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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

174) 顧客起点の戦略

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
戦略は顧客に従います


戦略の本質

戦略の本質は「戦を略す」ことです。戦わずして、勝つ。土俵をずらす。「価格競争が激しくてね」と愚痴が出始めたら、戦略が賞味期限を過ぎてしまった証拠です。同じフィールドで戦い、しかも顧客の目線から見て他社と価格以外に差異が見出せない状態になってしまっているのが、「価格競争」の本当の姿。フィールドを自ら創り出す。これが戦略。戦略と戦術を混同しないようにしましょう。

いくつかある山の中で、「あの山に登る、他の山は登らない(捨てる)」のが戦略。「山にどうやって登るのか。途中までバスで登ってあとは歩くのか、ヘリコプターでいきなり山頂を目指すのか、ふもとからコツコツ歩いて行くのか」という具体的な方法論が戦術です。

しかし、自社を起点に、自社の都合で戦略を立てても、的を射ることはできません。あくまで顧客を起点にする必要があります。今日は、顧客起点の戦略構築法についてお話しましょう。


事業は何か

まず、あなたの事業を定義しましょう。「私はドーナツを製造、販売しています」「レンタカーを生業にしています」「人材派遣のビジネスです」。以上いずれも、自社の製品・サービスについて「説明」しているだけです。自社のブランドをブランドたらしめている最も中核の価値(コア・バリュー)について考える必要があります。

たとえば、ニチレイは冷凍食品が主力製品ですが、コア・バリューは「おいしく冷やす」です。ユニクロはどうでしょう?アパレルが製品ですが、コア・バリューは「価格でびっくりさせる」です。ひょっとするとユニクロの車や住宅が出てきてもおかしくありません。アップル、「いつも新しい喜びを与える」。スターバックス、「家庭でも職場でもない第3の場所の提供」。

ただ、事業が何かを考えるには、「あなたの顧客は誰か」について考えなければなりません。なぜなら、ブランドは、あなたの製品・サービスの中にはなく、店舗にもなく、顧客の心の中にだけ存在するものだからです。ドラッカーは、「ビジネスの目的は顧客を創造することである」と喝破しました。では、その顧客とは誰なのか。


顧客は誰か

起業を目指している若者が、喫茶店のビジネスプランの相談をしてきました。「どこにもない喫茶店を作りたいんです。でも、風紀を乱すようなお客さんが来ないようにするにはどうすればいいのか、わからなくて…」。

私は、「誰に来てもらいたいのか」を質問しました。すると「お年寄りが好きだから、お年寄りが集まって楽しめるサロンのようなものにしたい」と言います。おばあちゃんっ子で育った彼にとって、お年寄りは大好きで、彼らのために何かしたいと言います。ならば最初から、お年寄り専門の喫茶店にすればいい、とアドバイスしました。メニューの文字も大きくする。アルバイトスタッフもお年寄りにする。文字の大きな高齢者向けケータイの販売や、パソコン設定のサービスなどもそこでやる。顧客の姿が具体的になった途端、彼のアイデアはどんどんほとばしり始めました。


切れ味良くする

顧客が誰かがはっきりしたら、彼らに何の価値を提供するのか、提供したいのかを考えましょう。ブランドは、製品・サービスとして必要最低限満たさなければならない機能を示す「機能ゾーン」と、顧客の情緒的イメージを喚起する「ブランドゾーン」の2つで構成されています。

たとえばコカ・コーラの機能ゾーン「気分転換のための爽やかな味」は発売開始以来120年、まったく変わっていません。しかしながらブランドゾーンは、時代背景と生活者の気持ち(インサイト)に合わせて常に変化し続けています。日本市場導入すぐは、コーラという新しい飲み物の特長を日本人に伝える「スカッと爽やかコカ・コーラ」というCMソングでブランドゾーンを形成していました。現在は「Live Positively」(世界をプラスに回そう)というメッセージを発信しています。世相を反映していますね。

戦略を考える時、自社製品、サービスのブランドゾーンと機能ゾーンを分けて考え、「顧客に置いていかれていないか」を厳しくチェックしましょう。これが戦略を切れ味良くする秘訣です。

阪本さんの新著書が発売中!『共感企業〜ビジネス2.0
のビジョン』(日本経済新聞出版社)
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(2011年10月16日号掲載)