アメリカ駐在員ビザ(Lビザ)を取り巻く環境

アメリカ駐在員ビザ(Lビザ)とは

主に日本の会社がアメリカにある関連会社に社員を駐在させるために使うビザ。

  • 有効期間「L-1Aビザ」:最初3年、その後2年(最長7年) 「L-1Bビザ」:最初3年、その後2年(最長5年)
  • 更新の可否「L-1Aビザ」:最初の3年終了後、2年の延長を2回 「L-1Bビザ」:最初の3年終了後、2年の延長を1回
  • 取得にかかる時間:2~3カ月(プレミアム申請は約2週間)
  • 費用概算(弁護士費用含む):5000ドル~
  • 配偶者の扱い:「L-2ビザ」
  • 配偶者の労働可否:可(労働許可証の取得後)

 

「Lビザ」の種類と「Eビザ」との違い

「Lビザ」は企業内転勤者用のビザで、国外からアメリカ国内の関連会社への異動に使われることから「駐在ビザ」「駐在員ビザ」などと呼ばれています。主な申請条件は次の通りです。
 
①異動元の会社で過去3年間のうちに継続的に最低1年勤務した。
②異動元で重役・管理職、または専門知識を有する者として勤務し、異動先(駐在先)でも継続して重役・管理職(「L-1Aビザ」)、または専門知識を有する者(「L-1Bビザ」)として勤務する予定である。
③(設立から1年未満の子会社、支店を除き)異動先の会社でビジネス活動の実態がある。
 
「H-1Bビザ」とは異なり、「L-1Aビザ」「L-1Bビザ」とも大卒でなければならないなどの学歴の制約はルール上ありません。しかし、高卒以下の学歴の場合は、それを補う職務経験などが必要です。
 
よく「Eビザ」との違いが分からないという声を聞きますが、「Lビザ」は現存している会社間での異動を円滑にするためのものであるのに対し、「Eビザ」はアメリカへの多額の投資と雇用創出を奨励するためのもので、そもそもの趣旨は異なります。とは言え、会社は「Lビザ」取得の要件となる支店や子会社をアメリカで拡張・設立するために、必然的に(日本側から)設備投資や買収の形で出資・投資をすることがあります。すると、「Lビザ」と同時に「Eビザ」の取得要件も満たせる場合があり、「Lビザ」が却下されても「Eビザ」で再申請したら取得できたという話もあります。また、日本人の「Eビザ」投資家が経営する会社に、業務上不可欠な職員(Essential Employee)を「E-2ビザ」で赴任させることができますが、この職員は投資をする必要はありませんので、その意味では業務に関する専門知識で貢献する者に発給される「L-1Bビザ」と似ていると言えます。

アメリカの「Lビザ」を取り巻く環境

移民法専門の関谷直樹弁護士によると、以前から「Lビザ」の審査は非常に厳しく、トランプ政権の発足によって申請・取得の難易度が変化したということはないと言います。さらに同弁護士は、「組織全般、業務内容、決算報告書などの会社全体像を鑑みて重役・管理職の実態や専門知識の有無などが精査され、高い頻度で追加書類等を要求されます」と現状を語っています。
 
会社によっては、実を伴わない名前だけの「重役」や「管理職」を置いていますが、これは額面通りには認められませんし、移民局が業務内容や専門知識の重要性を理解できるよう上手に説明しなければ申請は却下されます。実際、「Lビザ」の却下理由の多くは、「組織に中身が伴わない」「実際の部下がいない」「肩書きと実務が不一致」といったものが多く、会社の規模が小さくなればなるほど、組織表や業務内容をより詳細に申告しなければならないケースが多いようです。
 
最後に関谷弁護士は、「『L』ビザ自体は、国際的に大きくビジネス展開する会社を念頭に置いているため、規模の小さい会社は厳しく見られる傾向にあります」と話しています。

「Lビザ」の申請方法とアメリカ永住権

「Lビザ」の新規申請プロセスは、
①スポンサー会社がI-129(申請請願書)を移民局に提出
②承認後、アメリカ大使館でビザ申請
③ビザ取得後入国
というのが一般的です。異動先企業の収入が年間2500万ドル以上、従業員数が1千人以上、または過去1年間の「Lビザ」請願書の承認数が10件以上の大規模企業であれば、複数の職員をまとめて承認してもらう「ブランケット」という特別プロセスを利用できます。
 
「L-1Aビザ」は重役や管理職を対象に発給されるビザであり、取得後、優先順位が高い「EB-1」で永住権を申請することが可能です。中でも「EB-1C」という特別のカテゴリーでは、多国籍企業の重役・管理職を対象に優先的に永住権が発給されるため、該当者は利用する価値大です。このカテゴリーでは労働省の許可(「Labor Certification」)の取得は不要で、会社側の請願書である「I-140」と同時に永住権申請書「I-485」を提出できるため、待ち時間はありません。
 
