アメリカで子どもを育てる親のための「学校Q&A」

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日本で生まれ育った親が、仕事などの理由で渡米し、子育てをする場合、子どもの年齢にかかわらずもっとも頭を悩ませるのが教育問題でしょう。子どもが現地校に行き始めれば、さまざまな問題に対応しなければならないことが予想されます。またアメリカでも子どもの日本語を維持したいと考えているなら、気になるのが日本語補習校です。本特集では、アメリカの教育制度の基本情報をはじめ、現地校や日本語補習校で起こりうる問題をQ&A形式でご紹介します。

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2018年4月16日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

01. 各州で異なるアメリカの学校制度

日米の教育制度の違い

アメリカの学校教育制度の特徴は、各州に教育行政が委ねられていることです。公立の学校は、管轄の統一学校区(Unified School District)または学校区(School District)によって運営され、カリキュラムや教科書、休校日などが決められています。
 
義務教育期間も州で変わり、日本では、満6歳の誕生日を迎えた後の最初の4月1日から、満15歳の誕生日の後の最初の3月31日までの合計9年間ですが、カリフォルニア州は、6歳から18歳までの12年間が義務教育期間となります。公立小学校のほとんどが、就学前クラスであるキンダーガーテン(K)を併設しているので、5歳から就学が可能です。また、2012年からトランジショナル・キンダーガーテン(TK)というプログラムがスタートし、4歳で、その年の9月2日〜12月2日の間に5歳になる児童であれば、就学が認められています。公立学校は、入学できる学校が住所によって決められており、地域によって安全面も変わり、学校ごとに成績にも差があるため、まずは居住地を選ぶことが重要な課題となります。
 
アメリカの教育制度に詳しい教育コンサルタントの原田誠さんは、アメリカと日本の教育の概念の違いは、就学前教育にあると言います。「日本でいう幼稚園であるプリスクール(通常2〜5歳を対象。多くを私立校が占める)やTKなどは、義務教育が始まるキンダーガーテンの準備プログラムに当たります。友達を作るなど社会性を伸ばすことはもちろんですが、何よりもアカデミックな面が重視されています。アルファベットを習ったり、本を読んだり、社会や理科などの教科を学ぶクラスを設けているところもあり、キンダーガーテンで学ぶ準備を整えることが、来たる小、中、高での成果、そして大学進学にもつながっていくため、アメリカでは非常に重要な期間だと考えられています」。

02. 幅広い選択肢から選べる多彩な学校の種類

学校は、大別して公立学校と私立学校に分かれますが、公立学校にもいくつか種類があります。「チャーター・スクール(Charter School)」は、教師、保護者、地域のリーダー、企業などの民間が、自主的に開設し運営する学校です。授業料は無料で、従来の公立校に課せられた制限を受けない自由な教育を望む人たちが提唱して設立されました(JBA〈南カリフォルニア日系企業協会〉「カリフォルニア子女教育ハンドブック」2018年3月改訂より)。ほかにも数学や科学など、ある分野に特化したプログラムに力を入れたり、障がい児と健常児のインクルージョン教育を行ったりなど、さまざまな形態を持つ「マグネット・スクール(Magnet School)」や、学習に問題を抱える生徒や中途退学者などを対象にした「オルタナティブ・スクール(Alternative School)」もあります。そして、日本では認められていないホームスクーリングもあり、さまざまな事情から通学できない子どもが家庭で学ぶことができるのも、アメリカならではの教育制度と言えるでしょう。
 
公立学校と私立学校の大きな違いは学費ですが、アメリカは私立学校の質が高く、より多様な教育プログラムを提供している学校が多くあります。「少人数制指導が受けられ、生徒一人一人に合った方法で教えています。特に駐在で渡米したお子さんで、限られた年数で最大限の成果を上げたいのであれば、学校を選ぶ際の選択肢の一つに入れてもよいと思います(原田さん)」。

