外国税クレジット(Foreign Tax Credit)

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アメリカだけでなく日本や諸外国で所得がある方は、アメリカ以外の所得税をどこで支払うべきなのでしょうか。アメリカでは「居住者は全世界所得を申告しないといけない」、という方針を取っています。一方、「その国で発生した所得はその国で納めなければならない」、という国も多くあります。
アメリカで全世界所得を申告し、一方でその国で得た所得税をその国で支払った場合、二重課税になります。これを避けるために外国税クレジットの申請という手段があります。これは、外国で支払った所得税の額をアメリカで支払う所得税額から差し引けるものです。

外国税クレジットの申請資格

◉アメリカ市民:全世界所得を申告しなければならず、全ての市民が申請可能です
 
◉非市民の居住者:全世界所得を申告する必要があり、居住者とは下記の①か②のいずれかを満たす人です
①永住権を所有している
②就労ビザを持ち、2013年度31日以上アメリカに滞在し、且つ過去3年間で合計183日以上滞在している
②は、2013年は滞在期間の1分の1、2012年は3分の1、そして2011年は6分の1を滞在日数の1日とみなします。例えば2013年に100日滞在、2012年に360日滞在、2011年に120日滞在したとすると、100/1+360/3+120/6=240となり、過去3年間での滞在日数が240日とみなされ、居住者として扱われます。
 
◉非居住者:居住者の条件を満たさない人は、非居住者とされるため、海外所得を申請する必要がありません。海外で発生した所得税を海外で納め、その所得をアメリカで申告しなければならない場合のみ申告可能です。

外国税クレジットの上限

「(海外所得÷全世界所得)×アメリカの税額」で求められます。アメリカの税額とは、全世界所得に対してアメリカの税率を掛け合わせて算出された税額です。表にアメリカの税率と海外の税率の高低に対する課税の有無のを記したので参照下さい。
海外税率がアメリカの税率より低い場合、その差額をアメリカで支払う必要があり、高い場合には支払う必要はありません。
 
実際の数字で見てみましょう。海外所得が3万ドルでアメリカ所得が7万ドルの場合、全世界所得は10万ドルです。全世界所得に対して、アメリカの税金を4万ドル支払い、海外所得3万ドルに対し、①1万ドル②1万5000ドル支払ったケースで説明します。
まず、「(海外所得÷全世界所得)×アメリカの税金」がクレジットの上限となるので、このケースでは、(3万÷10万)×4万=1万2000ドルが上限です。従って、①の1万ドルを支払った場合、アメリカでは海外所得に対して2000ドル(1万2000ドル-1万ドル)納税します。②の1万5000ドルを支払った場合は、-3000ドル(1万2000ドル-1万5000ドル)と上限を3000ドル超えるため、損をしたように感じますが、この余剰分は過去1年に遡って(Carry back)、または将来10年に繰り越して(Carry forward)使用することが可能です。

カリフォルニア州の事情

カリフォルニア州では、外国税クレジットは認められていません。なぜなら、これはアメリカ政府と各国が租税条約で定めた取り決めであって、州と交わされたものではないからです。
カリフォルニア州在住の納税者は、全世界の所得を申告する義務があるので、海外所得に対しては、アメリカと海外の国両国から課税されます。
  
(2014年1月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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