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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

171) パイプは人肌で築こう!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
顧客とのパイプがすべて!


お手紙タイム

福岡に来ています。今日、素敵なお話を聞いたので、皆さんにおすそ分けしたいと思います。

天神にある椒房庵(しょぼうあん)は、食品の通販をやっています。コールセンターのメンバーは毎日1時間、お客様へ手書きのお手紙を書くことが義務付けられています。最初は抵抗があったのですが、何よりもお客様からの「ありがとう」のレスポンスを戴けるようになってからは俄然、みんなのモチベーションが上がり、今では楽しみながら書いているそうです。

定型の文章があるにはあるのですが、前後に季節のことを交えたり、買って頂いた商品をどう使うかに思いを馳せたりして、書き込みます。「博多山笠の季節になって参りました…」「お誕生日のお祝い、いくつになってもうれしいものですよね」といった風に。このように、顧客とのパイプを人肌のぬくもりを感じる方法で築いてきました。

商品を売るのではなく、顧客とのパイプ作りに焦点を当ててきたのです。「一見回り道のようですが、これが着実に売り上げを伸ばし、顧客資産を増やしてきました」。そう、水竹浩・天神コールセンター長はおっしゃいます。そんな中、東日本大震災が発生しました。


1千人から「ありがとう」

大震災の後、椒房庵は、被災地である岩手県、宮城県、福島県にお住まいのお客様
2千人に、お見舞い品として、鍋スープ(キャベツ、もやし)を1ケースずつ送りました。費用は1千万円かかりました。配送料は、本来800円かかるところを、ヤマト運輸は「そういうことなら」と、500円に値引いてくれました。それだけでも300円×2千個で、60万円のコスト削減になります。

お送りした2千人のうち、200人分が宛先不明で返ってきました。しかし…、1千人のお客様から電話、メール、ファックス、はがき、手紙で「ありがとう」のお礼が返ってきたのです!

コールセンターへお礼の電話をかけてきたお客様は涙声になっていき、コールセンター担当者も泣きながら応対しました。電話を切って、次にかかってきた電話を取ると、今度は普通の注文のお客様で、姿勢を立て直すのに苦労したとのことです(笑)。

椒房庵は、お客様からそうして頂いたメール、ファックス、はがき、手紙をコピーして、文集としてまとめました。「被災地のお客様からのメッセージ」と題したその文集は、全部で3冊にもなりました。

特別に許可を頂いて、拝見しました。そこには被災地の皆さんからの「ありがとう」がいっぱい詰まっていました。

「荷物を受け取ったとき、玄関で泣きました」。

「電気が止まっているけど、ろうそくの灯の下、家族で鍋を囲みました。あったかくて、おいしかった」。

「頂戴したお品は近所の人にも分けてあげて、みんなで大切に食したいと思います」。

「心身共に疲れきっているところに心温まるお品をお送り下さいまして、本当に感謝しております」

「こんなにも温かいさわやかな元気をいただけることが、ただただありがたいばかりです」。

 「お心を分ち合います」。 

「うれしくて涙が止まりません」。

「今なお余震と原発で頭の上に重石がのっているようですが、運命と思い、今あるがままを受け入れ、前だけを見て生きていこうと思っています。そして遠くからも心配してくれている皆様の気持ちを大切に思い、希望を持っていつか笑える日が来ることを願っています」。

「この災害は悪いことばかりとは思えず、人の心の在り様を一人一人考え直す機会にもなり、また人の心のあたたかさを感じられた事柄ともとらえられれば前向きに歩いていけそうな気もします」…。

水竹氏によれば、これらのメッセージを受け取り、共に感動を分かち合うことで、何よりも社内のモチベーションが一気に上がった、とのこと。自分のしている仕事の社会へのインパクト、はっきりした手応えを感じることができたのです。


あり方(being)

お客様が企業と心のパイプを築く時とは、企業のあり方(being)が琴線に触れた時です。打算はにじみ出てくるものです。人間も動物ですから、そういうにおいは感じ取ります。

beingは水源。水源が清らかになれば、doingも清らかになります。


(2011年9月1日号掲載)


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