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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

179)選ばれるためのフォーカス

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
タッチポイントとは?


ビールへの愛

毎年恒例のJOYWOW北海道セミナーツアーで1週間かけ帯広、旭川、札幌と訪問してきました。ツアー最後のハイライトがサッポロビール北海道工場見学。「ビール命!」の私の、ツアーでたまった疲れを吹き飛ばしてあげようという、ツアースタッフからのご褒美でした。

ビール工場見学はこれまで何度か経験していますが、サッポロは初めてです。ビールなんだから、どこも同じようなもんだろうと高をくくっていたのですが、違いました。発泡酒を始め、「ビールテイスト飲料」の台頭、そして若者のビール離れなどを受け、日本のビールメーカー各社とも「本家ビール」には「独自のとんがり」を出そうと創意工夫しています。かつ、「集中戦略」を取り、各社一ブランドに集中している模様です。たとえばキリンは一番搾り、アサヒはスーパードライ、サントリーはプレミアムモルツという具合です。そしてサッポロは黒ラベルなのですが、北海道限定ビールとしてサッポロクラシックがあり、これが発売以来人気を博しているそうです。

そしてサッポロビール工場は、サッポロならではのとんがりを明確に伝えるコミュニケーション・デザインがなされていたのです。何よりも、ガイドさんの「ビールへの愛」が全身で感じられる姿勢が好もしく、うれしかったです。「私、ビール、大好きなんです!」と笑顔で言い切るガイドさん、素敵です。愛は伝染しますから。


タッチポイント

ブランド(製品・サービス)の存在を顧客が「知り」「店頭へ行き」「手に取って」「購買する」「使う」という各プロセスを全部書き出してみます。この各プロセスにおけるブランドと顧客の接点をタッチポイントと呼びます。タッチポイントのどこに焦点を合わせ、差異を出すか。そこがブランド戦略の中心です。サッポロビール工場を見学してわかったことは、サッポロがタッチポイントの「ずらし」による差異を作っている点です。ビールが顧客の手元に届くまでのタッチポイントを極めて単純化して書き出してみます。\渋 配送 H稜筺蔑免療后織灰鵐咼法晋朕遊弍弔亮鯏垢覆匹砲茲詒稜筺豊す愼 グむ(プハー!)。

アサヒのスーパードライは、「製造」と「配送」との時間差を縮めることで「鮮度」という「とんがり=ブランドが選ばれる理由」にしました。キリン一番搾りは「製造」で「一番搾り製造=独自技術によるしっかりした製造」をとんがりにしています。サントリープレミアムモルツも「製造」をとんがりにしています。サッポロは、「製造」の前をとんがりにしようとしました。つまり、「原料」です。北海道の山の恵みの水、麦芽とホップを契約農家との協働契約栽培にしています。ビール会社は世界に数あれど、生産者と一緒に大麦とホップを育てているのはサッポロビールだけです。フィールドマンと呼ばれる担当者が14人、世界9カ国にある契約農家を年3回(種まき前、収穫前、収穫後)訪問し、さまざまな打ち合わせをしているそうです。つまり、一般的なビールメーカーのタッチポイントの上流へさかのぼったところ(原料)をとんがりにしているのですね。


顧客の目で見直す

タッチポイントを書き出してみた後、顧客の身になってもう一度タッチポイントを見直してみましょう。「自社がエネルギーを注いでいるタッチポイントが本当に顧客のために役立っているのか?」と問いかけながら。アパレルメーカーはたいてい中国生産をしています。生産のタッチポイントには「中国工場で生産」と書きます。「中国工場で生産」することが、顧客の何に役立っているのか、を問います。知人のアパレルメーカー担当者は「価格競争が激しいから、生産は中国でやらないとついていけません」と言い、月に3回、中国への出張をひたすらこなしています。「儲かりません。こう競争が激しいと」。ところが、顧客の立場から見た時、「中国での生産」はチャーミングとは言えません。むしろ「あ。ここも中国生産なんだね」と思って終わりです。つまり、「選ばれるためのとんがり」にはなり得ていない。ただの「Me, too」です。とんがりにもなっていないタッチポイントのために、彼は月3回、疲れた身体を引きずって中国へ飛んでいるのです。明らかに、タッチポイントのフォーカスミスです。

コツは、顧客の目で見直すことです。



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(2012年1月1日号掲載)