03. 充実したプログラムやサポート

学校区の教育方針や学校によって異なるものの、アメリカの公立学校には、日本では考えられないような充実したプログラムやサポートがたくさんあります。「ELD(English Language Development)」は、外国人の児童・生徒を対象にした英語教育プログラムです。カリフォルニア州の公立校では、英語を母国語としない児童・生徒に対し、入学してから30日以内にCELDTテスト(California English Language Development Test)という英語言語力発達テストを受ける必要があり、この結果によって学校が、ELDプログラム参加が必要かどうかを判断します(同「カリフォルニア子女教育ハンドブック」より)。
 
また、算数や芸術など、さまざまな分野において、特別な能力を持っている生徒をさらに伸ばすためのギフテッド教育(Gifted Education)というプログラムや、学習面において何らかの理由で遅れている生徒をサポートする特別支援学級(Special Education)などもあります。「ギフテッドクラスに入る生徒が、全ての面において能力に秀でているわけではありません。例えば、発達障害があっても、ある教科で素晴らしい能力を発揮する生徒もいます。ギフテッド教育は、その生徒の才能や能力を伸ばす教育、特別支援学級は、上手く能力を発揮できない生徒に合ったプランを提供し、足りない部分を補ってあげる教育と理解するとよいでしょう(原田さん)」。
 
また障がいがあったり、特別の支援が必要な生徒の場合は、「個別学習プログラム(IEP:Individualized Education Program)」があり、教師や専門家によるチームで対応してくれます。さらに、生徒の学習面や生活面において何か問題があれば「アセスメント」と呼ばれる査定を依頼することが可能な学校もあります。「『アセスメント』とは他者からの評価で、保護者や教師などにインタビューを行い、生徒の問題点を明確にし、それをどうサポートしていくかを具現化していくものです。アメリカの教育制度の良い点は柔軟性があること。つまり多くの選択肢があるのです。(原田さん)」。
 
プログラムやサポートの有無、そして内容は、学校区によってまったく違うため、まずは管轄の学校区のウェブサイトをチェックしたり、可能であれば足を運んで情報収集をするとよいでしょう。次ページから、アメリカの現地校に通う子どもを持つ親が知っておきたいことをQ&A形式で紹介します。

カリフォルニア州の学校への入学・編入手続き
 
必要書類一覧
◆入学願書
◆親・保護者の身分証明書
◆出生日を証明するもの。1通(出生証明書、パスポート)
◆住所を証明するもの。2通(運転免許証、公共料金請求書、不動産税納税書、賃貸契約書、車両保険書、住宅保険、政府機関からの手紙)
◆健康診断書、口腔衛生診断書
◆予防接種:DTP(ジフテリア、破傷風、百日咳三種混合)、ポリオ、MMR(はしか、おたふく風邪、風疹)、B型肝炎、水疱瘡、ツベルクリン(アメリカ内において入学前1年以内の結核テスト結果または医師による証明書)
 
※学校区によって必要書類は異なります。管轄の学校区に連絡して確認しましょう。
出典元:外務省 諸外国・地域の学校情報 州・地域の詳細情報(2016年12月更新)

アメリカの学校に行く子どもを持つ親の必読書!
 
「カリフォルニア子女教育ハンドブック(2018年3月改訂)」は、JBA(南カリフォルニア日系企業協会)が作成した学校ガイドです。カリフォルニア州の教育事情から学校選び、入学手続き、日米のカリキュラムの違い、ボランティア活動にいたるまでを詳しく説明しています。https://www.jba.org/view/post/0/1681364から無料でダウンロードできます。

【取材協力】

原田誠さん

原田誠さん
MACS Career & Education代表
675 N. 1st St. #1240, San Jose
☎408-786-5359
Web: www.macscareer.com

04. アメリカで子どもを育てる親のためのQ&A【現地校編】

日本とは法律も習慣も異なるアメリカ。子どもが学校に行き始めると、学習面、生活面、精神面など、さまざまな面において問題が発生することもあるでしょう。また、アメリカに住んでいても、子どもの日本語を維持したいと考える親のために、日本語で日本の教育が受けられる補習校や学習塾などの情報、そして現地校との両立など、気になる問題を教育や各分野の専門家に伺いました。

【取材協力(五十音順)】

荒川龍也さん

荒川龍也さん
カリフォルニア州公認カウンセラー(マリッジ&ファミリーセラピスト)
24050 Madison St. #210, Torrance
☎424-254-8823
Web: http://japanlatorrancecounseling.com

