることを証明すれば、第一優先で永住権の申請が可能です。

①日本(米国外)にある会社と米国にある会社が親子関係にあること。これには、米国にある会社の50%以上の株式を日本(米国外)にある会社が直接的に所有している場合、また米国の50%以上の株主が日本(米国外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあると見なされます。あなたは「L-1」ビザを持っているので、この条件は満たしているはずです。

次に、②米国の会社で部長あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること。移民局では一般的に、これに関して申請者の下に部下がいるだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることが要求されます。言い換えると、会社の組織図において申請者の下に2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。第一優先の申請を行うには、申請者の下に、少なくとも合計で8~10人以上の部下がいた方がよいです。

また、③LビザあるいはEビザにて米国に入国する前の過去3年間のうち少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラスなどの管理職として日本、(米国外)にある親会社(子会社、系列会社でもよい)、またはその関連会社で勤務していたこと。

上記の②、③に関してですが、あなたの場合、アメリカに来る直前の海外事業部においてあなたの部下が仮に10名いなかったとしても、条件は「米国に入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年間以上」なので、シンガポールで支社長をしていた時の役職を用いることができます。

最後に、④米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであることです。これには、米国での会社が日本(米国外)の親会社より永住者を送らなければならないほどの規模のものであると見なされなければならず、それには相当額の売り上げと相当数の従業員の存在が要求されます。

 

プランBとして一度他ビザに切り替える方法も検討

これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接移民局に永住権の申請書を提出できます。申請は、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国で働いている必要もありません。また永住権は、配偶者および21歳未満(永住権取得時期の年齢)の子どもも同時に取得することができます。

移民局への申請は、「I-140」および「I-485」の申請書を同時に移民局に提出します。この時点で、あなたの米国での滞在資格が確保されます。その後、就労許可、一時渡航許可が下りれば、就労を継続できるだけでなく、海外への出入りも可能になります。万が一、あなたがこの第一優先での申請の条件を満たさない場合は、Eビザに切り替えた後、第二優先、あるいは第三優先にてグリーンカードを申請する方法を考慮することになります。

 

(2022年2月1日号掲載)

短期間でLビザから永住権に変更する方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、6年半前に日本の親会社より米国の子会社に赴任してきました。当初は5年以内に帰任命令が出るものと思っていましたが、こちらでの勤務が予想外に長期になり、残り約半年で私の持つ駐在員用L-1ビザの有効期限が終了。これ以上の延長もできないことが分かり、子どものことも考え永住権の申請をしたいのですが、今からでも間に合うでしょうか。

A:雇用を通しての永住権の割り当ては通常、第1〜第5優先の5つに分けられ、多くの申請者は第2優先、あるいは第3優先に区分されます。
 
今回のケースで重要なのは、あなたとあなたの勤務している会社が第1優先での永住権申請の条件を満たしているかどうかということです。もし、双方ともその条件を満たしているのであれば、半年経ってL-1ビザの有効期限が切れてもアメリカに合法的に滞在しながら永住権を申請できる可能性が十分にあります。
 
通常、専門職用のHビザなどから永住権を申請する場合には、まず労働局での審査を受け、認可(Labor Certification)を得る必要があります。しかしながら、この申請方法では移民局への申請が開始できるまで1年から3年ほどを要しています(2014 年6月時点)。
 
日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば第1優先の「多国籍企業の重役」などのカテゴリーに含まれる可能性があります。この場合は労働局での審査を省略することができます。第1優先の対象者には他に、「極めて高度な技術や能力、知識を保持する者」「著名な教授」「研究者」のカテゴリーがあります。以下の条件を満たしていることを証明すれば、第1優先における永住権の申請が可能です。
 
①日本(米国外、以下同)の会社と米国の会社が親子関係にあること
米国にある会社の50%以上の株式を日本にある会社が直接的に所有している場合。また、米国の会社の株主の50%以上が日本の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
 
②米国の会社で部長、あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること
移民局では一般的に、申請者の下に部下がいるということだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることが要求されます。つまり、会社の組織図において申請者の下に2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。第1優先の申請を行うには、申請者の下に少なくとも合計で8人以上の部下がいる方が良いと言えます。
 
③米国入国前の3年間で少なくとも1年以上は管理職に就いていること
Lビザ、または貿易・投資駐在員用のEビザで米国に入国する場合、入国以前の過去3年間で、少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラスなどの管理職として日本にある親会社、またはその関連会社で勤務していなければいけません。
 
④米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであること
米国での会社が日本の親会社より永住者を送る必要があるほどの規模だと考慮されなければならず、それには、相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。
 
これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接移民局へ永住権の申請書を提出することができます。申請には米国と日本にある会社の両方から決算報告書、会社設立に関する書類など、会社が実際に存在し経営を行っていることを示す書類が必要となります。ただし、特に米国の会社の経営状態が芳しくなく(流動資産も乏しく)、従業員が少ない会社などは、前述の条件を満たしていたとしても、移民局から永住権の認可を受けることは困難です。

米会社設立1年以上なら子どもの永住権も申請可能

この第1優先枠での永住権申請の時期に関しては、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国で働いている必要もありません。また永住権は配偶者、および21歳未満(永住権取得時期において)の子どもも同時に取得することができます。
 
申請に関しては、「 I-140(Immigration Petition for Alien Worker)」、および「 I-485 (Application to Register Permanent Residence or Ad just Status)」を同時に移民局に提出します。この後、約2、3カ月で就労許可、また一時渡航許可が下りるので、就労を継続できるだけでなく海外への出入りも可能です。この方法だと1年弱で永住権を取得できます。
 
もし、前述の第1優先での申請条件を満たさない場合は、Eビザに切り替えた後、第2優先、あるいは第3優先にて永住権を申請する方法もあります。
 
(2014年6月1日号掲載)

短期間でLビザから永住権を取得するには?

瀧 恵之 弁護士

Q:日本の本社で10年間勤務した後、7年前に米国支社に駐在員として赴任して来ました。ところが、あと3カ月で私の所持しているL-1ビザの有効期限が切れ、これ以上の延長はできないことがわかりました。子供のことも考え、永住権(グリーンカード)の申請を考えています。今から手続きを開始して、間に合うでしょう か?

A:グリーンカード申請カテゴリーの「第1優先」の条件を満たしていれば、まだ間に合う可能性は十分あります。
 
通常、H ビザ等から永住権を申請する場合には、労働局での審査過程を経て、まず労働局から認可(Labor Certification)を取得する必要があります。しかし、この申請方法では、労働局での審査の後に移民局へ申請できるまでに4カ月(すべての手続きが最短期間で終了したと仮定)はかかります。雇用を通しての永住権の取得は、第 1~4優先にカテゴリーが分けられています。そして、多くの申請者は、第2、 あるいは第3優先のカテゴリーに区分されます。
 
ところが、あなたの場合は、日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば、取得までの期間が最も短い第1優先「多国籍企業の重役等」のカテゴリーに含まれる可能性があります。この第1優先枠には、ほかに、極めて高度な技術、能力、知識を保持する者、著名な教授、研究者があります。第1優先での申請の場合、労働局での審査を省くことができます。
 
以下のことを証明することによって、第1優先カテゴリーでの申請が可能です。
 
①日本(海外)にある会社と米国にある会社が親子関係にあること
これには、米国にある会社の50%以上の株式を、日本(海外)にある会社が直接的に所有している必要があります。また、米国の50%以上の株主が、日本(海外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
 
②米国の会社で、部長、あるいは、重役クラス等の管理職に就いていること
移民局では、一般的にこれに関して、申請者の下に部下がいるというだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることを要求しています。つまり、申請者を頂点として2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。
 
③Lビザ、あるいは、Eビザにて、米国に入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年以上、部長、あるいは重役クラス等の管理職として日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)、または、その関連会社において勤務していたこと
 
④米国での役職が短期のものではな く、永久的なものであること
これには米国の会社が、日本(海外)の親会社より永住者を送らなければならない程の規模であるとみなされなければならず、それには相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。
 
これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接、移民局へ申請書を提出することができます。

第1優先枠は取得まで約1年Eビザに切り替え申請も可

申請には、米国と日本(海外)にある会社の両方から、決算報告書、会社設立に関する書類等、会社が実際に存在し、経営を行っていることを示す書類が必要となります。もし会社の経営状態が芳しくなく、 従業員が少ない場合などは、たとえ前記の条件を満たしていても、移民局から永住権の認可を受けることは困難になります。
 
申請時期に関しては、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国 で1年以上働いている必要はありません。また、この場合、永住権は、申請者の配偶者、および21歳未満(永住権取得時)の子供も同時に取得することができます。移民局への申請に関しては、Immigration Petition for Alien Worker(I-140)および、I-485を同時に提出します。提出後、約2~3カ月で就労許可が下り、また一時渡航許可が下りるので、就労を継続できるだけでなく、米国外への出入国も可能です。なお、この方法で最終的に永住権を取得できるまでには、現在約1年弱を要しています。
 
もし第1優先での申請条件を満たさない場合、いったんEビザに切り替えた後、第2優先、あるいは第3優先で永住権を申請する方法も考えられます。
 
(2010年9月1日号掲載)

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