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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

172)「 キシリトール」ケーススタディー

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
ゼロから市場創造した秘訣を学びましょう


ゼロから創造

キシリトールは虫歯予防に効く機能性食品で、いまや知らない人がいないほど広まっています。

日本デビューしたのは1997年。キシリトール入りガムのシェアは17・3% でした。それが2005年には80%まで成長しています。ガム1600億円、キャンディーなどの食品や歯磨き粉で400億円、合計2千億円市場。単価の低い食品市場でこれだけの金額を稼ぎ出すのは、類を見ない現象です。多くの日本人が97年までキシリトールの存在を知らなかったにもかかわらず、わずか8年で2千億円市場を創出したのはすごいと言わざるを得ません。

仕掛人は、藤田康人氏。氏の著作『99・9%成功するしかけ』(かんき出版)をもとに、キシリトールのケーススタディーをやってみましょう。


あなた任せ

食品素材の営業が訪問するのは食品メーカー研究部門です。ようやく採用されても、次に購買部の壁があり(しかも研究部門と購買部門の間に通常、連携はない)、最終段階まで残るのは至難の業。製品に採用されることが決定して喜ぶのもつかの間、その製品の売れゆきによっては、すぐに製造中止になってしまいます。それまでの研究部門や購買部とのやりとり、苦労は水の泡。当然、かけた経費の回収なんてできません。つまり、「あなた任せ」のビジネスモデルなわけで、藤田氏はこれを「第一世代ビジネスモデル」と呼んでいます。法人向け営業B2Bの場合、ここが切ないところ。

そこで藤田さんは「第二世代ビジネスモデル」、営業段階から研究部門だけではなく、マーケティング部門なども巻き込む手法を取りました。顧客に提案したいマーケティングコンセプトを先に作っておき、社外だからこそできる部門間の橋渡しをするのです。関係者全員同一のテーブルに座り、みんなで取り組む。こうするとみんなが社内ではなく川下の消費者を意識して企画するので、関係者全員にWIN-WINとなります。

藤田氏はこの手法で味の素社員時代、人工甘味料アスパルテームの拡販に成功したのでした。


第三世代ビジネスモデル

キシリトールではさらに一歩進め、川上(素材)から川下(消費者)まで一気通貫で仕掛けていく第三世代のビジネスモデルをしかけます。具体的には、利害関係者を全員巻き込む。日本人に「キシリトールのある生活」「食後にガムをかんで虫歯予防」というまったく新しいライフスタイルを定着させる、というのがコンセプトでした。

鍵は「虫歯予防」。「虫歯予防にはキシリトール」というカテゴリーを作ってしまうのです。歯科医の仕事の定義を、「虫歯治療」から「虫歯予防」へと書き換えました。日本人の10%しか虫歯治療のために通院しなかったのが、残り90% が定期的にチェックのため歯科医に通うように。このため、売り上げが3倍になった歯科医も出ました。

キシリトール入りガムは、通常のガムが100円のところ、120円します。そこで流通を巻き込みます。

「同じ販売個数でも、単価が高いから2割売り上げが上がったらうれしくないですか?」。

これで流通は一発です。ガムメーカーに「早く製品出してよ」となります。流通からの圧力は強いので、ガムメーカーも重い腰を上げざるを得ません。また歯科医によるキシリトールについての専門家の解説をテレビCMにする、雑誌でキシリトール特集を組んでもらうPRなどを立体的に組み合わせて、プロモーションを仕掛けていきます。関係者全員がWINになります。

藤田氏は、川下の最後、消費者まで巻き込むためにはPRの力が大きいと述べています。効果測定が難しいといわれる広告とミックスして使うことで、より広く、より正しく、届けたい人にマーケティングメッセージが届くようになれば、鬼に金棒です。

皆さんのビジネスでも、全体を見渡した第三世代ビジネスモデルを実行してみてはいかがでしょう?

レストランであればお客様との接点はありますが、逆流して、使用する野菜の生産者、届けてくれる酒屋さんと組む。それぞれでプロモーションをやって、互いにウェブサイトやフェイスブックでリンクし合う、など、可能です。ぜひ、やってみましょう!


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のビジョン』(日本経済新聞出版社)
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(2011年9月16日号掲載)