下田佳子さん

下田佳子さん
優塾LA塾頭
706 Silver Spur Rd. # 200, Rolling Hills Estates
☎310-541-9787
Web: www.youjuku.com

船津徹さん

船津徹さん
TLC for Kids代表
3142 Pacific Coast Hwy. #201, Torrance
☎424-399-6699
Web: tlcforkidsla.utss.jp

ロン・長谷川さん

ロン・長谷川さん
インターセック株式会社代表
578 Washington Blvd. #835, Marina Del Rey
☎310-350-8567

学校生活・学習面

回答:船津徹さん

Q. 英語ができない子どもが、現地校の授業についていけるか不安です。

A. まず、すでに子どもが行く学校が決まっているのであれば、どんな英語教育サポートがあるかを聞いてみましょう。一般的に、ELD(English Language Development)プログラムには、教科学習である国語、算数、理科、社会などの通常の授業の時間を割いて、英語教育のクラスを受ける「プルアウト(Pull Out)」と、授業の中でサポートを受ける「プッシュイン(Push In)」の2つのスタイルがあり、学校によって異なります。
 
子どもが小学校低学年で、英語が全くできないのであれば「プルアウト」の方がよいですが、中学生ならある程度基礎があるので「プッシュイン」の方が、授業での遅れが出ません。もし学校に「プルアウト」しかない場合でも、教科学習の遅れができるだけ出ないようにしたいと相談してみましょう。
 
なお、通常、TK(トランジショナル・キンダーガーテン)やキンダーガーテンには、ELDプログラムを提供しているところはありません。

Q. 子どもの英語力を考慮して、一学年落として入学させた方がよいでしょうか?

A. 子どもの年齢にもよりますが、アメリカの教育制度において、学校での学習内容のレベルがぐっと上がる年齢があります。「9歳の壁」とも言われ、授業の内容が抽象的になってくるので、高い読解力が必要になるのです。英語力がないのに、歴史や環境問題を習うのはとても大変です。もし小学3〜4年生で現地校に通い始めるのなら、学校やお子さんとも話し合い、学年を落として編入させることを検討してもよいと思います。
 
小学校低学年なら、まずは英語のサポートを重視しましょう。日本で生まれ育った子どもにとって、いきなり英語の環境に入れられるのは、泳げない子どもを毎日6時間プールに突っ込んでいるようなもの。まずは泳ぎ方=英語の読み書きを教える必要があります。特にリーディングの訓練は大切で、アメリカでは”Read by 9″といって、小学1〜3年生までにたくさん本を読むように推奨しています。また、英語を身に付けるのが遅くなればなるほど、教科の遅れにもつながり、いったん勉強嫌いになってしまうと取り返すのは大変になってしまいます。中学生以上になると、ライティングの難易度も上がり、教科の内容もさらに難しくなりますので、個々の英語力にもよりますが、英語と教科ごとにそれぞれサポートが必要になってくるでしょう。

Q. 英語ができないため、子どもが担任とコミュニケーションが取れていないようです。

A. 子どもが先生と上手く話ができないようなら、保護者が先生と仲良くなりましょう。日本では考えられないかもしれませんが、先生と友達になるくらいの気持ちで、もし英語が苦手でも、まずは挨拶から始めて、徐々にコミュニケーションを密にしていけばよいのです。子どもの年齢が低ければ、子どもが先生との関係を打破するのは難しいです。学校でより適切な教育を期待するのであれば、保護者が代わりに、先生に子どもの英語力や性格、家庭環境などを分かってもらうように努めましょう。保護者を通して間接的に先生から子どもへのアテンションを増やすことで、先生と保護者の関係性ができ、先生も子どもの学校での様子を教えてくれるようになります。今は特に問題がなくても、先生と話す機会をたくさん持つように意識してください。アメリカでは保護者から先生にクリスマスギフトなどを贈ることがありますが、この習慣も大いに利用しましょう。先生と保護者の関係が良いに越したことはありません。

