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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

162) サブでとんがる!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。メインも大事ですが…。


生ビールが安いとんかつ屋

知人のとんかつ屋さんは、生ビール中ジョッキが350円。通常なら650円くらいが平均なのに、なぜか、この価格。だから、ノンアルコールビールの方が高くなってしまっています(笑)。 

理由を聞くと、「とんかつをおいしく食べてもらうためには、やっぱり生ビールを飲んでもらいたい。生ビールがすすむと、おつまみもすすむでしょ?」とのこと。なるほど。キャベツもごはんも、無料でおかわり自由です。自由といわれても、そんなにおかわりできないのですが、この店全体からにじみでてくる、「どうぞ、ゆっくりくつろいでください!自分の家のように!」という空気感の演出に大変効果的です。 

しかも、私のようなビール愛好家にとって何が哀しいかといって、生ビールが細くてスタイルいいグラスに入って出てくることほど、哀しいものはありません(笑)。そりゃ、そういうグラスに入っていたらおしゃれかもしれないけれど、やっぱ生ビールはジョッキでしょ、と思います。対照的に、大きなジョッキでドカンっと出してくれると、「この店、わかってくれてるねえ」ということで、生ビール
の姿を見ただけで、店のファンになるというものです。 ということで、今日のテーマは、「メインを引き立てるサイドに知恵を働かせる」。


牛たん屋に魚の刺身を置いた

仙台を中心に店舗展開している、牛たん炭焼きで有名な利久。役員の方と話す機会がありました。

氏が若い頃任された店は、新興住宅地のど真ん中。店の前に生コン屋さんがあって、そこの社長が、現場帰り毎日店に寄ってくれる。作業着と長靴で。

ある日、ふとその社長に「刺身、ないの?」と言われたそうです。「すみません、うち、牛た
ん屋なんで」と返せば済む話を、「そうか!」と閃いた。

「私も居酒屋出身だし、抵抗なかったんですよね。牛たんだけじゃ酒もすすまないし、食べたら終わりですからね。かといって、魚の仕入れ先なんて当時は知らないから、近所のスーパーに刺身、買いに行きましたよ。ほかのお客さんがそれ見て『オレも』となった時のために、多めに買って。だからどうしても、1人に出す量が多くなっちゃう(笑)。お客さんとしては牛たん屋で刺身注文したら、食べ切れないくらいたくさん出てくる。大喜びですよね」。

結局、刺身がサイドメニューの定番になった、牛たん屋の先駆けになったそうです。 店としても、滞在時間が長くなるし、客単価が上がりますよね。


朝食にパワーをかける

福井国際観光ホテルリバージュアケボノは、最上階の大浴場が売りです。福井出張の宿はいつもここに決めているのは、朝風呂から眺める福井市内の絶景が気持ち良いからです。

ここの売りはもう1つ。朝食がおいしい。朝風呂と朝食、どちらも朝ですね。考えてみれば、夜はたいてい誰かと会食するのでホテルは寝に帰るだけ。酔っているのでよくわからなかったりします(笑)。意識がすっきりしていて、そして帰りに「あと味」が残るのは朝に経験したことですから、朝に焦点を合わせるのは理にかなっています。リバージュの朝食は、バフェ形式(buffet style)で、小さなくぼみがたくさんある特製の大皿に、少しずつ好みのおかずを取っていきます。この和食のおかずがどれもおいしい!実家に帰ったような、そんな味なのです。

リバージュの人に聞くと、やはり戦略的に朝食に力を入れているそうです。

大阪のカレー屋さんピッコロでは、お釣りの小銭がすべて新品です。カレーはもちろんおい
しいのですが、お釣りをもらって、店を出る時、何だかトクしたような、清々しい気持ちにな
ります。

メインの主力商品だけではなく、サブ商品を用意しましょう。それも中途半端なものではなく、あと味として顧客の記憶に粘りつくようなキチンとしたものを。メインを引き立て、顧客のクチコミのネタになります。

私は自分の名刺の裏に「大吉」と自筆の筆文字を1枚ずつ書いていたことがあります。名刺交換した顧客の大吉を願ってのことですが、先日、10年ぶりに再会した方が大事そうに財布
に入れてくださっていました。この名刺についてあれこれ話すこともでき、話が盛り上がりま
した。きっと私が不在の場所でも、ネタにしてくださったのでしょう。頼もしい営業です。

阪本さんの新著書が発売中!
『共感企業〜ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)


(2011年4月16日掲載)