これに対し「L-1Bビザ」保持者は永住権申請において労働省の許可が必要で、通常、優先順位が低い「EB-3」となるため、「I-140」の提出後しばらく待ち時間が生じる可能性があります。こうした状況と、「L-1Bビザ」は有効期間が「L-1Aビザ」の7年に比べて5年と短かいため、関谷弁護士は早い時点での永住権申請開始を勧めています。
 
(取材協力:関谷直樹弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)
 
※この記事は2017年9月1日現在の情報です。掲載後、内容が変更・改正される場合がありますので、最新情報や個別の事例につきましては移民法弁護士にお問い合わせください。


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。

 

アメリカ子会社に派遣中、会社が合併 このまま就労は続けられる?

吉原 今日子 弁護士

Q:大学で経営学を学び、日本の商社で6年勤務した後、L-1(派遣)ビザで日本の会社よりアメリカの子会社に派遣され働いています。現在、この子会社がアメリカの別会社と、9月を目処に合併する計画が進んでいます。合併や吸収によって会社の形態が変わった場合、ビザ保持者にどのような影響が出るのでしょうか?

A:ビザの種類(主にLビザ、Eビザ)によっては、会社の合併や吸収などで、申請書類の変更、一部申請手続きのやり直し、もしくはビザ自体が無効になる可能性があります。
 
LビザとEビザの取得条件の一つは、日本の親会社が、米国の子会社の株を50%以上保有していることです。米国の子会社の合併後も、親会社が50%以上の株保有率を維持している場合、ビザ申請書類に記入した内容の変更を移民局に提出すれば、ビザを取り直す必要はありません。しかし、親会社の株保有率が50%以下になった場合は、LビザとEビザの取得条件を満たさなくなり、ビザは無効になります。その結果、米国での滞在、および労働許可を失ってしまいます。
 
この問題を事前に防ぐために、現在お持ちのビザをほかのビザに切り替える手続きを、できるだけ早く始めてください。その場合、H-1Bビザなど、会社の国籍に影響されない労働ビザの取得をおすすめします。

他のビザ、または永住権へ会社の合併前に申請開始

H-1Bビザ取得のためのおおまかな条件は、①申請者が学士号以上、またはそれに匹敵する職務経験を保持している、②申請する業種は、学士号以上の学歴、専門知識が要求されるものである、③その学士号、あるいは職歴が、職務において活かされるものであることです。
 
H-1Bビザの申請受付は、4月1日より開始しています。ビザ発給数が年間支給枠に達した時点で、受け付けは締め切られます。4月20日現在、6万5000の枠に対し、2万5000の申請が届いているという状況ですので、今ならH-1Bビザ申請は十分可能です。ビザ取得後、仕事を開始できるのは10月1日以降になります。
 
仮に、Lビザ、またはEビザの有効期間が、今年の12月まであるとします。会社の合併が9月30日にあり、日本の親会社の株保有率が50%以下になるとします。H-1Bビザの申請がビザの切り替えのタイミングに合わない(例えば、申請前に枠が埋まり、受け付けが締め切られてしまった)場合、会社の合併後、たとえLビザ、またはEビザの有効期間が残っていたとしてもそのビザは無効になりますので、米国から出国しなければなりません。しかし、9月30日以前にH-1Bビザの申請が移民局に受理され、10月1日までに認可される、もしくはケースが審査中の場合は、そのまま滞在することが可能です。H-1Bビザに切り替える際、職務内容や給料設定など、細かな条件を満たす必要がありますので、早目に会社の担当者と検討されることをおすすめします。
 
また上記以外に、LビザまたはEビザが失効する前に、永住権申請を始める方法も考えられます。今回のケースでは、大学を卒業し、スポンサーである雇用主の業務に関連した職務に5年以上従事しているので、修士号を持つ人と同等の知識があるとみなされ、「EB-2」というカテゴリーで永住権が申請できます。会社の形態に変更があった場合でも、申請上の影響はありません。
 
雇用を通しての永住権申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。第1ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査-PERMと呼ばれるもの)です。米国内にあなたが従事する職務を遂行できる米国人がいないことを証明する審査です。第2ステップ(I-140)では、主にスポンサーである会社が、労働局で定められた給料をあなたに払うことができるかの審査です。最後に第3ステップ(I-485)として、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。EB-2の場合、第2、第3ステップを同時に行うことができます。I-485の申請をすると、「労働許可書(EAD)」と「渡航許可書(AP)」が与えられ、この時点でビザは必要なくなります。
 
あなたの場合、直ちに永住権申請の手続きを始め、9月の合併完了までの間は、そのままL-1ビザ保持者として会社の業務に携わり、合併終了後までに、EADとAPを取得できれば、そのほかのビザを申請する必要はありません。
 
