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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

163) 希望を届ける

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。今こそ、商人の底力を見せる時!


商人の底力

この原稿を書いているのは4月4日、震災からおよそ3週間経ちました。3日前、ようやく仙台市内の恩人Mさんと連絡がつき、電話で話せました。無事どころか、被災して17日目の3月28日からジネスに邁進されていて、商人の底力を感じたものです。

Mさんは、アパレル会社を経営しています。顧客は日本のみならず、中国、アメリカと、幅広く市場を形成してきました。自宅は海のそばだと聞いていたので、もうダメかもしれないと観念していたら、前の池が遮ってくれたのか、津波は免れました。しかし、池には2階建の家と誰かの車が刺さっていて、何ともシュールな光景とのことです。

オフィスも津波がぎりぎり手前で止まって助かった由。ガソリンがないので、自宅から会社まで徒歩で通勤しているのですが、異臭が立ち込めており、馴染みの景色が一変、「空襲に遭っ
た焼け跡みたいで、メンタルにじわじわ来る」との由。

何か不自由なことはないですか、と聞くと、「大丈夫。お客様を待たせるわけにはいかない。納期は守らなきゃならないし、取引の継続もお願いしなければならない」と、既に東京を始め、あちこちに出張しているとのことです。「経済を回転させなければ。私たち商売人が動かさないと、復興はなされない!」。力強い言葉に、胸が熱くなりました。


大津波警報の中で

実は私の住んでいる神奈川県葉山も、海のそばということで、震災当日から4日間、大津波警報が発令されていました。避難勧告が出たのです。

震災翌日(12日)、当面の生活に必要な物を買い出しに、徒歩5分のスーパーに行きました。ひょっとするとやっていないんじゃないかと思いつつ。

行くと…、普段通りやっていました!店内に入ると、通り過ぎる店員さんが、「こんにちは〜。いらっしゃいませ〜」と、いつも通りの挨拶をしてくれます。

葉山も震度5ですから、商品は棚から落ちて、大変だったでしょうに、きれいにいつも通りです。野菜も、牛乳も、パンも、冷凍食品も、水も、(この段階では)いつも通り棚に並んでいました。お惣菜コーナーでは、温かいコロッケが並んでいます。ということは、朝早く起きて、誰かがコロッケを揚げてくれたということです。レジの女性は「(温かい)コロッケは、別の袋に入れましょうね」「ポイントがたまりましたから、お買い物券と交換いたします。来年の3月までにお使いください」と、いつも通りです。

いつ津波が来るかわからない中、スーパーがいつも通りやっていて、いつも通り商品が並んでいて、いつも通りの接客をしてくれることのありがたさを感じました。レジの女性も、きっと不安に違いありません。家に残している家族がいるでしょうし、そもそもこのスーパーも海のそば、いつ津波に呑まれるかわかりません(大津波警報が出ているのですから)。そんな不安を1ミリも見せず、笑顔で接客する。


希望を届けるのが商人

舞台は変わって、ニューヨーク。21日から1週間、出張しました。ホテルの近所にDukeというデリがありました。できたてのお惣菜、パン、コーヒーなどのドリンクはもとより、パスタコーナー、お寿司コーナー、中華コーナーまであります(しかし、全部が完璧に機能している時は残念ながら、一度もありませんでしたが(笑))。

ここも、「いつ行ってもやってる」安心感がありました。深夜1時であろうと、早朝5時であろうと、かがいて、何かを売ってくれていました。この安心感。特に日本を発つ前には、物資が乏しくなっており、コンビニの棚から商品がきれいになくなっていた後に来たニューヨークなので、モノがあることのありがたさをしみじみ感じたものです。

私は、ここに商人の使命を感じました。商人の使命は、希望を届けることであると。動きを止めてはならないと。希望と言っても、何も特別なことは不要で、「日常」を淡々と行う。生活者・顧客にとっては、「あの店、やってるね」という日常こそが、商人がお届けできる最上のギフト、つまり、希望なのです。

昔、「開いてます、あなたのローソン」というコマーシャルソングがありました。このフレーズは、実商人の基本を表現した、とても良いものなのだとあらためて思いました。

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(2011年5月1日掲載)