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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

167) 加点法でいこう!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。


経営の前提が変わる

経営の前提がコロコロ変わるビジネスサーフィンの環境に、私たちはいます。売上が落ちて来た、利益率が下がった…など、業績が下がってきた時、みんなまじめですから、「これまでより長く働こう」「もっと頑張ろう」と、「more 」の路線で考えがちです。それより有効な「前提を見直す」ことをおすすめします。

たとえば、震災で中国人留学生約4万人が日本を去ってしまいました(3月12日から4月1日までの21日間、法務省調べ)。彼らはいまや、日本のアルバイト学生の主力選手です。コンビニやスーパー、レストランの人件費の前提が変わってしまったことになります。しかもこの激変は予想がつきません。地震や原発の事故は、予想不可能です。そしてこの、「前提が変わる」時代に、プロジェクトの評価方法も、見直す必要があります。


「はやぶさ」は加点評価

「はやぶさ」プロジェクトマネージャーの川口淳一郎さんによると、「はやぶさ」プロジェクトは加点主義で評価されるようにした由です。理由は次の3つです。第1に、 はやぶさの小惑星サンプルリターンというミッションは前例がなく、ハイリスクだった。小惑星「イトカワ」に到着し、イトカワと同じ速度で飛行する「ランデブー」に成功し、イトカワにタッチダウンして地表からサンプルを採取し、地球に戻って来なければならない。

これらいずれも、まだ誰も成功したことのないミッションであり、前例がないため参考になるデータや知見はない。第2に、既に評価が定まった技術の利用ではなく、個別の技術開発、技術実証の積み重ねであり(たとえばイオンエンジンの三基同時運転)、いずれも結果がマルかバツか、どうなるかわからなかった。第3に、減点法だと、最終ゴールとなる「はやぶさが無事地球に帰還し、イトカワのサンプルを採取する」が達成されない限り、それまで積み上げたひとつひとつのミッションすべてがゼロになってしまう。全体が部分に悪影響を及ぼす。だとするなら、部分の積み上げで全体を作ろう、となりました。


ミッション達成度加点法

はやぶさのミッションを時系列的に書くと、次のようになります。

電気推進エンジン(イオンエンジン)稼働開始(3基同時運転は世界初)50点
電気推進エンジン ある期間(1千時間)稼働100点
地球スイングバイ成功(電気推進によるスイングバイは世界初)150点
(自律航法に成功して)イトカワとランデブー成功200点
イトカワの科学観測成功250点
イトカワにタッチダウンしてサンプル採取275点
カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収400点
イトカワのサンプル入手500点

「何が足りないのかを見るのではなく、何がプラスだったのかを見る」。これは、現在の「前提がコロコロ変わる」環境でプロジェクトを進めていく時、非常に参考になる評価法です。前例のない時代、社長以下、誰も「答の予測」などつかないわけですから、プロジェクトのゴールまでの道のりを分析し、それぞれにミッション・マイルストーンを置いて評価していく。途中で前提が変わったら、違うプロジェクトを立ち上げても構わない。ただし、既に達成したミッションで使えるものは使っていく。


メンバーの士気向上にも

今年JOYWOWは、電子メディア事業に進出します。このプロジェクトも、加点主義でやります。決済手段、専用サイト、広告宣伝、作家の発掘…など、ミッション・マイルストーンは見えています。しかし、これらはあくまで仮説に過ぎません。顧客がどう受け取るか、現場はどうかで検証していかねばならないのです。そして、1つのプロジェクトをミッションに分けるのは、チームのみんなの士気にも影響します。みんな自分の役割を明確にしたい。手応えが欲しい。通常、プロジェクトは色んな部署からの選抜で形成されます。きっちり固めた組織ではないこの成り立ちが、プロジェクトの柔軟性を生み出します。プロジェクトという大目的をさらに具体化し、ミッションごとに責任者を置くことで、各人のモチベーションの炎を常に燃やし続けることができるのです。

(2011年7月1日号掲載)


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