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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

169)サバイバルで大繁盛!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
サバイバル!


サバイバルな時代

震災後、「サバイバル」という言葉がビジネス界でよく聞かれるようになりました。私の周囲のビジネスパースンも、口を揃えて、「こんなに東北とサプライチェーンがつながっていたとは知らなかった」と言います。ほんの小さな部品で、金額的にも数量的にも大きな比重を占めていないのに、でもその部品一つ欠けるだけで全体が完成しない。その部品を供給してくれていた工場が被災し、ストップして困っている。お持ち帰りの商品を入れる袋の工場が被災したため、中身はあるのに、「お持ち帰り商品」を売れない…。

BCP(事業継続計画)に、真剣に取り組む企業が増えました。経営の前提がまるでサーフィンのように変わることから、ビジネスサーフィンの時代と私は言っていますが、まさにそんな感じ。ただ、「生き残る」だけではビジネスは面白くない。繁盛しなければ。そう思っていた時、面白い人に出会いました。Tさん。彼女はまさに「サバイバルクイーン」と称号をさしあげたいくらいの強者です。


ホームレスに心配されて

岩手県に生まれたTさん。ご母堂のガンの高額な治療費と父上の作ってしまった借金で、合計2500万の借金を1人で背負うことになりました。まだ20歳そこそこの時です。

ヤバい人たちがおっかない取り立てに家におしかけます。しかしTさん一歩も引かず、「来てもらっても、払えないものは払えない!」ときっぱり断言。その気風の良さにヤバい人たちも感銘を受け、以降、取り立てに来なくなったそうです。

朝は新聞配達、昼間は建築現場の事務、夜はスナックと、1日に3つの仕事をこなし、2年で借金を完済しました。

そして24歳の時、思うところあり、LAへ飛びました。もう昔の話なので時効だろうから武勇伝として紹介しますが、所持金2万円。何をするとか、お金はどうするのかなど、「着いてから考えよう」。着いたものの、お金がないので仕方ない。初日はロードサイドの安いモーテルに泊まりましたが、毎日というわけにはいかない。公園に行った。ホームレスがたくさんいる。そのうち、ホームレスのおじさんが、「若いお嬢さんがこんな所にいてはいけない」とたしなめるように言うのですが、「私にはお金がないから行く所がない」と返すと、「仕方ない、今夜だけだよ」と、自分の段ボールハウスから段ボールを分けてくれて、しかも「家」まで作ってくれた。そうこうしているうちに「何だどうした」という感じで他のホームレスたちも寄って来て、ハンバーガーなど食べ物をくれた。Tさん「これはいい生活かもしれない」と思い、ホームレスすることに決めました。


マッサージ付き!

数日後、さすがにお金を稼がねばと、99セントショップに行って道具を揃え、洗車サービスを開始することにしました。どこでやるか。映画『プリティ・ウーマン』大好きなTさんは、迷わずビバリーヒルズに決定。段ボールハウスの一部を破ってボードを作り、当時英語は全然ダメだったのでホームレス仲間に頼んで英語で看板を描いてもらいます。かわいい女の子のイラストを付け「プリティなジャパニーズガールのマッサージ付き!」。許可が要るの要らないのなんていうのは、当時のTさんには関係ありません。ビバリーヒルズに着いてすぐ、路傍で店開き。

結果は…。大繁盛です。お客さんの車のシートを倒し、そこに持参のバスタオルを敷き、Tさんは元アスリートですから、腕に覚えのマッサージを丁寧に。評判が評判を呼び、たちまち「ビバリーヒルズセレブ御用達・行列のできる洗車&マッサージ店」になってしまいました。料金は決めず、オールチップに。それが奏功し、平均客単価は100ドル以上、初日で400ドル、2日目には1千ドルを遥かに超える売り上げを達成してしまいました。もちろん不法就労はいけないことで、Tさんはこの後、きちんとビザの手続きをしています。

私たちが学びたいのは、Tさんの「地べた感覚」です。「何があっても私は生きて行く!」という強い意志と、「何かひと工夫はできないか(マッサージ付き洗車)」とアイデアをめぐらせる工夫です。

「無」から「有」を生み出す。これこそが商人の基本的発想法。ただ生きのびるだけではなく、逆風を得手に変え、繁盛させてしまうしたたかさ。今の時代、一番必要な知恵だと思います。


(2011年8月1日号掲載)


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