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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

166) ツボを探せ!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。


営業マン時代の秘策

私は旭化成の建材部門で19年間営業をしました。今日はその経験から、皆さんのヒントになるコツをお話ししましょう。B2B(法人営業)の話ですが、B2C(一般顧客向けビジネス)にも共通するコツですので、ご参考になると思います。

営業は当然のことながら、「仕事を取ってくる」のが成果です。受注か、失注か、答は2つに
1つ、非常に明確な世界。旭化成はダイレクトに顧客(建設会社)へ販売することはせず、販売代理店に材料を販売するシステムでしたが、販売店営業マンと同行して受注のための作戦を練る、工事現場に足を運ぶ、という営業活動はしなければなりません。この他、販売店マネジメント(担当者のモチベーションアップ、取り扱い品目内における旭化成製品のシェアアップ、経営者の経営相談に乗る)も重要なタスクです。販売店マネジメントの経験が現在の私の経営コンサルティングの基礎を作っていますが、この稿は「受注活動」に絞ります。

営業マンの私には、一つの秘策がありました。それは、「案件のツボを探り出し、集中して押す」。

顧客に「買ってください」「うちの建材を採用してください」とただやみくもにお願いしたところで、うまくいくはずがありません。顧客にはすべて、「買う理由」があります。建築物も、ただ何となく建つことは100%なく、すべて、「建設する理由」があります。



関空開港を狙ったホテル

1994年1月。関西国際空港は日本初の24時間離発着の可能な空港として、同年9月4日オープンを目指し急ピッチで工事が進められていました。当時、私と販売店社長が狙った案件は、空港アクセスのJR沿線のある駅の駅前に建設計画中のホテルの外壁です。

建設会社は競合他社がものすごく強いコネクションを持っていて、これまではほぼ100%、負けていました。しかし、今回は設計事務所の設計段階からフォローしている案件、思い入れも強く、もちろん、受注金額も大きいので何としてでも受注したい。私と社長は、この物件のツボはどこにあるか、探りました。

まず、第一に誰でも浮かぶツボは、工期です。空港オープンを見込んでのホテル開業ですから、空港より後にオープンしたらそれだけ販売機会を失うことになります。まして、ホテルは日銭商売。1日工期が遅れるだけで現金収入が失われ、大変な事態になります。建設会社としても、工期の厳守は優先順位トップでしょう。しかし、もともと私たちの製品は工期を短縮できることがメリット。それは競合他社の製品でも同じ性能を持っています。差異化にはならない。

もっと深く物件を研究する必要があると考えた私たちは、プロジェクトチームを作りました。社長をリーダーとし、販売店施工管理者、施工者(職人)、そして参謀の私。徹底的に図面を読み込み、工程をシミュレーションした結果、この工事の「ツボ」を発見したのです。外部非常階段のある外壁面の工事が、鉄骨との接合部(取り合い)でとても複雑で難度が高いことがわかりました。通常の外壁工事の約3倍は手間とコストがかかります。


エビデンスを提出する

そこで私たちは綿密なシミュレーションの上、施工計画書を作成しました。過去に同様の施工をした実績があったので、その時の施工写真と設計図、施工図、詳細な図面を添付し、もちろん、工程日数も丁寧に記入しました。そして、一番アピールしたのは、工程日数を実現する(できる)エビデンスとなる施工管理方法と施工者のチーム編成をわかりやすくした図です。

これらの作戦が奏功し、見事受注できました。価格は競合社よりも高く見積もったはずですが、価格はこの案件のツボではない、という私たちの仮説は見事に実証されたわけです。

価格はどんな営業にもついてまわるものです。しかし、ツボは、必ず別にあります。

営業案件のツボを探るために、このケースの教訓を整理します。

(1) 案件の理由(関空開港のビジネスチャンスを逃さない工期)を探る

(2) その理由を顧客が実現するのを阻害する要因=ツボは何か探る

(3) ツボ(難度の高い施工面)をどうやって押すのか、エビデンスを示しながらプレゼンテーションする

(2011年6月16日掲載)