Q. 子どもが学校で一人で過ごすことが多いようです。いじめられているのでしょうか。

A. まず、子どもが英語が分からないために一人でいるのか、それとも本当にいじめがあるのかを先生や学校に確認してください。子どもの性格にもよりますが、単純に周囲の環境に溶け込めずにいるのに「無視されている」「いじめられている」と、保護者が先走って苦情を言ってしまうと、結果として先生や学校との関係が悪くなってしまう可能性もあります。
 
日本から来たばかりの子どもが、現地校での友達と関係がうまく築けない理由の一つに、文化の違いや人との距離の取り方があります。例えば、日本のプロレスごっこは、日本でなら仲の良い子ども同士で手加減しながら遊んでいるつもりでも、アメリカ人にとっては非常に不愉快な行動で、侮辱された、暴力を振るわれたと思われることもあります。悪気がなくても、これがきっかけでいじめられたりすることもあるかもしれません。日本とは感覚が違う異文化であるということを子どもに教えることも、保護者の務めです。
 
ただし、暴力を振るわれた、いじめが実際にあると分かった場合は、相手の子どもや保護者と直接話すことは避けて、先生や校長先生を通して問題を解決してもらうようにしましょう。

Q. 子どもがアメリカの学校になじむために何かコツや方法はありますか?

A. 子どもに勉強以外で何か強みがあることです。もちろん勉強でもいいのですが、ただ成績がいいというよりは、例えばそろばんができる、暗算が得意などがいいです。勉強が得意な子どもは、アメリカで英語力が伴わないために、反対に自信を失くしてしまうこともあり、這い上がっていくのに時間がかかります。可能であれば、小さい頃から何か一つ勉強以外の強みを伸ばしてあげてください。ピアノやバレエなどの習い事、スポーツなど言語を超えた強みがあると、異文化適応が早いです。世界中どこに行っても現地に溶け込みやすいでしょう。例えば、日本でサッカーをやっていれば、英語力が乏しくてもチームで活躍することは可能です。技術のある子どもなら、チームメイトやコーチ、周りの保護者からの評価も高く、それが子どもに自信を与えてくれます。人はできると思うようになればさらに努力するもの。また特技で培った自信は一生心に残ります。大人も同様で、特技があるとアメリカになじみやすいです。保護者も、料理やスポーツなど、何らかの特技を通じて、学校でボランティア活動を行なったりすると、子どももうれしいと思います。

Q. 子どもの通う学校でボランティア活動をしたいけれど、英語に自信がありません。

A. アメリカの学校は、予算の関係もあり常に人手不足です。先生は1人で20〜30人の生徒を見なければならず、まさに猫の手も借りたいほどの状況です。アメリカでは、学校での保護者の関わりをとても重視していて、保護者の関与はいつでも大歓迎というスタンスです。学校でできるボランティア活動も、教室に入っての先生のアシスタントや、図書館での本の修繕、遠足のつきそい、イベントの手伝いなど、非常に多彩ですので、例え英語力に自信がなくても、自分に何ができるのかを先生と相談してみてください。学校との関わりが増えれば、休み時間に子どもが何をしているか、誰と仲がよいのか、ランチは誰と食べているかなど、学校でどう過ごしているのか分かり安心するはずです。またほかの日本人の保護者と仲良くなるチャンスでもあります。学校だけでなく生活の情報交換をしたり、ネットワークを構築したりするのは、アメリカで生活するにおいて、とても重要なことです。

回答:ロン・長谷川さん

Q. アメリカの中学・高校はドラッグ問題が深刻と聞いています。

A. 通常、各学校のカリキュラムにドラッグ予防プログラムが組み込まれており、タバコやアルコールと同様に、その使用や所持を規制し罰則を設けています。ドラッグはキャンパス内での生徒間のやりとりがあるほか、登下校時あるいはランチタイムなどに外部の売人から売られることがあるので注意が必要です。学校で、ドラッグ、タバコ、アルコール類の所持・使用が見つかった場合、その生徒の対応や過去の問題歴から処分・罰則が決まり科せられます。軽ければ説諭、数日間の自宅謹慎、重いものでは青少年法廷(Juvenile Court)での審判で1年未満のドラッグプログラムの受講命令や放校・退学命令が出るなどさまざまです。中学生になったら、家庭でドラッグについて話し合う機会を持った方がよいですが、保護者もドラッグに関する知識や予防策などを知っておきましょう。

