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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

182)見えない怪獣を探せ!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
水も漏らさぬ経営を!


攻めと守り

会社を成長させる秘訣は攻めと守りの2つあります。攻めは、経営理念を具現化したブランド経営。売り込むのではなくお客様から「選ばれる」ためのブランドを構築し、育成し、発信し続ける。そして守りは、 攻めのブランド経営を実現するための財務基盤を盤石にすることです。

そこで今日は、キャッシュフロー経営を可能にする会計についてお話しします。

経営者の中には、会計のことは「会計の先生にお任せしてるから…」と、ノータッチのスタンスの人が意外に多いもの。これはいかにももったいない。経営の醍醐味は、キャッシュフローを見定めることにあります。といいますのも、ビジネスとは、1ドルの原資を100ドルに、1千ドルに、1万ドルに「変身」させるマジックです。このマジックに面白さがあるのですから。


残らない理由

売上から固定費(人件費、家賃など)を引くと、お金が残ります。それを次の投資に回す。この仕組みがビジネスモデルです。計算上、月100万の売上があって、固定費が40万なら60万残る。ところが実際にはキャッシュが残らない。残らないどころか、マイナスになったりする。経営相談の中で意外に多い現象です。どうやら会社に目には見えない怪獣がいて、お金をパクパク食べてしまっているようです。この怪獣は、たいてい「在庫」という形になっています。

お金は、従業員の給料、家賃、仕入れの原資、ローンの返済、取引先の接待、研究開発、などなど、変幻自在、いかようにも変身できます。ところが、在庫という物理的実体になってしまうと、変身不可。在庫に変身した分、理の当然ですが手元のキャッシュが減る。家賃も食うし課税対象になる。こういう時、まず、在庫という物体を生み出す見えない怪獣=原因を探ります。


冷蔵庫のミルクではない

ある店舗では、仕入れ方法がその怪獣でした。どうやっているのか聞くと、担当者が、製品AならAの在庫がなくなったら発注する。Bがなくなったら発注する…。つまり、冷蔵庫のミルクがなくなっちゃったから買い足さなきゃ、という発想です(笑)。経営者は発注時点でコミットせず、支払いだけ。足の踏み場もない倉庫に眠る在庫の中身を見てみると、10年前からそこに居座っている強者も含め、基本、どれも「営業利益を増やす」ことにはまったくつながっていません。処方箋は簡単で、とにかく在庫をすべて記帳する。その上で、一日も早く売り切るための知恵を絞る(パッケージにして売るなど)。一日でも早く変幻自在なキャッシュへと変身させてやらなければなりません。


管理会計

値引きについて、管理会計で理解しておく必要があります。10%の値引きをしたらそれを補うために何%売上を増やさなければならないか、おわかりですか?多くの人が「そりゃ、10%でしょ?」と答えますが、間違いです。第1に、数学的に間違っています。0・9×1・1=0・99です。第2に、管理会計上間違いです。仮に変動費(食材など原材料など、売上が増えれば増える費用)率が60%の商品の場合、10%値引きして、値引き前と同じ営業利益を出そうと思えば何個売ればいいか。これは方程式で解けます。1千ドルの商品を10個販売すると売上は1万ドル。変動費が60%なので、600ドル×10個=6千ドル。1万ドル−6千ドル=4千ドル。この4千ドルが限界利益(売上に比例して追加的に増減する利益)。固定費が1千ドルとすると4千ドル−1千ドル=3千ドル(営業利益)。販売単価1千ドルを10%安く900ドルで販売して、なおかつ同じ3千ドルの営業利益を確保するために何個販売すればいいかは、次の方程式を解きます。900×X−(600×X)−1千=3千、X=4千/300=13・3333…。つまり13個以上売ってようやく10 個売った時と同じ営業利益が確保されます。

よく考えなければならないのは、「値下げすることで販売数量が増えるのか?」という根本的な問いです。多くの場合、お客様は高いから買わないのではなく、買いたくなるだけの魅力がないから買わない、と思った方がいいのです。ブランド戦略はこのためにあります。値引きするのは最も安易で、しかも最もリスキーな行為なのです。

(2012年2月16日号掲載)