働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

126) 顧客参加型市場

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
「お客様にも参加」してもらいましょう。


ネットが実現したもの

10年前、私は「お祭り型市場」というコンセプトを創りました。
1999年当時は、インターネットが企業や生活者・顧客に浸透しつつあって、日本では2月にiモードがサービス開始、同時にネットバンキング、待ち受けの壁紙、着メロの有料サービスも始まりました。iモードの加入者数は、当時毎月100万人というからすごい数字です。サービス開始半年後の8月には遂に1千万人を突破しました。

インターネット環境は未だダイヤルアップが主流でしたが、「ブロードバンド」という言葉が広がり、一部先進的な生活者はネットに常時接続という環境を始めていました。ネットが生活者の日常生活に入り込み始めた環境の中で、ビジネスは大きく変革されると考えました。

伝統的市場では企業側から生活者・顧客へ一方的にメッセージを投げかけ、市場が形成されていました。しかし、ネットが浸透した新しい市場は、企業と生活者・顧客の境界線が消え、生活者・顧客も参加して市場を作り上げていく。そこでは生活者・顧客も製品開発やマーケティングに参加します。みんなでおみこしを担ぐイメージから、「お祭り型市場」と名づけたのです。

あれから10年、私の読み通り、着実に顧客参加型市場を活かした新しいビジネスモデルが生まれてきつつあります。


東京ガールズコレクション

東京ガールズコレクション(以下、TGC)はまさにその典型です。
09年9月5日、代々木競技場第一体育館に集まった10代から20代の女の子2万3千人は、ただファッションショーを観るために来ているのではありません。買いに来ているのです。通常のショーであれば電源を切らなければならないケータイはバンバン使用OK。それもそのはず。主催はgirlswalkerという女性ファッション携帯向け通販サイトを運営している会社です。その場で写メを撮り、その場で注文。通常、ファッションショーで披露される服は「素敵だけど、いつ・どこで着るの?」というタイプの、いわば非日常的なアイテムです。しかし、TGCの服は、リアル・クローズ、現実に着る服なのです。

TGCに集まった女の子たち(フィンランドや台湾からも参加)は、その場でショーを楽しみ、その場で買い物し、その場で意見交換し、その場にいるハッピーを楽しみ、その場に行ったことを余韻として楽しみ続けます。


リアル×ネットの販売パワー

ここでの企業の役割は、「場の提供」です。ざっと計算しても、入場料を平均7千円として、2万3千人だと入場料だけで1億6100万円。これに、服の購買がついてきます。すごいビジネスモデルですね。

最新の服を着たあこがれのモデルが、目の前にいる。しかも、そのモデルは伝統的なファッションモデルとは違い、「ワタシたちでも届くかも」的、「限りなくフツーに近い」モデルです。こうして刺激された彼女たちの購買欲は、その場でケータイを通じて買うことによって秒速で満たされます。「リアルなショー」×「ネットの商品販売」×「自分たちも参加してショーの一部になっている満足感」×「最新の服を友達の誰より早く見た優越感」…などなど、女の子たちの気持ちをおいしくくすぐってくれます。これがTGC人気を支えています。


クックパッド

このレシピサイトは、すべて一般生活者からの投稿で成り立っています。ユーザーからすれば、素人という点で親しみがわくし、「難しくなさそう」「ワタシでもできる」というのがウケています。「アマチュアの、アマチュアによる、アマチュアのための」サイトだからこそ、企業にとっては大きな価値をもたらします。たとえば、食品会社が、いまひとつブレイクしない自社製品をクックパッドに依頼して、その製品を使ったレシピのコンクールを打ちます。

生活者はレシピ研究のため、その製品をスーパーで購入します(マーケティング的には、ターゲットへ購買させることに成功)。レシピを考えるために製品を見つめ、使い、食べているうち、おのずと情もわいてきます。コンクールの結果(応募総数、投稿者属性、レシピ)と、投稿によるネットコミ効果も得られます。効果が数値で測定可能なので、費用投資効果が明確なマーケティングと言えます。



阪本さんとJOYWOWメンバーの最新著書が発売中!
『JOYWOW「あり方」の教科書』


(2009年10月16日号掲載)