Q. もし子どもがドラッグに手を出しているのを見つけたらどうすればよいでしょうか。

A. 子どもの日常の言動に気を配り、特に今までと違った友達と付き合い始めたり、夜の外出が増えたり、小遣いをせびるようになったりしたら注意。もし部屋の中でドラッグを見つけたら、子どもと向き合って話し合いましょう。ここで大事なのは、感情的になって怒鳴ったり叱ったりせずに、家族として心配していると愛情を持って伝え、一緒に問題を乗り越えようという姿勢を見せることです。
 
※アメリカの青少年ドラッグ問題については、2017年10月16日号特集「知っておきたい、アメリカの『飲酒運転』と『ドラッグ』最新事情」で詳しく紹介しています。

精神面・コミュニケーション

回答:荒川龍也さん
※以下は、あくまでも一般的な回答です。適切な治療法は個々のケースによって変わるため、正規の教育を受けた心理カウンセラーに直接相談することをお勧めします。

Q. 渡米してから、子どもが常にイライラしています。どう対応したらよいでしょうか。

A. 親の仕事の都合でアメリカに来た子どもたちが受けるストレスは、大人が思うより深刻な場合があります。言葉に加え文化の違いにぶち当たるため、ストレスが発生して当然なのです。あまりに強いストレスがかかると適応障害になってしまう可能性もあります。適応障害には、不安、うつ、反抗期のような態度や不相応な行動を取る、またこれらが混合になって症状が出ることもあります。日本では問題がなかったのに、アメリカに来てから態度が変わり、それが数カ月続くようであれば要注意。うつや不安の場合、大人と子どもでは症状が違い、大人は落ち込みますが、子どもはイライラして反抗的になることがあります。気を付けてほしいのは、インターネットの情報や人の話を鵜呑みにして、保護者が勝手に診断してしまわないこと。子どもの年齢によっては反抗期に入っている場合もあります。
 
日本人は体に不調をきたすまでストレスを溜めてしまう傾向にありますが、早めに対処するのが一番です。適応障害の時点なら治療もしやすいのですが、不安やうつの症状が、不安障害やうつ病になってしまうと、治療にも時間がかかります。
 
家庭でも子どものメンタルをサポートする方法はあります。胃腸は「第二の脳」とも呼ばれ、精神面にも大きく影響しています。食生活に気を遣い、胃腸を整える発酵食品を多く取り入れることで、精神を安定させる効果が期待できます。また渡米直後は、日本と同じような環境を作ってあげることも有効で、本を読むのが好きなら日系の書店に出かける、好きな本を買うなど、居心地の良い時間や空間を作ることで新しい環境にも適応しやすくなります。

Q. アメリカ生活にようやく慣れましたが、子どもが自分は日本人なのかアメリカ人なのか悩んでいるようです。

A. 10代に入ると、人間は自分は何者なのかを模索するようになります。いわゆるアイデンティティーの確立への第一歩なのですが、アメリカにいると、これにさらに人種や文化の違いが加わって、日本の同年代の子どもよりも思い悩むことが多くなる可能性が高いです。就学前や小学校低学年ならうまく適合できますが、小学校高学年から高校生になると、無意識下で悩み、それが蓄積してしまうと精神面に悪影響を及ぼすこともあるので、子どもと話し合い、必要であれば心理カウンセラーに相談しましょう。

Q. 就学を控えていますが、子どもの様子からADHDではないかと心配しています。

A. 日本でもADHD(注意欠陥・多動性障害)という言葉をよく聞くようになりました。インターネットには、症状から簡易診断まで載っていますが、注意力がない、落ち着きがないというだけではADHDとは限りません。特に小さい子どもは判断基準が難しく、またPTSD(心的外傷後ストレス障害)や不安障害も同様の症状を持つため、素人判断は避け、子ども専門の経験を重ねた正規心理カウンセラーに相談することをお勧めします。ADHDを放っておくと、うつやほかの精神障害を発症してしまうことが多々あります。
 
