税務上特殊な扱いをする経費

税務上特殊な扱いをする経費

管理上の経費と税務上の経費が必ずしも一致するとは限りません。その結果、自社で管理している収支と税理士の計算した収支に違いが生じることが多くあります。では、その違いはどのような理由で発生するのでしょうか。
これは、管理上は経費計上可能と判断されても、税務上では制限の設けられている経費が多くあるからです。そこで、それらの特殊な扱いをする経費を事前に把握していれば、ある程度正確な課税所得の把握も可能となり、確定申告時期に税理士から上がってきた数字に目をくらますことも少なくなるのではないでしょうか。

管理と税務の違い

会計には管理上の数字と税務上の数字の2つが存在します。前者は文字通り管理目的なので、自社で決めたルールに従って売上・経費計上します。上場企業は国などが定めた会計基準での管理が必要であるの加え、それにのっとっているかどうか年に一度の監査が入るので、より厳しく管理しなければなりません。
それに対し後者は確定申告書作成用の数字なので、税法にのっとっていなければなりません。後で詳しく説明しますが、車代、交際費、贈答品に関する数字は管理上の数字と異なってきます。従って、会社から出たお金だから経費計上可能というわけではなく、ある一定の基準に沿って申告書を作成しなければなりません。

税法上の経費

アメリカ国税庁(IRS)では、経費とは「通常必要な支出」となっており、通常とは「その事業で一般的に受け入れられているもの」、必要とは「その事業で有用かつ妥当な支出」と定義しています。これを大原則として、経費の扱い方を説明していきます。

車代

車関連の経費の計上方法には、実費(Actual)方式と標準(Standard)方式の2種類があります。前者は実際にかかったガソリン代や保険料などに対して、全体の走行距離に占めるビジネス目的の走行距離の割合を掛け合わせたものが経費計上されます。100%商用目的の社用車であれば、もちろん全て経費計上が可能です。
対して後者は、ビジネス目的の走行距離に毎年変動する率(2014年度は1マイル当たり56セント)を掛けた数字を経費計上します。保険や修理費用などは含まれていると考えられます。ただし、減価償却も実費の一種と考えられるため、資産計上している車に対しては標準方式が適用されません。
両者とも通勤は商用目的とみなされないので注意が必要です。駐在の方で通勤費用を出す場合などは、追加の給与として処理し、グロスアップ(GrossUp)するのが一般的です。グロスアップとは給与の手取り額(交通費支給額)を決めてから給与税を逆算する方法です。

交際費

ビジネス目的の飲食代といった交際費は実費の50%が経費計上可能です。旅行時の食事手当や、イベントなどの飲食代もこの50%と同様のルールが適用されるので、しっかりと分けて記帳しておくと調査の際に対応しやすくなるでしょう。

会員費

自社の経営に関係する場合のみ経費計上可能です。ゴルフコースのメンバーシップ、ジムの会費などは商用目的であっても経費計上できません。

贈答品

客先周りや時候の挨拶の贈答品は日本社会では事業と切っても切り離せないものではないでしょうか。しかし、このような贈答品には、1年間で各顧客に対して25ドルまでという上限が設けられています。
 
(2014年8月16日号掲載)

交通費の税務処理

車社会のアメリカ。ビジネス目的で社用車もしくは個人の車を利用することは日常的にあります。こうした自動車関連の支出は、税務上どのように扱えばよいのでしょうか?
仕事目的で自動車を使用した場合、かかった経費をそのまま実費として計上するだけではなく、標準(Standard)または実費(Actual)のどちらかの方法で控除を利用できます。

標準(Standard)

標準ではIRS(国税庁)が提示する標準マイルレート(Standard Mileage Rate)で控除額を算出します。このレートは毎年制定され、2017年は走行距離1マイルあたり53.5セントです。この方法では、細かな自動車関連の支出記録を回避でき、駐車料金と有料道路通行料も控除の対象になります。しかし、実費(次項目参照)は対象外です。また、以下の場合は標準を選択できません。
・納税者が車を所有またはリースしていない。
・車をタクシーなどとして使用している。
・仕事用として使用実態のある車が5台以上ある。

実費(Actual)

実費を選択すれば、ガソリン代/オイル代/減価償却費/リース料/保険料/オートクラブ会費/修理費/タイヤ代/車のパーツ代/登録費用/駐車料金/ガレージ代/有料道路通行料を控除に含めることができます。なお、雇用主から提供された車に関しては、実費でのみ控除を利用できます。

仕事利用と私的利用

1台の車を仕事用と私用で使い、控除を利用する場合、仕事と私用での支出をマイル数を基に分けなければなりません。例えば、あなたが年間2万マイル運転し、1万2000マイルを仕事で、残りの8000マイルを私用で使用したとすると、前述した実費項目に含まれる支出総額の60%(1万2000マイル÷2万マイル)の控除を利用できます。しかし、会社から交通費を支給されているなら対象外です。

車の購入

会社員が支払った車のローンの利子は控除の対象となりませんが、自営業者がローンを支払った場合は控除の対象となります。自営業者が車を購入する際、会社で購入するべきか個人で購入するべきか相談を受けることがあります。確かに会社で購入すると個人の支出を抑えられますが、保険料が高くなることもあるので、どちらを選択するかは全体像を見て決断しましょう。また、車の購入時に払った消費税は、減価償却を計算する際、車の小売価格に加算され、控除の対象となります。

罰金

駐車違反や速度違反で支払った罰金は控除の対象となりません。

通勤

アメリカには通勤手当てという考えがありません。しかし、以下の目的で車を使用し、会社から交通費を支給されない場合は控除を利用できます。
・仕事を2つ以上持ち、それらの間を移動する。
・自宅から客先などへ直行または直帰する。
納税者は控除を標準と実費の両方で計算し、大きい額の方を選べます。毎年選択できますが、標準から実費に変更する際の減価償却計算方法には細かい決まりがあるので、詳細は税理士にお問い合わせください。
 
(2017年4月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

 
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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