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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

120) イノベーション・マインド

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
イノベーションを合言葉に!


「優等生」の低落

2009年3月期決算で、日本経済の「優等生」たちがことごとく赤字を発表しています。まず、大手家電メーカー9社が三菱電機を除きいずれも赤字決算、合計すると2兆2000億円という途方もない赤字額でした。日立製作所7873億、パナソニック3789億、東芝3435億という、一社ごとの数字もハンパじゃない。真打ちクラスの優等生、トヨタも大赤字。営業赤字4500億円(71年ぶり)、最終赤字3500億円(59年ぶり)という、厳しい結果です。




本当の理由は

これらの厳しい状況を伝えるニュース報道はいずれも「世界同時不況」を震源として経済が減速したことを理由にしていますが、私は同意できません。もちろん、経済環境が逆風であることによる経営の厳しさは現実にあります。しかし、環境が悪いから業績が悪化した、というのではなく、もっと深いところに「本当の理由」があると私は考えています。

では、各企業のマネジメントの悪さが原因でしょうか。各企業は「もっとうまく」「もっと賢く」経営すれば、赤字にはならずに済んだのでしょうか。私は違うと思います。本当の理由は、もっと根深いところにあって、それは、企業のマネジメント手法に賞味期限が来てしまっていることではないでしょうか。実のところ、経営のイノベーションは、ここ100年、何一つなかったのですから。



カギは適応力

「最も強く、最も賢いものではなく、最も環境に適応したものだけが生き残る」。チャールズ・ダーウィンの言葉です。企業にも当てはまります。適応力が21世紀の企業の競争優位を決定づけます。では、適応力はどうすれば生まれ、磨くことができるのか。私はコンサルティングでトップに、「組織形態をトップダウンからボトムアップへ、システム重視からヒューマン・パワー重視へ、(組織サイズを)ビッグからスモールへ」という3つの提案をします。いずれも「適応力を高める」目的のためです。足腰を柔軟に、現場感覚を鋭敏に保つ、環境適応力を高める。そして、「イノベーション・マインドを組織内全員にインストールする」。



一部署の仕事ではない

イノベーションといえば、製品開発部門や研究部門の専管事項のように思われがちですが、社員一人ひとりの日常業務にするのです。ゴアテックスで有名なW・L・ゴアは、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)を応用した製品(テフロンなど)を始め、人工心臓、人工血管などの医療製品、さらにはエリクサー・ギター弦といったものまで広いラインアップを誇ります。エリクサー弦は私も愛用していますが、通常の弦より3倍長持ちします。おかげで全米のギター弦市場で、トップの座を保持しています。このエリクサー、もともとは人工心臓の開発担当者が、自分のマウンテンバイクのワイヤーをゴアテックスの構成ポリマーでコーティングしたことから生まれました。ポリマーがワイヤーの防塵に役立つことがわかった彼はギター弦への応用を着想しました。彼の勤務するオフィスの近辺には10の工場が集まっているので、研究開発のツテを求め、最初はみんなボランティアで「ギター弦プロジェクト」に参加したのでした。これも、ゴア全社風土としての「イノベーション・マインド」があったからこそ、実現したことでしょう。


寝てもさめてもイノベーション

社内風土や評価基準、日頃の会話の中にイノベーションを混じらせる、という工夫をしましょう。私のクライアントでは、次代を担う若手プロジェクトのテーマをずばり「イノベーション」とし、ウェブやビジネス書などを参照してベスト・プラクティスを収集・分析しています。もちろん、「すべては過去の出来事であり、そのまま自社に当てはまるわけではない。大切なことは、適応力の研究」という大前提を共有した上での作業です。プロジェクトは社長直轄で、メンバーに大きな自由裁量を渡されています。

優秀な日本企業のこと、きっと素晴らしい適応力を発揮し、目の覚めるようなイノベーションを生み出してくれることでしょう。また、それが次代の経済の牽引力になるはず。期待しています!



(2009年6月16日号掲載)