もしADHDと診断されたら、学校のスクールサイコロジスト(またはそれに代わる専門家)に相談しましょう。アメリカには支援が必要な生徒のために「個別学習プログラム(IEP:Individualized Education Program)」や障がい児童それぞれに合った学習プランを提供する「504プラン」などがあり、日本に比べると学校でも非常に手厚いメンタルサポートを受けることが可能です。

Q. 子どもの英語力が上がり、最近親子でコミュニケーションが取れません。

A. アメリカ生活が長くなると、親子の英語力に差が出て、うまくコミュニケーションが取れないだけでなく、子どもが親を見下したり、親が子どもに頼り過ぎたりと関係が不健全になることがあります。親の第一言語が日本語なら、それを家庭内では絶対に維持するなど、家庭のルールを決めておきましょう。家庭のルールが守れないと、社会でのルールも守れません。ただし、家庭のルールが厳し過ぎたり甘過ぎると、かえって精神面でストレスが発生するので、子どもの年齢や性格に合ったバランスのよいルールを作ることが大切です。10代なら、子どもを信用して、ある程度自由を与え、自分で考えさせるようにしてください。

Q. 子どもをしつけで叩くことは、アメリカでは虐待になってしまうのでしょうか?

A. しつけという意味で、子どもに暴力を振るうのは、大抵の場合虐待です。アメリカに来た時点で、保護者には意識を変えてもらわないといけません。学校の先生やバスの運転手、スクールカウンセラーは、虐待の疑いがあった場合、児童相談所に報告義務があるため、些細なことで手を上げても大問題になることがあります。ちなみにお尻を叩くのも、心理学の研究では、子どもの後々の精神面に悪影響が出るという結果が報告されています。
 
子どもに罰を与える場合は、例えばゲーム時間を短くする、家の手伝いをさせるなどがよいでしょう。身体的虐待のほかにも、言葉による精神的虐待もあります。夫婦仲が悪く、子どもの前で大声で喧嘩したり罵詈雑言を浴びせたりするのは禁物です。子どもに良い影響はありません。また、罰として「ご飯抜き」というのも育児放棄・怠慢になることがあるので気を付けてください。

Q. 子どもが学校に行きたがらず休みがちです。どうしたらよいでしょうか。

A. アメリカでは、義務教育期間において法律的に不登校は認められておらず、もし子どもが不登校になり、学校や学校区とのミーティングを重ねても解決しないと、最悪の場合、保護者に罰金を科せられることもあります。不登校になった時点で、学校や学校区によって変わるものの、スクールカウンセラーやスクールサイコロジスト、心理カウンセラーと話し合います。場合によっては、ホームスクーリングに移行することもできます。

Q. アメリカに慣れていく子どもと反対に、親の方がストレスで参ってしまいそうです。

A. 子どもの年齢にもよりますが、柔軟な子どもに比べると、実は大人の方が適応するのが大変です。生活の基盤を整えながら、仕事、家事、育児など、日々やることはたくさんある上に、言葉や文化の違う土地でストレスは溜まる一方。子どもよりも、親に適応障害の症状が出ることも少なくありません。大人の場合、日本人として育っていれば当たり前のこと、例えば時間を守る、丁寧なサービスといった小さなことを、知らず知らずのうちにアメリカでも期待してしまいます。それが叶わない時、ストレスは徐々に、しかし確実に溜まって、いつか爆発してしまうのです。ストレスを感じた時、なぜ自分がそんな反応や行動をしてしまうのかを考えていくことが大切で、可能であればカウンセリングを受けるのが良いのですが、できなければ日記をつけることをお勧めします。誰にも見せないと決めて、頭に浮かんだこと、思いのたけをどんどん綴っていくのです。カウンセリングには及ばないものの、思いを吐露することで、かなり精神向上効果があります。

05. アメリカで子どもを育てる親のためのQ&A【日本語補習校編】

海外には日本語を学ぶための在外教育施設が多くあります。中でもロサンゼルスはその数が多く、全日制の学校から、文科省・外務省支援の日本語補習校、学習塾まで形態もさまざま。基本的には、アメリカにいても日本語を維持するため、または日本に帰っても進学できる学習内容を修めることを目的に、日本語の教科書を使って勉強していくところが多いようです。
 
