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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

154) 学び合い

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。社員教育のヒントに!


教えない先生

福島県郡山市立赤木小学校で は、「学び合い」という新しい教 育メソッドを取り入れていま す。「学び合い」は、上越教育大 学の西川純教授が提唱する授業 の方法です。

同教授の著書に次のように紹 介されています(*)。
・ 先生は課題を与え、子どもは 子ども同士で教え合い、学び合う。
・ 子どもはお互いに教え合うた めに、立ち歩くことが推奨されている。
・ 子どもはそれぞれのペースで 授業内容を学んでいける。
・ 子どもはコミュニケーション し合う時間が多い。
・ わからない子は、わかるまで 友達に聞きにいくことができ る。


赤木小学校全校ではなく、坂 内先生と古田先生の受け持つ3 年生と5年生の2クラスだけ ですが、理科と算数の授業を見 学する機会に恵まれました。私 は企業研修をすることもあるの で、「教える立場」として、衝撃 を受けました。まず、先生が教 えないのです。先生は「見てい る」だけ。


理解度を可視化する

3年生理科のテーマは「光」。 まず、先生が考えるテーマを話 します。「○○時まで、頭の中が すっきりするまで徹底的に話 しなさい。始め!」すると、子ど もたちは席を立ち、グループに なって、互いに頭をくっつけ話 し合い、考え始めます。黒板や 携帯用ホワイトボードに図を書 き込みながら、ああでもない、 こうでもないと考えます。床に 座って。机も、椅子も、まったく 関係ない混沌状態になります。

小学校は、全科目を1人の担 任が見るから、このクラスは今 やっている理科も、算数も、国 語も、体育も、音楽も、すべて学 び合いスタイルで授業をやって います。

教室の壁に、算数の単元(「図 形がわかる」「長い長さがわか る」など)がヨコに、児童の名前 がタテに書かれた表が貼って あります。「ちゃんと理解でき ている」「ちょっと不安」「全然 わからない」の3段階のマーク シールがあって、児童が自分で 単元について自己評価します。 つまり、理解度を可視化してい るのです。普通、「わからない」 とか「ちょっと不安」というの はカッコ悪かったりして、なか なかみんなにはオープンにでき ないものですが、それができる 「互いの信頼」が構築されてい るのです。

そう、学び合いの授業のキー ワードは「信頼」です(*)。そ して、「理解できている」児童が 「全然わからない」児童に教え るのです。互いに信頼があるか らこそ、できるのです。


企業でも使える

講演、企業研修、自社主催 ワークショップなどで私も「教 える」立場に多く立ちます。し かし、一人一人の「理解度」につ いては把握が難しいのも事実 です。グループで何かやるのは ディスカッションくらいで、「学 び合う」というのはやったこと がありません。しかし、ビジネ スとは本来、「答の見えない現実 の中で、仮説と検証の繰り返し」 です。ということは、「誰かが正 解を知っていて、それを教える」 のではなく、「皆で各自の強み を生かして学び合う」姿勢が有 効なのではないでしょうか。特 に現在のビジネス環境は、まる でサーフィンのように刻々と前 提が変わる「ビジネスサーフィ ン」。「誰も答を知らないのなら、 皆で学び合う」組織風土は理想 的です。

実は明日、講演会に招かれて いるのですが、当初予定してい たスライドによるプレゼンテー ションをやめました。「講演し ない講師」を実験的にやってみ ようと考えています。テーマは 決まっています。参加者はいず れも優秀な企業の優秀な社員ば かり。ならば、皆で学び合う場 にしてしまおう、と。

企業の教育担当者の中で、現 状の研修システムに行き詰まり を感じている方を多く見かけま す。「高度な知識労働者がモチ ベーションを高め、成果を出す ための研修のあり方」は定型の 知識を一方的に受信することか らは生まれません。

授業参観の後、職員室で坂内 先生と議論していると、先生、 熱中のあまり、休み時間が終 わって次の時限が始まったこと に気付かなかったようで、生徒 がやってきました。

「先生、次は何の時間、どうす るんですか?」。

「えっ !? 何?時間割忘れた…、 何だっけ?あ、音楽か。皆、こな いだの続き、やってて」。

「はい!」。

いいですね! *いずれもZ会寺西氏ブログよ り、許可の上引用
www.zkaiblog.com/histaff/daily/201011/12


阪本さんの新著書が9月に発売!
『共感企業〜ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)
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(2010年12月16日掲載)