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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

175) 顧客起点の戦略

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
未来は創るものです。


シャドーキャビネット

英国ジェフリー・アーチャーの政治小説『めざせダウニング街10番地』を読んで、「シャドーキャビネット」という言葉を知りました。保守党と労働党の二大政党がしのぎを削るイギリス下院議会を舞台とする小説内、「いざわが党が政権を取ったら、どういう組閣をするか」を事前にやっていることを知りました。「影の内閣」という意味で、シャドーキャビネット。いつでもスタンバイオッケー、という
感じで、いいですね。

先日、クライアント社長と組織論を交わしていた時、「一度、御社のシャドーキャビネットを作ってみましょうか」ということになりました。組織論のテーマは、若手をどのように育成していくといいのか、ビジョンを共有しようというものです。

こういうテーマの時、ややもすると、現在いるメンバーが何を(営業とか製造とかいう仕事の職責)やるのか、というアプローチになりがちですが、それだと発想が限定的になってしまいます。私の言うところの「冷蔵庫シンドローム」です。「本来何が食べたいのか」という食べたいものが先にあって、それから食材は何があるんだろう、と冷蔵庫の中身をチェックするのが理想なのに、つい先に冷蔵庫を開けて、それからそこにある材料で何の料理ができるだろう、と考えてしまう。

経営は本来、未来を創造するためにやる必要があるのに、現在の延長線上でしか考えられなくなる。


わが社に必要な人は?

社長に、ホワイトボードへ、現在ある部署名(営業部、技術部など)ではなく、「あったらいい」部署名を書き出してもらいました。「マーケティング」「HR(ヒューマン・リレーション)」「戦略」広報PR」「財務」「技術」「製造」そして「未来」。「未来」という部を作りたいという社長の思いが現れています。その部署は、ただ未来について考えるのではなく、具体的に、ワークライフバランスや働きやすい職場環境にするにはどうすればいいのか、法的なバックアップは現在どのように整備されているのか、調査研究し、必要なら社員の意識改革の研修までする部署とのことです。

次に、中堅以下の若手社員の顔を思い浮かべながら、それぞれの部署のリーダー(戦略なら
CSO:チーフ・ストラテジー・オフィサー)を誰にやってもらうのがいいか、名前を部署名の下に書いていきます。すんなり書ける場合もあれば、だれも該当者なしの部署もあります。この作業によってわかることが2点あります。

第1に、会社の未来形成のために必要な機能が部署名という形で表に出てきます。第2に、会社の明日を担う人材が誰で、何をしてもらう期待ができるのか、を考えるきっかけになります。

両方重要ですが、特に着目したいのは、第2の若手人材の点です。日常、たとえばA君について、A君が現在担当している職務をベースに「ここはいいけど、もう少しあそこを伸ばせばなあ」といった会話を、していますよね?しかし、A君が現在担当している職務は、本当に彼のポテンシャルをフルパワーにできる仕事なのかどうかは、議論した結果決まったものではありません。多くの場合「たまたま前任者が辞めたから」「人がいないから」といったA君の潜在力があずかり知らない理由によって決まっています。つまり、「わが社に必要な人ってどんな人?」という、会社の未来を決定付ける最重要な問いへの答えが得られるのです。人の弱みではなく、強みに焦点を当てて考えることができるのも、このやりかたのメリット。

一方、どうしても席の埋まらない部署が出てきます。ということは、そこがわが組織の課題だと「見える化」されます。「B君がいいと思うが、知識がまだ足りない」など、育成ポイントも絞られます。


未来会議

ホワイトボードを前に、社長も私たちも、興奮しました。会議は、すべからく全部未来の話題に絞るべし、としている私ですが、どうしても現在の修正や過去の後始末についての話になることが多いもの。でも、未来について語ると、人間は一気にモチベーションが高まります。

皆さんの会社やお店でも、未来会議を、是非、実行してみませんか?現在の補助線のような施策ではなく、目のさめるようなアイデアが湧き出てくること、請け合いです。

(2011年11月1日号掲載)