※本特集では日本語で日本の教育制度に沿った授業が受けられる補習校、学習塾、日本語学校を含めた在外教育施設を「日本語補習校」と表記しています。

回答:下田佳子さん

Q. 学校を選ぶ際は、何を基準にすればよいでしょうか?

A. アメリカで、日本語を学ぶための補習校や学習塾などを選ぶ際に大切なことは、子どもの日本語力をどのくらい高めたいかという保護者の教育方針に尽きます。例えば、渡米から数年で帰国が決まっている場合、全日制の日本語学校を選ぶ人もいれば、逆に英語教育に焦点をあてて現地校だけに行かせる人もいます。また帰国のタイミングや子どもの年齢、受験時期に合わせ、補習校を変えたりするケースもあります。
 
ロサンゼルスには、多くの学校がありますが、全日制をはじめ、平日の現地校が終わった後に授業を行うところや、または土曜日だけ授業があるところなど、選択肢がたくさんあるので、日本語を維持するには非常に恵まれた環境と言えます。
 
子どもの年齢や保護者の教育指針にもよるのですが、渡米したばかりなら、まずは英語をしっかり学んで現地校に慣れることが先決だと思います。一般的に、授業についていき、宿題ができるようになるまでは約1年ほどかかります。余裕が出てきた時点で、小中学生なら日本語による教科学習を、高校生ならすでに日本語力の基礎はあるので、そのまま日本またはアメリカの大学受験を念頭に試験対策を考えるのがよいでしょう。
 
また、学習塾なら現地校の宿題や課題のサポートをしてくれるところもあります。集団授業で学ぶのか、少人数制がよいのか、子どもと話し合い、できれば事前に学校を見学して学校や授業の雰囲気を知っておくとよいと思います。

Q. 日本の大学受験を考えているのですが、専門の学習塾などに通った方がよいですか?

A. アメリカから日本の大学受験を検討しているのなら、やはり受験対策に力を入れた補習校や学習塾などに通ったほうがよいでしょう。大学の情報収集や各校の試験対策はもちろん、日本の学習塾と提携しているところもあるので、非常に有効です。
 
日本の高校や大学を受験する場合、帰国子女枠や留学生枠を使うかどうかも検討しておくべきです。例えば、幼稚園からアメリカで過ごし、公立中学入学で日本に帰国したある生徒は、英語の方が強いままだったのですが、高校受験は一般入試だったのでとても苦労していました。帰国時期がある程度予測できるのであれば、それを見越してどう日本語を維持していくか対策を考える必要があります。

Q. 現地校との両立を可能にするために、どんなサポートをしたらよいのでしょうか?

A. 現地校も日本語を学ぶための補習校や学習塾なども、家庭でのサポートが非常に重要です。小学校低学年であれば、現地校の宿題にはぜひ親子で取り組んでください。ただ、小学校高学年になると、エッセイなども書かなくてはなりませんので、家庭のサポートだけでは難しくなります。その時点で、現地の家庭教師や学習塾を利用してもよいと思います。
 
日本語補習校でも、国語は小学4年生から覚えなければならない漢字がぐっと難しくなってなかなか覚えられなかったり、ほかの教科の内容も難易度が上がるので、もしついていけないと思ったら、子どもの状況や能力に合わせ、例えば授業時間の少ないところや、宿題のサポートがあるところに変える決断をしてもよいでしょう。途切れずに少しでも日本語に触れるだけでも、後に大きな違いが出てきます。
 
また学校によってはたくさん宿題が出るところがありますが、日本語だから子どもでもできる、問題はないはずだと思わずに、できるだけ保護者もサポートしてあげてください。英語も日本語も、家庭のサポートもあってこそ、学習への意欲が格段に高まり、成果も上がります。宿題ができなくなる、学校に行きたがらなくなるといった子どものヘルプサインを見逃さずに、アメリカで学ぶ子どもの心に寄り添うサポートが大事です。

