働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

161) 手書きパワー

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。手で書くと脳が刺激されます。


日記と漢字書き取りの効果

私事で恐縮ですが、私は小学校3年生の担任の先生が出した宿題、「毎日日記と漢字書き取り100文字をやりなさい」を、小学校卒業するまで実行しました。3年の1学期(4月)から6年の3学期(3月)まで足掛け4年、毎日、来る日も来る日も休みなく(日曜も、クリスマスも、正月も)日記と漢字書き取りをやったのです。のべ1400日以上。担任の先生は5年生で変わりましたので、提出する必要はないのですが、「やらないと気持ち悪い」ようになってしまったのです。

さすがに中学生になって科目数も増えたのでやめましたが、「紙に書いて覚える」勉強法は大学受験勉強までずっと続けました。歴史年号、英単語、化学式など…。今や手書きは簡単なメモくらいになってしまいましたが、何か覚える時には必ず紙に手書きします。紙に筆圧かけて何かを書くと、その刺激が脳に信号として発信され、記憶の定着に役立つのではないかと仮説を立てています。

この手書きパワー、ビジネスにも有効なのではないでしょうか。


10年連続トップを支えているのは

ギャル系ファッションの聖地渋谷109。2階の一番目立つ場所に出店しているセシル・マクビーは、数ある店舗の中で10年連続トップの売上げを誇っています。何しろ月商(年商にあらず)が1億2千万円というからすごい(他店平均の7倍)。この店の売上を支えているのは、商品力もさることながら、売り場を支える販売員の接客術です。その中の1人、チーフの小杉依子さんは500人のリピーターを抱える人気スタッフ。接客が終わったらすぐ、レジへ引き返し、今帰ったばかりの顧客のレシートを再発行します。レシートに、客との対話や何が好みか、など、メモを素早く書いていく
のです。レシートの束はゴムでくくって、すべて保存してあります。専用の顧客情報ファイルにも情報はおさめられます

得意客が来店前、メールで「背中がしっかり開いている系」の服を買いたいと言ってきたら、顧客情報ファイルをチェックし、以前の購入商品はもとより、「最近妙に黒にこっている」などの嗜好をアタマに入れておきます。そして来店された時にはどんな商品をおすすめしようかと事前にアイデアをあたためておきます。これが的を射た提案になり、「私のことをわかってくれている!」というリピーター心理をくすぐるわけです。

私が注目したいのは、小杉チーフがレシートの裏に手書きでメモをしている点です。パソコンでパチパチパチと入力してもいいのでしょうが、手書きしているプロセスで、ついさきほどまでやっていた顧客との対話を思い返している。記憶は思い返す回数が多いほど脳に定着します。また、レシートにペンで書く行為が脳へのインプットをさらに強化しているはず。


手で書くからこそ未来を読める

仙台のスーパーさいちの佐藤啓二社長は1979年の開店から、毎日、手書きの「対照表」と呼んでいるノートをつけています。日付、曜日、天気、最高気温、最低気温、客数、その月の客数の累計、売上、その月の売上の累計、特記事項。

何に使うかというと、振り返りと予測です。

「天候と客数の関係は?」「曜日と売上の関係は?」。昨年との、5年前との、10年前との、20年前との比較が一目瞭然。エクセル表では一発で出てきません。出てくるのかもしれませんが、そもそもパソコンを立ち上げないと出てこない。

また、「過去に自分で書いた数字や特記事項の文字を見ると、その時のことがパッと思い浮かぶ」と言います。この対照表があるからこそ、客数・売上を読んで、ロス率を限りなくゼロに近づけることができているのです。これこそがアナログな手書きのパワーですね。手で書くからこそ、未来が読める。店頭で商品に添えるPOPはきれいなパソコン印字より手書きのほうが売上が伸びる経験を私自身何回もしています。

人の手の書いた文字は、情報量が圧倒的に多い。

手書きを、活かしましょう!

*「セシル・マクビー」の事例は『カンブリア宮殿』(2011年1月27日放送)を、「さいち」は『売れ続ける理由』(佐藤啓二、ダイヤモンド社)を参考にしました

阪本さんの新著書が発売中!
『共感企業〜ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)
http://amzn.to/bVIIkm

(2011年4月1日掲載)