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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

170)読書のススメ

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
本、読んでますか?


読書会

旭化成広島営業所の頃、社内読書会をやっていました。9名という小所帯でまとまりやすかった、所長が単身赴任で所長宅を会場に使えた、という好条件が重なり、2年間毎月、実施しました。メンバー持ち回りで本を選び、全員が同じ本を読みます。本の選択の条件は、文庫本、1度選んだ作家は選ばない、小説、の3つです。ひと月かけて課題本を読みます。

読書会の日は仕事を定時で切り上げ、近所のスーパーでおつまみを割り勘で買い込み、歩いてすぐの所長宅へ行きます。ビールやお酒は所長持ち。ビールを飲みながら、本について議論します。普段自分なら絶対選ばない本や作家との出会いがあり、また、部内メンバーのものの見方や考え方をさらに深く知るいいきっかけになりました。もちろん無礼講ですし、フランクな上司たちでしたから、「上の人の意見だから」という理由では自説をひっこめたりする必要はありません。どんどんぶつかり、時には上司をやりこめる場面もありました。


営業成績が伸びた!

あくまでこれはオフタイムのことですが、面白いことに、徐々に営業成績に影響してきたのです。

私たち広島営業所が担当するエリア、中国5県と九州では経済規模で見ると、まず、九州の方が大きいのです。販売していたヘーベルの出荷量も経済規模に比例していました。ところが、読書会を始めて1年、何と、広島営業所の出荷量が九州を追い抜いたのです。

確かにチームとして1つにまとまり、メンバー間の「あり方(being)」の共有が読書会を通じて、しっかりなされていました。あり方の共有が行動(doing)を向上させたのですね。


国語力はビジネス力の土台

あれから20年。今振り返ると、もう1つ、大切な力が読書会によって身に付いて、それがビジネス力の向上につながっていたんだと思い当たります。それは国語力です。

自分の好みなどお構いなしに、毎月、有無を言わさず1冊の本を読み通し、議論を通じて深めていくことで、確実に国語力が向上しました。そして、国語の力は、ビジネスの土台なのです。プレゼンテーション、商談のやりとり、メール力、企画書作成力、社内外コミュニケーション…。


壁を階段に

東大合格者数日本一の灘校で国語教師をされた、エチ先生こと橋本武氏の教育法は型破りで、3年間、教科書を一切使わず、1冊の薄い文庫本『銀の匙』(中 勘助)を読み通すだけです。毎回手作りのプリントを用意、そこには生徒が感じるであろう疑問点への回答や、参考になる資料が書き込まれています。

「丑うしべに紅」という言葉があると、「丑紅」についての「寒の丑の日に売る紅で、口中のあれを防ぐ」という説明が書いてあります。さらに、授業では「丑」について、古代中国の暦「十二支」について解説。どんどん本文から脱線していき、横道へ、横道へと逸れていきます。「わからないことはまったくない」領域に達するまで、1冊を徹底的に味わい尽くす。このスロー・リーディングを通じ、生徒は、「わからないこと=壁」があっても、そこで立ち止まるのではなく、「どうすれば壁を階段にできるか」創意工夫する。大きく言えば、生きる力を身に付けるのです。学ぶ背骨を手に入れる。「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる」(エチ先生の言葉)。

国語力が、他の科目の背骨になっているのでしょう、それが東大合格者数日本一という結果に出ています。しかし、「結果」は、大学受験にとどまっていません。大切なことは、「壁を階段に変える」知的粘着力、知的好奇心です。エチ先生の門下生からは東大総長、最高裁事務総長、神奈川県知事など、各界のリーダーが輩出されています。これこそ、彼らがスロー・リーディングで身に付けた学ぶ背骨を実人生でも活かした証左です。 社内で読書会をやってみませんか?読書は知のパワーを上げてくれます。国語力こそが、ビジネス力の土台を築いてくれます。たとえば、情報を受け取る感性、つまり気付く力を養います。達意のメールを書いて相手の心を動かす力になります。多面的に物事を見る視点の多さをもたらします。


(2011年8月16日号掲載)


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『共感企業〜ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)
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