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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

180)動詞で考える

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
動詞で発想しましょう。


Imagine!

ビジネスを発展させるコツは「名詞ではなく動詞で考える」ことです。それも、顧客があなたの商品(製品・サービス)を手にするBefore/Afterでどう「変化する」のか、具体的にイメージしながら。

イタリアンレストランをやっているとすれば、「イタリア料理を提供する」にとどまるのではなく、「その結果、どんな変化を提供できるのか」までを考えるのです。どんな目的で、誰と来店してほしいのか。店を選ぶ時、どのように自分の店が候補に上がるのか。某月某日水曜日午後8時に、予約するまでの顧客の気持ち、思考を想像してみる。駐車場で顧客の目には何の景色が入ってくるか。駐車場から店の玄関までは何が見えて、どんな音が耳に入ってくるだろうか。また、店を出た後、どういう気持ちで街を歩いてほしいのか。帰りの車の中でどんな会話がなされるのだろうか。

前回申し上げたタッチポイントごとに想像してみます。真の顧客志向とはこのようにタッチポイントごとに「想像する」行為を言います。


虫歯治療ではなかった!

ある歯科医院。顧客(患者)のタッチポイントを書き出し、「自社の提供しているサービスを狠郢治療〞という名詞ではなく、動詞で表現すると何だろう?」と想像しました。すると「虫歯治療」という、当初みんなが考えていた名詞ではおさまりきらない広がりと深みがあることに気づいたのです。

人がなぜ歯科医院に行くかというと、直接のきっかけは痛む歯の治療です。もちろん予防歯科のために来院する人も中にはいますが、普通は「とにかくこの痛みを何とかしてくれ!」という緊急なニーズを解決するためです。虫歯1本痛むだけで日常生活に影が差します。大事なプレゼンテーション(デート)を控えているのに、このいまいましい虫歯め!と思った人は少なくないでしょう。

ただ、痛みを取り除いたその先にある患者の本質的な望みは「食事を楽しみたい」です。さらに「健康的な食生活を送りたい」という気持ちも奥にあります。すると、歯科医院の本来の仕事は、「患者の健康的な歯」にとどまるものではなく、「健康的な食生活をサポートする」ことにあると気づきました。そこでその歯科では、定期的に患者向けの食にまつわる勉強会や、虫歯にならないための予防歯科、歯磨きレッスン、口内ケア製品の案内などのテーマについてのセミナーを行うようにしました。子供向けの歯磨きレッスンなど、母親なら言うことを聞かなくても、「歯磨きお姉さん」の言うことなら聞いてくれる、と評判です。


読書ガイドを売る!

札幌市郊外のショッピングセンターにあるくすみ書房では、品揃えの量で勝負するのではなく、児童書に経営資源を集中投入することにしました。小学生、中学生のうちにぜひ読んで栄養にしてほしい本を店主自らセレクトし、「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」「小学生はこれを読め!」という棚を編集し、提案しています。本好きな私自身でも棚の前で圧倒される豊富な内容で、思わずあれこれと棚にある本を手にして読みふけってしまいました。

つまりくすみ書房は、物質としての本を売っているのではなく、「栄養ある読書体験をガイドする」ことを売っているのです。

昨今、リアルな店舗がアマゾンの「ショーケース」化してしまう恐れがあると言われています。たとえば本なら、店頭で手に取って立ち読みし、面白そうならすぐスマートフォンで、あるいは帰宅後家のPCでアマゾンに注文するという顧客行動が見られます。ショーケース化しないためにも、店舗は「リアルにしかできない独自の棚の編集提案」をしなければ生き残っていけません。


あくまで顧客の都合を

「顧客の身になって」考えるとき気をつけなければならないのは、「それって、本当に顧客の役に立つの?」というアイデアが出され、採用されることです。たとえば、私が利用している銀行のオンラインバンキングでは、定期的にパスワードの変更を促してくれますが、これなど大きなお世話でして、パスワードを変更したら変更したものを忘れる(笑)。会議室で「顧客の安全のため」という大義名分と共に話し合われたらナイスアイデアかもしれませんが、顧客からすれば煩わしいだけです。注意しましょう。



阪本さんの新著書が発売中!
『ビジネスチャンスに気づく人の57 の法則』
(日経ビジネス人文庫)定価(本体714 円+税)



(2012年1月16日号掲載)