ビザの種類選択、申請時期の判断、取得条件の理解は、複雑な米国移民法の知識が要求されると同時に、長年の経験が求められます。判断を誤ると、あなたが築き上げた米国での生活を失うことになりかねません。一日でも早く移民法専門の弁護士に相談することをおすすめします。
 
(2012年5月16日号掲載)

駐在員ビザL、申請条件と種類・滞在期間

Q:日本からの派遣社員が対象、管理職の経験が必要

A:Lビザは、1970年4月7日、アメリカからの輸出の拡大や海外市場での競争力の向上などを目的に、非移民ビザのカテゴリーの1つとして設けられました。国務省の手引きによると、L-1ビザを申請するには以下の条件を満たす必要があります。
 
1)申請者(会社)と派遣される社員が雇用されていた会社は、親会社、支店、合併会社、子会社など同系の企業にある
2)派遣される社員は、重役、管理職クラス、または特殊技能を持つ者であり、アメリカでも同じポジションに就くことになっている
3)申請者(会社)と派遣される社員とは雇用関係にある
4)会社側はアメリカ以外に最低1カ国で事業を運営している
5)派遣される社員は過去3年間に最低1年間、申請者(会社)側で管理職として働いた経験がある
6)派遣された社員が支店などを設立するために派遣される場合、新たな条件が課される
7)派遣される社員が、以前にLもしくはHビザで滞在していた場合、または特殊な交換訪問者としてJビザで滞在していた場合、再入国に際する制限を受けていない(滞在できる期間を満期で帰国し、再びLビザを取って入国する場合、LやHビザだった者は1年間、Jビザだった者は2年間、アメリカ国外にいるという条件を満たす必要がある)
 
Lビザ保持者は“Dual Intent”が許可されています。これはアメリカに永住するか、しないか、両方の意志を同時に持ってもよいということです。ですから、Lビザ保持者は母国に居住地を持っている必要はありません。また以前に、またはこれからグリーンカードの申請をするからといって、Lビザ取得の可否が左右されることはありません。
 
Lビザの資格条件に見合うためには、日本で過去3年間に、少なくとも1年間は管理職レベルの業務に携わっていなければなりません。一般的に、派遣される前にアメリカに訪問していた期間が、Lビザ取得を妨げるということはありませんが、アメリカにいた期間が、Lビザを再申請する際に課される“1年間の米国外滞在”という条件の対象にはなりません。また、パートタイムで雇用されている社員は申請条件を満たしません。
 
派遣される社員が本社の関連会社を設立する目的でアメリカへ来る場合、アメリカでのオフィスの場所が確保されていることが必要です。これを証明するためには、Lビザ申請書を移民局へ提出する時に、オフィススペースの賃貸契約書を添付することになります。

L-1Aは最長連続7年、L-1Bなら5年まで

新しく関連会社を設立する目的以外で一社員がLビザを申請する場合、ビザの有効期限は通常3年未満、申請期間分が許可されます。関連会社設立が目的の場合は、有効期限が1年以下になります。重役・管理職クラスのL-1Aの場合、最長で連続して7年まで延長できます。特殊技能者のL-1Bは、最長で連続して5年までの延長が可能です。その後、再びLまたはHのステータスで入国するには、米国外に1年間滞在しなければなりません。もっと長く米国に滞在する予定なら、Eビザや、多国籍企業の重役・管理職としてグリーンカードを申請することを考慮した方がよいでしょう。
 
L-1保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子供はL-2ビザに相当します。L-2保持者はアメリカで学校に通うことができます。カリフォルニア州の多くの公立学校などでは、L-2のステータスで1年以上滞在していれば、州住民と同額で授業を受けることができます。L-2の学生は今通っている学校に、F-1の学生と異なる扱いになっているか、聞いてみるとよいでしょう。また、L-1の配偶者は労働許可を取って合法的に働くことができます。
 
アメリカに入国する際は、Lビザを提示し、白(緑ではない)の入国・出国記録書(I-94カード)に記入してください。さらに、I-94カードに記された日付以降、アメリカに滞在しないよう気をつけてください。この日付は時々、ビザの有効期限日と異なっていることがあります。もし、自分が間違ったカテゴリーで入国を許可されていた場合、ロサンゼルスのダウンタウンにあるDeferred Inspections (300 N. Los Angeles St.)へ出向き、間違いを正すよう要求することができます。また、I-94カードに記された日付以降もアメリカに滞在する予定であれば、許可された滞在期間が過ぎる前に、滞在延長を移民局に申し込むことが重要です。
 
(2007年7月16日号掲載)

●関連記事
アメリカ・ビザの基礎知識とその種類
特別企画:アメリカでワーキングホリデーのように働ける!「J-1ビザインターンシップ」徹底解説

「アメリカ・ビザ徹底解説」のコンテンツ