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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

123)利益の源泉、コア

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
自社のコアは何ですか?


コアという概念

どんな商売でも、利益を生み出す源泉があります。それを「コア」と呼びます。そのコアを実現させるに必要なシステムやノウハウが「コアスキル」。

ちなみに、製品・サービスはコアではありません。事例で話しましょう(2009年6月放映NHK『特報首都圏』を参考にしました)。

LAを拠点とするファストファッションのFOREVER21。世界10カ国に460店舗(09年現在)を展開しています。日本ではこの5月に東京・表参道へ出店し、大変な人気を博しています。いつ見ても長い行列ができていて、勢いを感じます。この店の商品でスカート、ベルト、キャミソール、Tシャツ、アクセサリー、バッグと、全身コーディネートしても、トータル1万円かからない安さ。「LA発の最先端ファッションが低価格で!」という売りが多くの女性たち(親娘で来店している姿もあります)を魅了しているのでしょう。では、FOREVER21のコアとコアスキルについて解説してみます。



FOREVER21のコアとコアスキル

LAの本部は、常時全米にある2千社を超える業者とネットワークを構築し、連絡を取り合っています。例えば水曜日に企画会議をして、ある業者からTシャツについて複数提案を受けたとします。5日後の月曜日には、複数の提案の中から1つにGOサインが出て、数千枚の発注がなされます。業者は集中的に生産し、その週末の金曜日には世界中に向けて発送されます。日本には水曜に到着するので、企画から2週間で店頭に並ぶわけです。日本の表参道店では、閉店後の午後8時、アメリカから派遣されたアメリカ人スタッフが届いた段ボールを開封します。何が入っているのかはスタッフにも開けてみないとわかりません。よくあるように、「商品がなくなったから補充する」のではなく、「常に新製品の入れ替え、入れ替えでディスプレイを作っていく」方式なのです。

FOREVER21のコアは「安カワイイ流行」です。安くて、かわいくて、流行の先端のファッションアイテムを提供する。これが利益の源泉です。そしてそのコアを実現するコアスキルが、全米2千社超の業者とのネットワーク、スピーディーなデリバリーシステム、「FOREVER21」というブランドの知名度、店頭ディスプレイノウハウ。FOREVER21の成功を横目で見て、真似しようとしても、コアスキルが重層であればあるほど、真似しにくい。コアスキルには、そういう「参入障壁」の役割もします。



脅威に感じた2社の対応の差

さて、FOREVER21の成功を見た日本企業2社。A社は、FOREVER21が取引している業者1社と提携することにしました。まだ発注量が300枚と小ロットのため、工場の空き時間の生産で、納期はFOREVER21ほど早くありませんが、それでも従来に比べれば15日短縮でき、企画から45日で店頭に商品を並べることができると、担当役員の顔はほころんでいます。この場合、A社はコアをFOREVER21と同じことを目指しているが、コアスキルはFOREVER21ほどの重層的なものを持っていません。持っていないどころか、FOREVER21から一部拝借しているわけです。

もう1社はPARCO。ここは昔ながらのファッション発信地としての矜持があります。ただ、5月のFOREVER21の開店効果がじわじわと効いてきていて、具体策が急務でした。そこで店長は、「土俵をずらす」、いわゆる、「戦わない」方法(戦略は戦いを略すと書きます)をとりました。

PARCOはFOREVER21と違うコアを設定、「高いデザイン力と個性」です。コアスキルとして、高名なデザイナー川久保玲さんや個性的な若手デザイナー福本マリィさんを起用しました。結果FOREVER21とは違う客層が支持してくれ、手応えある売上をあげることに成功しました。

さて、A社とPARCO、どちらが持続可能な商売でしょうか。間違いなくPARCOで、理由は独自のコアとコアスキルです。

オリジナルなコアを考え、PARCOの積み上げてきた歴史あればこそ可能な川久保玲さんや新進気鋭の若手デザイナーの起用を可能にしたコアスキル。さて、皆さんの会社のコアとコアスキルは何でしょう?



(2009年8月01日号掲載)