Q. 日本語補習校に通うメリットとデメリットを教えてください。

A. 多くの日本語補習校が、日本語での教科学習に加え、日本の伝統行事を積極的に行っています。日本の文化に触れることで「文化的な言葉」を覚えることができるのですが、これは日本語を学ぶ際にとても大切なのです。例えば、国語の教科書を読んでいても「花いちもんめ」や「黒板」といった語彙は、日本の文化を知らなければ意味や概念が理解できません。また節分や運動会など、日本の学校で行われている年中行事を通して、日本人としてのアイデンティティーの部分を成長させていくことができるのも、日本語補習校に通うメリットだと思います。
 
デメリットは、子どもにもよるのですが、そもそも言語が苦手だと、日本語と英語の2つの言語を学ぶのは大変です。ご家庭の事情もあると思いますが、この先、どちらをメインにするかを考えて、保護者が学ぶ日英語の割合を決めてあげるとよいかもしれません。

ロサンゼルス近郊で日本語教育が受けられる補習校・学習塾・日本語学校リスト(五十音順)

あさひ学園
対象学年:幼稚部、小学部、中学部、高等部
所在地:オレンジ、サンゲーブル、サンタモニカ、トーランス
Web: www.asahigakuen.com
 
インフィニティ・エデュケーション・インスティテュート
対象:小学1年~高校3年生
所在地:トーランス
☎310-891-0808
 
エルベエデュケーション
対象:幼児~中学生
所在地:トーランス
 
オレンジ郡日本語学校
対象学年:幼稚部~高等部
所在地:アナハイム
 
オレンジコースト学園
対象:3歳~高校生
所在地:ハンティントンビーチ
Web: www.orangecoastgakuen.org
 
GATE現地校学習塾
対象:小学1年~高校3年
所在地:アーバイン、ラグナヒルズ
Web: www.gate4math.com
 
三育東西学園
対象学年:幼稚部~高校1年生
所在地:ガーデナ、コスタメサ、ローリングヒルズ
Web: www.sanikutozai.org
 
聖愛学院補習校
対象学年:幼稚部(3、4、5歳クラス)、小学部、中学部
所在地:ロミータ
Web: www.seiaiusa.com
 
TLC for Kids
対象:4歳~中学生(少人数制グループレッスン)
※個人レッスンも可
所在地:トーランス
Web: tlcforkidsla.utss.jp
 
西大和学園カリフォルニア校・平日校
対象:プレ年少(2歳6カ月以上)~中学3年生
所在地:ロミータ
西大和学園カリフォルニア校・補習校
対象:幼稚園年中~中学3年生
所在地:アーバイン、パロスバーデス、ロミータ
Web: www.nacus.org
 
日本語学園協同システム
対象学年:小学部、中学部、高等学部
所在地:サンバレー、パサデナ、ラグナヒルズ、ロサンゼルス
Web: kyodosystem.org
 
ポラリス学院
対象学年:幼稚部、小学部、中学部、高等部
所在地:ロサンゼルス
 
MKラボ
対象:0歳~中学生
所在地:ロミータ
Web: www.mklab.us
 
モンテッソーリ国際学園
全日制幼稚部、初等科
対象:2~6歳
アフタースクールプログラム(日本語学科、芸術学科等)
対象:5~12歳
所在地:サンタアナ
Web: www.monteintel.org
 
ロングビーチ日本語学校
対象:5歳~高校生初等科
所在地:ロングビーチ
Web: http://lbjls.org
 
優塾
対象:幼稚園年長~高校3年生(12年生)
所在地:アーバイン、ウエストロサンゼルス、トーランス、パサデナ、ローリングヒルズ
Web: www.youjuku.com

※本リストは、ロサンゼルス・オレンジ郡の代表的な日本語補習校、学習塾、日本語学校を掲載しています。特定の学校をライトハウスが推薦・保証するものではありません。また日本の義務教育期間児童を対象にしているため幼稚園児のみを受け入れる学校は掲載していません。
(ライトハウス・ロサンゼルス版 2018年4月16日号掲載)
海外に暮らす学生のための「日本の大学への進学&留学ガイド」サイト

「アメリカでの教育」のコンテンツ